第393話 エレガントでビューティー
◆タクト視点
おっと…さっきより気配がデカい。このままだと俺はともかく、エリック王子とラウラ王女が危ない。
俺は安全靴の力、空間反射で回避しようと思っているが、そのままでは二人を守ることが出来ない。だから二人に来てくれと呼んだけど、ラウラ王女がなかなか来なかったので腕を引っ張って引き寄せた。
二人には悪いけどしっかりと俺にくっついてくれよ。安全靴の効果を伝えるにはそうしなければならないんだ。
空間反射の効果が二人を包む。
ボルジアから出ていた黒いオーラは分散し数十個の散弾となって高速で飛んで来る!でも…間に合ってるぜ!
なんかパターン化し始めているけど、黒いオーラの散弾は俺達に当たると空間反射し全てボルジアに向かって跳ね返る。
「アバババババババアバババババババ………」
ボルジアはボコボコになる。
痛たそうだが自業自得である。
さて……さっさと倒れてくれれば楽なんだけどな。
やっぱ!そうはいかないか。
弾丸に撃たれたボルジアはボロボロなのに倒れずに立っている。そして倒れなかった理由はすぐに分かった。
『超速再生』上位の魔物が稀に持っているスキルだが、ボルジアのそれはその中でもかなり高いスキルなんだろうな。もう治ってやがる。
ボルジアは全身が複雑骨折になっていてもおかしくない怪我をしていたはずだが、完治していやがる。オマケに服まで、これはだいぶタフな戦いになりそうだぜ。
「ふぅ〜いかんいかん、少々怒りで我を失っておったわ。高貴である私の唯一の欠点であるな」
ボルジアはどうやら冷静になったようだ。ただ勘違いが酷い。お前なんて今日初めて見たけど欠点だらけだバカヤロー!
おっと!ついついツッコミを入れてしまった。
そんなことよりもコイツを倒す方法を考えないと。
面倒なヤツばかりだ。不死身とまではいかないにしても今まで戦った敵は一癖も二癖もあるタフな野郎ばかりだった。今のところは『超速再生』だけだが、それだけではないだろう。これ程のスキルが元々コイツの物とは思えないし、コイツにはどんな大物の悪魔がついているんだか?
「お前は何者だ?なぜここに来た」
「ん?お前が悪いことしているからだろ。止めに来たんだよ!あんま他人に迷惑かけんなよ」
「フン下らん!お前が言っているのは国民のことか?私はこの国の王であるぞ!すべての民は、私のためにいる存在、どうしようと私の勝手であろう」
「はぁ〜!別に否定はしないよ。でも悪いけどボクが居てほしい王様とは違う。だからあなたにはご退場頂きたいね」
「フンッ!どこまでも生意気なガキだ。ま〜丁度良いかもしれん。私自ら手を下す必要など今までなかったが、やはり力とは手に入れると使いたくなるものだな。お前は運がいいぞ!私の獲物第一号だ」
ボルジアから強いオーラが発せられ、エリックとラウラは戦闘態勢を取る。
「オオオオオオオオオオオオオオオオ」
ボルジアは尋常ではない叫びを上げるとボンッと身体が一回り膨らみ筋骨隆々の身体になる。
「オォォォ……この身体は」
腕を動かしながら身体を確認するボルジア。
「う〜ん……イマイチだな!強そうではあるが、美しさがない。私はその辺のゴロツキではない。エレガントでビューティーでなければいけない。これは私には合わない」
「ア!ア!ア!アアア!」
ボルジアは全身に力を込めるように縮こまるとゴキュゴキュと気持ち悪い音をだし徐々に萎んでいく。
「おいおい、それはないだろ」
エリック王子とラウラ王女は驚き口が塞がらなくなっていた。俺も正直驚き過ぎて認識ができなかった。
ボルジアの姿が大きく変化していた。
身体はスラッと細身でありながら筋肉もしっかりとあり、身長も最初に比べて大きいなっている。そしてなんと言っても顔、顔が爽やかなイケメンに変わっていた。どこぞのアイドルグループに居てもおかしくないほどに、豚野郎からイケメンの変化とは恐れ入る。
「うむ!これだ!これこそ私に相応しい。本当に素晴らしい力だ!どんどん力が溢れてくるのが分かるぞ」
「なぁ!?」
「えぇっ!?」
エリック王子とラウラ王女の間にいつの間にかボルジアが立っていた。二人はそれぞれ武器でボルジアに攻撃を仕掛ける。
「そんな!?」
「嘘でしょ!?」
二人が驚くのも無理もない。ボルジアは剣で斬られているにも関わらず、素の身体でそれを受け止めていた。
「フッ、お前達二人は昔からヤンチャでおったな。よし少しお仕置きをしてやろう」
ボルジアはコンっと軽く拳を武器に当てると爆ぜるように武器が破損、そしてその手が二人へと伸びる。
「は〜い!そこまで!止めろ」
「邪魔をするな。ちょっとした戯れではないか」
俺は二人に伸びる手を空間障壁で止めた。
戯れ?ふざけんなよ!もしも止めていなかったら、二人の身体は握り潰されていた。
今度は超身体能力強化かよ!色々やってくれるな!