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第382話 私は誰にも倒せない!


◆大聖堂地下にある結界の間。


「ここが聖杖結界を発動する場所ですか、とても綺麗な場所ですね」


 部屋の中は青白い光に包まれていた。四方八方に飾られた杖には宝石が付けられており、赤や黄色、青など様々な色で輝いていた。


「でも目がチカチカしてちょっと不快かも」


「ミルキー失礼だぞ。ここはいわゆる聖域であり特別な場所なんだから、言葉を選びなさい」


 ブラックはミルキーを叱る。


「ブラックさんは気にしないでください。私もここに来るといつもそう思いますから」


 聖女様は微笑む。


 聖杖結界はこの地下にある杖を通して町に設置されている杖に魔力を送るのだが、その魔力は膨大な量であり常に巨大水晶に溜めているのだが。



「おかしいですね。水晶が光っていない。それに魔力をほとんど感じない………まさか!?そんな……」


 聖女様は水晶に駆け寄ると手で触れて魔力を込める。


「やはり……この水晶には魔力が残されていません。どうして」


 聖女様は愕然し落胆したがすぐに立ち直った。そんなことをしても解決には繋がらない。今やるべきことはどうすれば被害を減らすことが出来るのか?




 突然誰かの声が聞こえた。


「も〜う……立ち直るのが早過ぎてつまらないわね。私としては楽しみにしていたのよ」


「あなたは誰でしょうか?」


 水晶の後ろから女性が現れる。

 赤、青、黄、橙と色々な色の生地をごちゃ混ぜにして作った派手な服装、そして額には触覚のような二本の角、悪魔化していると判断出来た。



「ん?あら、分からない。さっきまで一緒に遊んでくれてたじゃないの、うふっ、さっきのは結構痛かったわよ」


「……あなたはバエルなのですか?」


「そうよ!聖女メリダ、また会えましたね」


「倒せなかったと言うことですか、しかし……」

 聖女も驚きながら、心の片隅に残っていた不安、何度倒しても偽物でまた現れる。今回もその繰り返し、一体どうすれば倒せるの。


「う〜ん…んふっ、考えても無駄だと思うよ。私は誰にも倒せないから」



 バエルは楽しそうに笑い、そして糸を槍に変えて手に持つと突っ込んで来る。聖女は腕に闘気オーラを纏わせながら槍を躱し柄を掴み止める。


 バエルは背中から更に糸で作った槍を出し包むように聖女を追撃する。


「それはさっきも見ましたよ」


 ブラックは弧を描くように飛び、その糸を大鎌ですべて切り落とした。


「失礼します」

 気配を消しミルキーは接近、そっと首を掴み『ペイン』を流す。「ギャャャャャ」と激痛のあまり大声で叫ぶバエル。バタリと前向きに倒れ動かなくなる。



 


「うんも〜う!痛いじゃない。あんまりびっくりさせないでよね」


 扉を開き入ってきたのは様々な色の生地をつぎはぎで作った派手な服の女性、顔を違うが誰なのかすぐに分かる。バエルは倒せないのか。



◆聖女メリダの視点


 私はくもった表情をする。

 また偽物、本物は一体どこに居るのか、頭の中でグルグルと自問自答するもそこには答えがない。倒せないならせめて聖杖結界を発動出来ないものかと、視線を水晶に向けると、それにバエルが気がついた。


「あぁ!そっかそっか聖杖結界ね!でも魔力がないから使えないよ」


「あなたですね。水晶の魔力をどうしたのですか?」


「えへへ、おかしいと思わなかった?町の住民に悪魔が憑いている。大きな反乱、暴動があり人は傷つき不安や悲しみが渦巻く環境は悪魔が取り憑きやすい。でも流石に多いな〜って、最初っからこんなに悪魔が居るわけないよね〜」


 私はバエルの言っている意味を理解した。

 そして絶望しそうになる。


「聖杖結界の魔力を悪魔の召喚に使ったのですね」


「そう言うこと、あれだけ膨大な魔力があれば下級の悪魔なら召喚仕放題だもんね。私も途中で面倒くさくなって止めたくらいだからね。うふふ、驚いたでしょ」


「それであれ程の悪魔が……なんと言うことでしょうか。本来人々を守るための力を……」


 私は悲痛な思いに押しつぶされそうになっていた。

しかし二人はそうではなかった。



「これ使えないんだ、面倒だけど全部倒せば良いのね」

「ミルキー手加減はしてくれよ」

「えぇ…程々にね!」

「そうか、言い方を変えるよ。タクトに嫌われないように調整してほしい」

「ブラック、一応確認だけど、それはどの程度」

「う〜ん……気を失わせて戦闘不能に出来る程度かな」

「うっ…分かった。調整する」

「うん、そうしてくれ、それじゃ〜やろうか」


 二人は気負うことはなく、日常生活で話すように話をする。心配するのは息子に嫌われないかの不安だけ、なんてほのぼのしいのかしら、おかげで私も落ち着くことが出来ました。


 人々を救うのは聖女の役目、そして私の意思、絶対に諦めるつもりはありませんから。


 私は一歩二歩と前へと進む。

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