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第373話 VSトリスタン①


 闘いは意外にも静かな立ち上がりだった。


 ノルンの上段斬りをトリスタンはバックステップで躱しすぐに左斜め前に移動、横薙ぎで斬り込む。それをノルンは剣でガードしながら剣先を見極め一歩下がり、剣が通り過ぎると一歩前に進み剣を振る。


 どちらも剣を躱し続け、寸止めの訓練のように調整するように剣を振り続けた。



 最初に攻め出したのはノルン。

 炎を剣に纏わせると、その力を制御し剣に集中、刀身が赤く変化し高熱を纏う。


 力強い一歩から繰り出される横薙ぎの一閃。


 トリスタンは剣の刃先を闘気オーラで拡張し鋭く高速の斬撃を放つ。


 擦れるように交差する剣。


 トリスタンの剣先の闘気オーラは消失するが、それを気にする様子はなく。そのまま独楽のように回転し連続の斬撃をノルンに向けて放つ。


 ノルンはそれを一つ一つ丁寧に受け止めた。

 

 ノルンもまたいたって冷静であった。

 これは今までのノルンにはなかったことだった。

 

 イグニス達との修行の成果と言えた。


 

……………▽

 時は遡り、トリスタンと戦うことを伝えられ、ノルンがそのための修業をすることになった日のこと。



「ノルンいいか、時間があんまないから、結構キツめになると思うから覚悟しておけよ〜」


「イグニス、その言い方は腹が立つわよ!元はと言えばイグニスのせいなんだからね!分かってるんでしょね〜」


「わあってる。わあってる。ま〜それはおいといて、相手はこの国で最強の騎士なんて言われているらしいからな。結構強いだろ。でも問題はないさ。今回のために強力な先生をお呼びしたからよ!」


 イグニスは全然反省していない。

 ノルンはムカッと怒るが、イグニスに指導してもらえると我慢する。


 現れた先生陣を見てノルンから小さく驚きの声が漏れる。バロン、スカーレット、ジェー、ノルンとしては主にスカーレットに気づいて驚いていた。


「ノルン嬉しいだろ〜。これだけの人材そうは集まらないぞ!」


「え…え〜本気度とこの先の地獄が見えた気がするわ」


 イグニスはそうかそうかと笑顔だが、ノルンは何がそうかよ!と内心怒っていた。



「イグニス、私からまず話をしてもいいか?」

「ん、あ〜いいぞ。バロンが一番アイツのことを知ってるだろうし、対策も考えないとだしな」

「あぁ、そうだな。相手がトリスタンとなれば対策は必要になる。それにはアイツを知らねばいけない」


 バロンは鞘から剣を引き抜き構える。



「ノルンよく聞いてほしい。トリスタンはいわゆる万能型の剣士だ。非の打ちどころがないほどのな。つまり弱点らしい弱点がない」


「父様、それは私ではどうにもならないってことですか?」


「それは違う。ノルンなら勝機がある。私はそう信じている。私が言いたいのは弱点を突いて倒せるようなヤツではないと言うことだ」


 ノルンは黙って真剣な表情のままバロンの話に耳を傾け続けた。


「トリスタンの気にしなければならないのは、高い身体強化スキルと闘気オーラの制御力だ。身体強化スキルは恐らくLv.10に到達しているはずだ」


 この時のノルンの身体強化スキルはLv.8になったばかり、その力に大きな差があることが分かった。


「そして何より他の者に比べ群を抜いているのが闘気オーラの制御力、私達戦士なら誰しもが行っていること、闘気オーラとは私達戦士にとって身を守る鎧であり攻撃をする武器でもある。トリスタンはその扱いが神がかって速い」


 ノルンは父親であるバロンにそこまで言わしめるトリスタンに脅威を感じていた。



 私達は闘気オーラを常に満遍なく纏っているわけではない。それはなぜか、答えは簡単使えば闘気オーラを消費し疲れてしまうから、だから使うにあたっては考えなければならない。他にも考えないといけないことは多くある。闘気オーラは集中することで効果を高めることが出来る。脚に集めれば速く移動でき、腕に集めれば怪力を出せる。首のような急所になる場所に集めれば剣ですら弾くことも出来る。

戦士にとって基本であり奥義にもなりうるなんて言う人がいるほど重要な力、トリスタンもきっと奥義と言えるほどの実力者なんだ。



「ノルン…お前には才能がある。だかこの短期間でトリスタンと同レベル以上の制御力を身につけることは不可能だろう。だが策はある。その速さに対応出来る別の力を使おうと思う」


「別の力ですか?……私にそんな力があったでしょうか?」

 ノルンは首を傾げるがバロンは笑って答えた。


「ノルン何を言ってるんだよ。忘れられるのか?地獄の猛特訓を……」


「地獄の猛特訓!?……え!?」

 ノルンの身体がビクッと反応する。

 忘れていない証拠だった。


「あらあらバロン、地獄の特訓なんて失礼じゃなくて、私のは帝王学に基づく私なりの教育よ。少し厳しく感じるかもしれないけど、すべて計算された物、あまり変な言いがかりをするなら、あなたにも指導がいるのかしら?」


 今度はバロンがビクッと反応し、すぐに答えを返す。


「スカーレット何を言うんだい。君と何年夫婦をやっていると思っているんだよ。十分過ぎるくらい君のことは分かっているさ。だから指導はなくていいかな」


「そうね」

 あっさりと受け入れられ、バロンは安堵する。


「今は忙しいから後にしましょう」

 がーん……バロンは表情には出さないが、内心では四つん這いになって落ち込むほどショックを受けていた。



「ノルン、さっきも言ったけど時間があまりないは、ここに居る全員であなたを鍛えるから倒れている時間はないわよ」


 スカーレットの髪が浮き上がりチリチリと火花を散らし幻想的な美しさを見せてくれた。でもノルンにとっては恐怖でしかなかった。

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