第383話 予想して!試して!確認する!
◆ブラックの視点
聖女様、少し落ち込んでいたように見えたが持ち直してくれたかな。聖杖結界は使えないのはかなり痛いが使えないものに文句を言う暇があるなら行動あるのみ。
しかしがむしゃらに闘ってこの相手に勝てるのか?それは否!さっきまでの闘いで分かるようにコイツを倒したところでまた別の者が出て来るだけ、それではどうすれば良いのか?まずは予測しそれを確認する。
まずは予測。
バエルは糸を使う戦闘スタイル。糸がバエルのスキルであるのは間違いないと思う。その糸には様々な性能があり、糸は変化し様々な形状になる。それを硬化することで武器にも防具にもなり、また見た目では分からないほど精巧な変装も可能にしていた。そして忘れてはいけない。アイリスの腕を焼いた酸、糸の性質まで変えるようだ。
そして問題になっているのが復活、これがどの様な方法を使っているのか、初めは分身を使っているのかと思っていたが、そのスキルはポーラン司教のものであり操り使っていただけ、だからアレは違う。
バエルは倒してもまた現れる。
そこで気になるところはなかったか?
バエルは現れるたびに顔や姿が違う。派手好きだとは思うが、そこに意味があるのかは分からない?顔が違うのは他の者に取り憑いているから?それとも本体でありながら変装しているのか?
そう言えば!?先ほど倒したバエルはどうなった。
しっかりと見る時間はない。横目で見る程度で確認する。
女性は寝ているように動かない。
女性の身体はそのままで消えたり変化はない。
彼女は実体であり取り憑かれていただけの可能性がある。
ん!?待てよ。バエルは宿主となる人間を複数確保しているのではないか?もしそうであれば、今目の前に居るバエルを倒してもまた違う宿主が次のバエルになって出て来る。
「これは困ったぞ」
私は頭を抱えていると、ミルキーが早く指示をしろと視線を向けて来る。
くっ……情報が足りない。
仕方がない。ここは敵の懐に入り情報を引き出す。
「ミルキー!私が先に仕掛ける。隙があったらやれ」
「分かったわ」
私は大鎌を構え一直線に突撃する。
バエルは波打つように不規則に糸を出し翻弄しようとしていた。
その程度無意味だがな。
「切り刻めデスサイズ」
大鎌を一振り、斬撃は糸に当たると無数に広がり切り裂く。私はそのまま突撃しようとすると気配を感じ身を引くが足に何かが絡まる。見えていないが透明化した糸だと予想出来る。少し引くのが遅れたが問題はない。
ズバッと透明な糸が切られる。
「ありがとうミルキー」
「油断しないブラック」
ミルキーは手に闘気を集め薄く鋭い形状に変えて糸を切ってブラックを助けた。
しかし透明な糸は一本ではなかった。
糸はミルキーを囲むように伸びていた。
ミルキーは両腕を上げて回転、透明な糸を次々と切って行った。
ミルキーは高い感知能力で気配だけで糸を見つけられる。この様な相手には重宝されるスキルなのだが、ミルキーの様子がおかしい。
「ねぇ〜ブラック気を付けて、私も今気がついたんだけど、透明な糸が結構周りにあるみたい。罠かもしれないから絡み取られないように気をつけて」
「分かった」
流石はミルキー、私も気配を感知するスキルには自信があるのだが、ミルキーは私以上、それにしても透明な糸が仕掛けられているとなると動く範囲も制限される。より闘いにくくなった。
「ミルキー動いていないせいか、私ではその透明な糸が分からない。それの排除を頼む」
「分かった」
まずは不利な状況を打開する。
ミルキーは返事と同時に走り出し地面を這っている透明な糸を手刀で切る。
「ウグッ!」
ん!?バエルから声が漏れた。表情も先ほどと違い険しい顔をしている。なぜだ?ミルキーが透明な糸を切っただけなのに………さっき切った糸ではあんな表情も声も出なかったのに、何か違いがあるのか?
分からないなら試して確認するしかあるまい。
「ミルキー地面を這っている透明な糸をすべて切れ!」
ミルキーはすぐに行動に移る。糸を走りながら次々と切っていると、バエルは無数の糸を出しそれを剣や斧、槍などの武器に変えそれを鞭のようにしならせて飛ばす。
ミルキーはアクロバットな動きで攻撃を躱しながら
器用に透明な糸を切りながら進む。
「ぐっ!」
またバエルから声が漏れた。今度は何か耐えるような声に聞こえる。
そこで疑問を感じた。バエルは地面を這っている透明な糸を切られると痛みをダメージを受けるのではないかと、それに今思い出せば、バエルは倒された時の痛みを口にしていた。
このことから予測できることは地面に這っている透明な糸は本体のバエルに繋がり急所となる糸となるかもしれない。
あと少しだね。また試して確認をしよう。