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第375話 VSトリスタン③


 ノルンは炎を纏い飛翔しトリスタンに向かって移動、トリスタンは剣で鋭い突きで攻撃、ゴーっと炎が上がりノルンは反転しながら剣を振った。トリスタンは超速反応でそれを弾く。幾度の剣の衝突が火花を散らす。


 そしてその攻防を制したのはノルンだった。


 ノルンの剣に対し徐々に押し込まれ防戦一方になるトリスタン、これには理由があった。トリスタンも経験で全く無かったわけではないが、空中と地上を使って自在に移動しながら剣を振る実力者を相手をしたことがなかった。


 だからどうしても剣のキレが鈍くなり反応が遅れた。

 トリスタンは力負けし身体のバランスが崩される。

 そしてノルンの剣がトリスタンを捉えた。


 ザシュッ……トリスタンの肩口が血が飛んだ。

 バランスを崩したまま後ろに倒れるトリスタン。

 ノルンは勝負どころだと、一気に決着するために……

 炎を纏わせ加速した剣で突きを放つ。


 ノルンはその時、空間が圧縮されスローになったような世界を感じていた。


 その中で視たのは……獣のような目。

 トリスタンの目が何かを訴えている。


 それは……狂気に近い執念。


 絶対負けないと!込められた威圧はノルンの動きを鈍らせた。トリスタンはそれを見逃さず、ノルンの剣先の軌道ずらし、ノルンの懐に潜り込むと強烈な蹴りで吹き飛ばした。


 ノルンは蹴りを受ける前に体勢を後方に変えていたため大したダメージを負わなかった。だけど、トリスタンのあの目を思い出し、剣を握る手に力が入る。



「ふぅ〜〜……はぁ〜〜〜……」

 頭を下げ静かに呼吸を整えるトリスタン。ユラリユラリと身体を左右に揺らしながら歩き出す。



「お前みたいな子供に負けない……お前のような女に負けない……私は誰にも負けない」


「ぶつぶつ言ってないで来なさいよ!女だからって弱いとは限らないってことをあんたに教えてあげるわ」


 トリスタンは何も答えずに剣を構えた。


 それを見たノルンは気を引き締めて言った。


「その構え……ここからが本番ってこと……」



……………▽


時は再び遡り、ノルン修業中。

◆ノルンの視点


「うん!だいぶ様になって来たな」

 イグニスが満足そうに言った。


「当たり前でしょ、あんなにされたら出来るようにならないと死んじゃうわよ!」

 私は不貞腐れたように返した。


「ま!そう言うなよ。これでノルンは格段に強くなった。でもまだ足りない。と!こちらの方が言っているんで替わるな」


 替わるも何もイグニスはまだ何もやっていない。

 私の不満は募る。



「ノルン良く頑張った。ここからは私が講師を務めよう」


「お父様……」


 ズーンっと重い気配を感じていた。

 バロンはただこちらに歩いているだけなのに、ゆっくりと鞘から剣を引き抜くとその重圧は更に重く変わる。



「ノルン、お前とこうして剣を交えるのは久し振りのように感じる」


「いえ……お父様、きっと初めてだと思います……」


「フッ、そうだな。しっかりと分かっているな。では軽く剣を交えるところから始めよう」


 お父様とは修行で何度も剣を交えたことがある。

 でも、今日のはいつもと違う。

 一振り一振りに殺気が込められている。

 

 額から汗が流れた。

 

 軽く………とんでもない。

 殺気が込められている。

 それだけで疲労が全然違う!



「トリスタンは隙がない男。だが、それだけで最強の騎士とは言われはしない。アイツには必殺の剣がある。その名を『大地斬』、速さもさることながら、その破壊力はガード不可だ。それを攻略しなければアイツには勝てない。私が教えるのはその技の攻略方法」


「流石はお父様!ご指導をお願い致します」


「うん。でもその前にノルンは人との実戦に慣れるべきだ。ここからは私とジェーが交互にノルンの相手をする。殺気を放つ人間を相手に耐えられるようになりなさい」


 お父様は本当に合理的に指導をしてくれた。きっとこの修行がなければ、あっと言う間に威圧され動けなくなった私はトリスタンに一瞬で殺されていた。


 それからお父様達と闘い、殺気に抗う方法を身体が覚え始めた頃だった。



「よし!時間もないし、そろそろ『大地斬』攻略の訓練をしようか、イグニス頼む!」


「え!?ご指導はお父様がしてくれるのではないのですか?」


「あぁ、そうだよ。イグニスは『大地斬』と同じような技を持っているから、模倣『大地斬』と言ったところだ」


「はぁ〜……なるほど」

 お父様から教えてもらえると思っていたから少し残念。だけどお父様が言うのだから聞いておけば大丈夫。


「ふぁ〜〜………やっと俺の出番か?寝みぃ〜ぞ!」

 ダラダラして起きて来たイグニス。

 こっちが死ぬ思いで修行していたのに〜

 そう思うと怒りが込み上げで来た。


「よ〜しノルン、まずは一回見せるからよ!それでなんとかなりそうだと思ったらお前に向けて放つわ!宜しくな!まずはよ〜く見てろよ」


 軽い……どこまでも軽い男イグニス。

 これで勇者だと言うからすごい。


 でも一応私も知っている。

 イグニスが凄いことを、今度きっと凄いことを……


 

 ちょっと他ごとを考え過ぎていた。 

 轟音が突然響き、私は身体をビクッとさせる。

 見ると地面に大きな切れ目が刻まれていた。

 


…………▽

 時は戻り、ノルンとトリスタンの戦い。


 トリスタンは剣を上段に構え、高らかに剣を上に上げ徐々に背を反らせる。見た目は不格好に見えるが、お父様の話ではこの体勢になった時点でもう逃げることは出来ない。


 トリスタンの必殺の一閃『大地斬』

 受けて立とうじゃないのよ!


 私の闘志は決してなくなることはない。

 この闘いは決して負けられない戦いだから……


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