第405話 ユニークスキル『スキルボム』
ピキッ…ピキッ……バリバリバリ……
結界を自ら割り飛び出すネビエルは腕を伸ばしタクトに迫る。タクトは後方に飛び躱そうとする。そこに迫る者がいた。キョウカは飛行魔法でタクト達の側面に移動し杖を向ける。
『ヒートレーザー』
杖から赤い光が放たれネビエルの腕に直撃、高温で焼きそして溶かし貫く。タクトは動きが鈍ったところを見逃さずプラスドライバーで腕をビスロック(空間停止)、更に追撃として空間障壁を伸ばして顔面をぶん殴った。
ビスロックによりネビエルの腕は空間に拘束されている。これなら外さないと確信したタクトはツールボックスの中にある道具の中で最強の道具ドリルを手に持った。
右腕に展開されたプレートが回転する。
空間ごと破壊せよ!『ドリル』
右腕をネビエルに向かって前に突き出す。
ネビエルが逃げられないだから十分に魔力をドリルに込めることができ、そして回転数を上げることが出来た。威力は十分なはずだった。
ネビエルはタクトがドリルを取り出し魔力を込め始めたのを見て、また生存本能が働いた。ネビエルだけでなく天使にとって空間魔法はそれほど珍しい物ではないないが、それでもこれは危険、アークフィールドですら耐えられず貫かれると判断した。
ネビエルは天使であった。
でも今は天使ではない。
堕天使と変わってしまった。
天使から堕天使に変わると言うことは……
生まれ変わることに等しいことであり……
自身のスキルにも大きな変化を与えることにもなる。
ネビエルは白い翼と黒い翼を大きく広げた。
翼から羽が数百、千を超え飛び散る。
羽は渦を巻きドリルの回転に合わせて入っていく。
ドリルの中で白と黒、光と闇が渦巻き一つになる。
ドリルのスキマから光が漏れ大爆発した。
光は暫く途絶えることがなく何も見えない。
そしてタクトはどうなったのか?
光は収束し、空間障壁の上で膝をつくタクト、激しい爆発であったにも関わらず怪我を一切していない。一体何が起こったのか?タクトは酷く焦る。
右腕に装着していたプレート……ドリルがない。
状況に理解が追いつかない。そのせいで動きが単調になってしまった。ネビエルの拘束していない方の腕が伸びて来た。タクトはそれをもう片方の手で持っている。プラスドライバーで迎え撃つ。
「ボンッ」と爆発。
タクトのプラスドライバーを持つ腕に白と黒の羽が集まり爆発した。そこでタクトは再び驚かされる。プラスドライバーがない。この時タクトにもこの攻撃の恐ろしさを理解し始めていた。
堕天使ネビエルのユニークスキル『スキルボム』
その効果は爆破したスキルを消し飛ばす能力。
相手にダメージを与えるわけではない。
しかしその効果は恐ろしい。
何故なら……一緒スキルが使えなくなるのたから……
(そんな!?……あ!ヤバい!?)
プラスドライバーを失った腕を掴まれたタクト、腕が握り潰される。
「あっ…アアアアア」
タクトの腕の骨が折れ痛みで叫び声があがる。このままでは腕が潰れ千切られてしまう。
その時だった。
ネビエルは動きを止め唸るような声が漏れる。
…………………▽
この出来事が起きる少し前。
とうとう我慢の限界を超えた。
ミルキーとブラック、そしてカンナが王城へと向かっていた。三人はカンナのスキル配管で空間転移、急ぎ移動したのだが、王城には結界が張られ、直接謁見の間へは移動出来ず、途中からは走り移動、廊下を走り抜け謁見の間に着くと、タクトが攻撃をされようとしていた。そして痛みで悲痛な叫び声が聞こえた時、三人はプッツンとキレた!
ミルキーは魔眼『イービルアイ ペイン』をこれでもかと言うほどに目を見開き放つ。ネビエルは痛みで動きを止める。
ネビエルはガクガクと首を動かしミルキーを見る。
……「コロス」……
この女は危険だと認識する。
そしてもう一人、こちらに向かって飛び上がって来た男、魔眼使いの女と違い酷く冷たい視線をコチラに向ける。
『デスサイズ』
ブラックはタクトを掴む腕を大鎌で切り落とした。そしてこの男も同じ、コロスっと強い殺気を込めてコチラを見る。
「アァァタクト、大丈夫かいな!ウチがウチが来たからな、すぐに助けたる!待ってぇや!」
カンナが半泣きになりながらタクトを受け止める。しかしタクトはカンナの心配をよそに全く別のことを考えていた。痛みに耐えつつもどうしても考えずにはいられなかった。
タクトは腕を抑え痛みに耐えつつ命令した。
「クッ……カンナ!戻れ!」
「なぁ!何ゆうてんね!」
カンナは驚きの表情に変わるが、すぐにその表情は見えなくなる。強制的に人化が解けツールボックスに戻され、タクトはツールボックスを持つとそれを配管の中に入れて別空間に飛ばす。