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第399話 黒い翼


「なんだよケチ臭えな〜」

 つまらなさそうにイグニスがグチる。


「そういうこと言わないでよイグニス、ボクにだって言いたくないことくらいあるんだからさ」


「ふ〜んそうかよ。それならアレ、アレなら教えてくれるか?なんだよアレは反則だろ」


 イグニスは謁見の間に居る元の姿の原型すら無くなったボルジアを見て言う。


「えへっ気になるよね。いい感じに育ってる」


「あ〜ん?なんだそりゃ、あの気持ち悪い姿がお前の求めている結果とでも言うのかよ。そうだとしたら趣味悪いぜ!」


「勘違いしないで!あんなクソ親父になんか興味はないよ。ふふっ…でもまだ足りないかな……『穢れ』が、ボルジアなら良い人柱になるはず、もう少しだと思うんだけど」


「そうかよ!意味わかんねぇ〜けどな。嫌な予感はすんな〜。ボルジアはよ〜見た目もそうだが、感じるオーラが明らかに濁ってやがる。怒り、悲しみ、不安、恐怖、嫉妬、負の感情のオンパレードだぞ!」


「ふぅ〜本当にイグニスは鈍そうな振りをして良い感をしているよ。普通はそこまで分からないと思うけど、ま〜いいや、今ね集まっているんだよ。この場所にこの国の負のオーラが、たぶんもうすぐだよ。もうすぐ復活すると思う」




……………………▽


◆謁見の間、タクトの視点


「先生これはヤバいですよ」


「見れば分かるのじゃ、それに……有り得ぬ!なぜアヤツまで生きておるのじゃ」


 俺も先生も驚きを隠せないかった。俺がナイフで攻撃したボルジアは二人に増えるし、さっき大地で潰したボルジアは地面から這い出て来た。………ボルジアは三人になった。


「やってくれたものだ。かつて私に手を出した者すらいないというのに、ここまでやられては怒りで気がぁぁくぅ〜る〜いそ〜だぁーよ〜」


 憎悪……黒く重いオーラが謁見の間に広がり、三人のボルジアが痙攣するように震え更に姿を変えた。



「黒い……翼……」


 三人のボルジアの背中から片翼の黒い翼が生えた。変異を終えると静かになり虚ろな目に変わる。



「動く!先生来ますよ」

「分かっておる。躱せ!」


 ボルジア達は黒い翼を振ると黒い斬撃が地面を通って飛んで来た。受け止めてもいいかと思ったが、どうにも嫌な予感がして躱す。しかしボルジアは更に身体能力を向上させていた。次は躱せない。空間障壁で目の前に展開し受け止めるが………『黒い翼』これはやはり異質であった。黒い翼は空間障壁を溶けるように貫いて来る。なんとか障壁のおかげで攻撃を遅らせ躱せたけど、今までほとんどの攻撃を防いでくれた空間障壁が破られた。これは緊急事態であり一気に危険度が上がった。


『ハンマークラッシュ』

 躱しながらハンマーを横振りし、ボルジアの側面から攻撃するも、衝撃は肥大化した黒い翼によって防がれる。


(げぇ!?ヤバい!やっちまった)


 他にいた二人のボルジアが急接近、当然のようにこの二人もパワーアップ済み、躱すのは無理!防ぐのも……無理!……なら!……




…………攻撃あるのみ!うぉぉぉーードリル


 腕を起点に金属のプレートが広がり高速回転、タイミングが良かった。二人を巻き込むように空間破砕が発動、二人は跡形もなく空間の彼方へと消えて行った。



「あぶっな〜死ぬかと思ったわ」


 危険を脱してちょいと一息つく。なんとか二人のボルジアを倒せた。残りはあと一人、とは言ったもののまた増殖すればそんな話は何の意味も持たない。コイツを倒す方法………心臓どころか身体を丸ごと捨てるような化け物………まとめて消滅………あ!そっか、今やったじゃん。



「たぶんドリルなら殺れる」


 俺はドリルを構え攻撃の隙を見つけるためにボルジアの動きを見る。


「ん?」……俺はボルジアの様子から警戒感を強め動けずにいた。

 

 ボルジアは全く動こうとはせずに呆然と立ち尽くしている。しかし身に纏う黒いオーラが一段と大きくそして強くなっていた。無闇に近づき指先にでも触れれば身体が消し飛びかねない強さ。



 俺は隙を作るためにプラスドライバーを手に取った時だった。ボルジアの横の空間が裂けた。もしかしてカンナが来てくれたのかと思ったが、そうではなかった。現れたのは少年。



「この忙しい時に、来やがったかよアトラス」


「やぁ!タクトちょっと邪魔するよ」

 アトラスは軽く手を挙げて挨拶をする。でも俺に興味がないようで、すぐにボルジアの方に向き直し話をする。



「やぁ!ボルジア元気かい!」

 ボルジアは何の反応も示さない。


「あれれ?もしかしてもう完全に吸収されたのかな?ふ〜んそっか残念、言いたいことが結構あったんだけどな〜、せめて確認したかったよ。ちゃんと苦しかったか?痛かったかって?って、父さんが受けた思いの百分の一でも受けていてくれれば良いな」



 何の反応も示さなかったボルジアの腕がアトラスに伸びる。掴まれれば一瞬で握り潰される。しかし腕がアトラスに届く前に腕は消し飛んでしまった。



「ごめんね。つい手が出ちゃったよ。でももう少し待っててね。たぶんそろそろだからさ………あ!来たよ。良かったね」


 アトラスは笑っていた。そして何かが外で起こっている。なんだろうこの聖なる力は…………


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