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第376話 VSトリスタン④


 ノルンとトリスタンの戦い。


◆ノルンの視点


 トリスタンは『大地斬』を放つ体勢になった。

 この必殺の技はトリスタンの身体強化スキルと闘気オーラの制御力をフルに使って放つ斬撃。


 足先から腕にかけて下から上に向かって力を連動させ更に闘気オーラをも連動させて剣を振る真向斬り。これは受けることも躱すことも出来ないと……お父様からはそう聞いていた。


 普通なら怖い。怖いときっと思うんだけど……

 イグニスのせいで全然思えなくなっちゃった。

 私が修行で何回受けたと思ってるのよ!


 だから緊張も恐怖もない。

 ひたすら訓練した剣技を放てばいい。


 そうでしょ。タクト。

 早いコイツをぶっ飛ばして追いかけるから……

 

 待ってなさいよね!


 

『天獄の魔眼』

 

 周りにある全ての炎を剣に集約する。

 私は剣を水平にして腕を引いた。

 放つは最大出力の炎の突き。



「ノルン、お前は私には勝てない。バロンを倒した私が娘のお前などに負けるはずがないのだ!」


「ショッボ!」

 トリスタンがあまりにもバカな発言をしたので、私は不意に心の声が漏れてしまった。


「なんだと!?」

 怒りがこもった声でトリスタンは返す。


「トリスタンあんたにはガッカリです。あなたは私が目指す一流の剣士だと思っていたけど違ったみたいですね」


「フッ、ほざくがいい!お前ごときに私は測れない」


「本当にダッサ!トリスタンあんたはお父様よりずっと弱いわよ!イグニスとも闘わなくて良かったね。あなたなんて私で十分よ。粋がるのもここまでくると笑えないから……」


「キサマ!私をバカにしたのか!?私の剣は最強だ!お前のような者など塵となって消えるがいい!」



 トリスタンの足先が闘気オーラで光り輝き、目にも止まらぬ速さで腕に移動、振り下ろされた剣は大地を裂く。



      …………『大地斬だいちざん』…………


 ノルンに向かって斬撃が地面を走って行く。

 この時のノルンをもってしてもその斬撃を見ることは叶わなかった。だがバロンとの修行でその技の型と動作を伝えられ、そして何度も動きを見せてもらった。


 だから予備動作に入ってからのタイミングを見逃さなければ後はぶっ飛ばすだけよ!


 私は剣を撃ち放った!



      …………『神紅天しんこうてん』…………


 剣は紅い線となって斬撃と衝突する。

 瞬間!?大爆発を起こし空に向かって火柱が上った。


 炎は上がり続け雲を抜け、どこまでも上がって行く。

 炎はお互いを隠し何も見えない。

 そしてしばらくして火柱が収まり空に大きな丸い穴ができ、陽の光がサンサンと照らした。



「なぜだ?……私の剣が通じなかったと言うのか?」

 トリスタンは私の姿を見て理解が出来なかったようだ。だって私は怪我もなく普通に立っていたのだから、私はトリスタンの大地斬を耐え、そして打ち勝った。



「いや!違う!……きっと剣の軌道がズレたのだ……そう…そうに違いない!」


 私はその言葉に冷たい目を向けて答える。


「違う。トリスタン、あなたの剣はしっかりと私を捉えていたよ」


「そうなはずはない!それならばお前は生きていない!」


「うん……そうだね。あなたのその正確無比な剣捌きが

なかったら私が負けていたかも」


「………なに!?それはどう言う意味だ!」


「あなたの技は私には見切れなかったのよ。お父様が言っていたの、トリスタンは剣を外さない。だから私に信じて真正面に技を放ちなさいってね」


「お前は……それを信じたのか?」


「えぇ、でも勘違いしないでね。私が信じたのはお父様、あなたではないわ」


 トリスタンはニタリと笑う。


「フフッ……随分と死にたがりが居たものです。私の技を防いだことには納得出来ないが、その度胸は称賛に値する。次こそはお前を斬ってやろう」


 私は少し呆れる。

 喋っている途中でもしやと思っていたけど。

 トリスタンは気づいていなかった。

 自分に剣が刺さっていることに。



「もう止めようよトリスタン、降参して、今なら治療出来るわ」


 私はこれ以上の闘いを望まない。


「治療?……君は一体なにを…………!?」


 トリスタンは気がついた。

 自分の腹部に深々と刺さる剣に……

 

「そ…そんなバカな!この剣はお前のなのか?」


 私は黙って頷く。

 トリスタンは呆然として動かなくなった。

 まだ自分が負けたことを理解出来ないのかな。

 ま〜私もギリギリ、もう一歩も動けないわ。


 私は疲れてお尻から地面に座り込んでしまった。

 まだ完全に戦いは終わっていないのに……でも限界、怒られてもいいから寝よっかな〜。


「よぉ〜!ノルン、ギリギリだったな〜。負けちまうかと思ったぜ〜」


 手を軽く上げながら、お気楽な雰囲気で近づいて来るイグニス。その顔を見るとムカムカして来た。


「そうね!イグニス、私が負けたらあなたはお父様に小間切れされて、お母様に燃やされていたけどね」


「ガァ〜ハッハッハッ、確かに!命拾いしたのは俺かもな!笑える」


「笑えないでしょ!まったく……」


 でも……トリスタンの最後の技、これを打ち破ることが出来たのはイグニスのおかげ、神紅天しんこうてんの試し撃ちを何度も付き合ってくれた。感謝している。


 そして気がついた。トリスタンの大地斬よりもイグニスの斬撃の方が強いことに、私は改めてイグニスの強さを認識することが出来、それを超えたいと強く思った。


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