第392話 ラウラ王女……顔から………
◆ラウラ王女の視点
ぐうっ……今の音はなに?
何か大きな衝撃音がして目を覚ます。
頭が少しぼーっとしているけど、覚えている。私とお兄様はボルジアを倒そうと突っ込んで行ったのに、何か強い衝撃を受けて壁に打ちつけられた。
上半身を起こすと隣にお兄様が倒れていた。
「エリックお兄様!?」
私は慌てて傍により顔を見る。
息は……している。はぁ〜良かった。
私は胸を撫で下ろし冷静にエリックお兄様を見る。
額から流血をしているものの他には怪我をしているところは見当たらない。気は失っているけど大丈夫ね。
お兄様が大したことがなかったことが分かり、周りの様子が見えてくる。
え!?どういうことよ。なんでボルジアが壁にめり込んでいるの?それにアイツがなんでここに、状況が読めない。
「ん?あ!……お~い大丈夫か〜」
私に気がついたようで手を振りながらこちらにやって来る。
コイツ確かあの時の、それにしてもなんでこんなに警戒感がないのよコイツ。私達は敵ではないとは思うけど、この間は戦ったのよ。意味わかんない!
「あ!エリック、ラウラ大丈夫なのか?あ!そうだ絆創膏絆創膏」
そいつはあまりにも自然と近づきお兄様に何かを貼り付ける。さっきも思ったけどなんでこんなに警戒感がないのよ!おかげでこっちの警戒感まで薄悪じゃないのよ!
「うっ…ううっ…あ……」
お兄様が目を覚ました。良かった。
「お兄様、目が覚めたようで、どこか痛むところはありますか?」
「……ん?あれ……確か吹き飛ばされて、思いっきり頭を打ったような気がするんだが、まったく痛くない。あ…あれ?なんだこれは紙がついているけど」
その紙……さっきアイツが貼った紙。
「もう治ったみたいだね。エリック」
「あ!君はあの時の……」
お兄様も気がついたみたい。
「どうも、エリック、いやエリック王子、久し振り……というほどでもないか、少し話がありましてちょっと……」
殺気!?
トリスタンやバロンさんと違って鋭さは一切なく、ただただ濃くそして重い!さっき攻撃を受けた時と同じ気配、ヤツだ!
「ゴミムシが王に手をあげたな!」
ボルジアは怒り、荒々しい声をあげて、また何かをするつもりだ。早く戦闘態勢を取らないと!
「いや!ボクは何もしていませんよ。魔法の制御でもミスったんじゃないのか?おっさん」
「貴様いい加減に舐めた口を聞きおって、二度はないぞ!ゴミムシがぁ!」
さっきより更に大きな黒いオーラが湧き上がり、形が変わったと思ったらまたスーッと消えた。
また何かが来る!
こちらに何かが向かって来る気配を感じる。でも私には見えなかった。
くっ!ダメ!………私はガードの体勢を取る。
「配管(空間転移)」
あ…れ?何の衝撃も来ない。
おかしいと思っているとドカーンっと大きな衝撃音が……音がする方を見ると、ボルジアが壁にめり込んでいる。大の字で張り付きながら何が起こったのか分からないと言う顔をしていた。
私にも分からなかった。
ふと視線がアイツに向かう。
鋭い視線で手を前に上げている。
もしかしてコイツが何かをやったの?
「二人共、ボルジアのおっさんだいぶキレてそうだから、こっちに来てくれるかな」
コイツの言う通りだ。
壁から抜け出たボルジアは私が見たこともないほど真っ赤に顔を赤くして激怒していた。
どうしよう。またボルジアは何かをしてくる。でも……悔しいけど私ではどうにも出来ない。
私……落ち込んでいる暇なんてないのに……
「ラウラ!なにしてんのさ〜、早くこっち来てよ」
え!?………私は腕を掴まれ引っ張られた。
王女である私を無遠慮に触れる。
異性であればお父様とお兄様しかいない。
突然で不意を突かれたこともあり。
胸のあたりが熱くなり頬が赤くなってしまう。
「二人共イヤかもしれないけど、ちょっと我慢してね!」
ヒィ!?ハウッわ!?
そのまま彼の胸の中に………
私は動揺を隠せません。
さっきの非ではありませんわ!
胸の鼓動が尋常じゃなく動いている。
(も〜うなによ!私は王女でそんなに軽い女じゃないんですわよ!軽々しく…さ…触んないでほしいですわ……テレテレ)
でも……これが男の人の胸板、見た目では分からなかったけど、ちょっと硬い…女性ではないこの硬さ……悪くないわ。……じ…じぶんで引き寄せたんだし少しくらい良いわよね。………スリスリ。
「ラウラ……お前何やってるんだ?」
「ひへぇ!?」
全然気が付かなかったけど、目の前にエリックお兄様の顔が、どうやら私と一緒に抱き締められていたみたい。
多分私の顔から火が吹いていたと思いますわ。