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第372話 最強騎士トリスタン


「お久し振りです。バロンさん」


「トリスタンお前何をやっているのか、分かっているんだろうな!」


 クロア、クリエを後ろから斬ったことにバロンは怒りを覚え、表情には出さなかったが声にその怒気が乗っていた。


「あなたに怒られる筋合いはありません。あなたはもう私の上司ではない。それにその二人は国を守る兵士としてなっていない。国に仇なす賊をこんなにあっさりと入れてしまうのだから……罰は必要だ……」


「はぁ〜……トリスタン、真面目なのはいいが、お前は間違っている。誰が仲間を傷つけてまで規則を守れと言った」


「フッ、さっきも言いましたが、あなたは私の上司ではない。小言は聞きませんよ!」


 トリスタンは大きなハットを片手で押さえると、剣に手をかけ目にも留まらぬ速さで抜き剣を振った。


「キーン………」

 トリスタンの剣とバロンの剣が交差する。


「あなたは私より弱いんだ!さっさと退いてください」


 トリスタンは身体強化と膨大な闘気オーラでバロンを圧倒、バロンは弾き飛ばされる。


 バロンは十メートル程飛び着地。

 バロンの目がより厳しいものに変わる。


 二人の間に闘気がぶつかり波紋となって広がる。

 そんなピリピリとした緊張感溢れる中、だらっとだらけた緊張感のかけらもない声が聞こえた。


「お〜い!二人ともやめろやめろ」

 両手をダラダラと振って現れたのはイグニス。

 全然空気を読んでいない。


「おいおい、バロンお前が熱くなってどうする。冷静な判断が出来るのがお前の売りだろ」

「んーーイグニスお前に言われるとはな。今日はお酒は飲んでいないな」

「んだよ!そう言う返しはズルいぞ!今日は1杯しか飲んでねぇ〜よ!」

「なんだ飲んでるんだな。でもお前が1杯……むしろ調子は良さそうだな」


 バロンは冷静になり闘気オーラを抑える。

 


「イグニスさん、邪魔をしないでほしいな〜。せっかくバロンさんを叩きのめせたのに」


 軽口を言うトリスタン。

 それを聞いたイグニスはため息をした。


「トリスタンお前な〜。そんな安い挑発にバロンは乗らないからな。でもな〜よ〜く聞け…クソガキ!俺は調子に乗ってるヤツは焼くぞ!」


 イグニスの怒気を当てられたトリスタンはニヤリと笑みを浮かべた。


「イグニス、今度は私が止めないといけないのか?」

 呆れたように言う。

「あ!いっけね!俺が焚き付けられたか?危ない危ない。今日は俺じゃないもんな。いっけねぇ〜いっけねぇ〜」

「そう言うことだ。私の娘は強いぞ!」

「そうそう、俺の弟子でもあるからな」


 バロンとイグニスは嬉しそうに話をする。

 それを聞いてトリスタンの前に進むノルン。


「本気……なんですね。イグニスさん、それにバロンさんは良いのですか?娘さんが斬り刻まれることになるんてすよ」


 バロンとイグニスが答えようとしたが、それを遮るようにスカーレットが現れる。



「あなたが……トリスタンだったかしら?」

「えぇ、どうも、一応スカーレットさんとは何度か会っているのですが」

「覚えていないは、大した男じゃないんでしょ」

「スカーレットさんは変わらず気が強く、厳しい。そうですね。私はまだ弱いかもしれません。ですがあなたの旦那より強いですよ」

「あなた馬鹿なのかしら?本当の強さを全く分かっていない。それとも忘れてしまったのかしら、フフッ、大丈夫よ。きっと私の娘があなたにそれを教えてくれるわ」


 不敵に笑うスカーレットにトリスタンは苦笑い。


「フッ、口であなたに勝とうとは思わない。言っても分からないなら、行動で示すだけです」


 トリスタンはスーッと流れるように剣を構えた。


「ノルンちゃん!負けるんじゃないわよ〜!私も修行に付き合ったんだからねぇ〜。そんなヤツボッコボコにたたんじゃいなさ〜い!」


 ジェーからの熱いエールにノルンは手を挙げて応えた。




「ふぅ〜………緊張する」

 深呼吸しながら剣を引き抜きリラックスする。


 トリスタンは意表を突かれ一瞬呆然とし、得心いったようで、ノルンに声をかけた。



「あまり硬くならなくていい。さっきはああ言ったけど安心してほしい。そこまでのことをするつもりはないから、手心を加えよう」


 トリスタンは優しくノルンに話かけたが、ノルンの反応はトリスタンの思うところではなかった。ノルンの表情はさっきまでとは違い酷く歪ませて、まるで生理的に無理と訴えているようだった。



「ありがとう。でも気にしないで、私あなたに勝つために修行してきたから、全力じゃないと意味ないの」


 ノルンはキリッとした目で言った。その目を見たトリスタンには本気だと、私は倒すと訴えていることに

イラつきを見せる。


「随分と強気だ。それは良くない。弁え給え。力なき者は何も訴えられないのだ」


「うん。そうかも、でも私は力だけが全てじゃないと思う。むしろ力なき者のために剣振るいたいから、あなたが言う意味を理解したくない。もういいからこれで語りましょう」


 ノルンも剣を構えた。


「バロンさんの娘らしい言葉だね。そんなんだから私に負けるんだよ」


 ノルンの剣に炎が灯り火花が散る。パチパチと激しく鳴る音はノルン怒りをあらわしていた。



 ノルン勢いよくトリスタンに接近し剣を振った。それを余裕そうに受け止めるのだが、剣が衝突した瞬間、トリスタンの表情が変わった。


 ズシーンっと重い。

 トリスタンの剣が押し込まれる。

 踏ん張るが間に合わず。


 トリスタンは両足をずって数メートル押し飛ばされ、その眉間にシワを寄せてノルンを睨みつけた。


 ノルンとトリスタンの闘いが始まろうとしていた。

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