第36話 今度私と旅行に行かない
ここは町の警備塔の取調室
ここに居るのは、
バロン様、警備隊長のバニラさん、ジェーさん、
そしてボク?……なぜに?
良く分からない状況の中、重苦しい空気が………
「それでは改めて話をするが、ジェット殿は飲食店での暴行を認めると、それで宜しいな!」
「えー認めるわ!ワタシが店で暴れたこと、申し訳ありませんでした」
ジェーさんは神妙な面持ちで答える。
これで一件落着、ちゃんちゃんで終わりで良いと俺は思っていたがそう言う分けにはいかなかった。
警備隊長のバニラさんが待ったをかける。
「バロン様、ジェット殿を処罰するおつもりでしょうか!」
「あぁ、そのつもりだよ!何か問題でも?」
「問題大ありです!バロン様もお気づきでしょう。もしもジェット殿を投獄に入れればポール子爵が黙っているとは思いませぬ。そうなればバロン様の立場も危ぶまれますぞ!」
「そうだな、だが民の者をないがしろには出来ない。分かってくれ!」
「し、しかし……」
バロン様の決意は固く、バニラさんは心配でたまらないと言った顔をして黙る。
「大丈夫よ!パパが出て来ても、ワタシが説得するわ。だからワタシを捕まえて頂戴、ワタシに罪を償わせて」
ジェーさんの言葉にバニラさんは驚き、バロン様は、一度目を瞑り考えてから喋りだす。
「そう言って貰えて助かるよ。ジェット殿、あなたにはしっかりと罪を償って貰い。また一流の冒険者として活躍して貰いたい」
「え〜ありがとう!バロン殿、次は道を踏み外さないように、心を入れ替えて出てくるわ!」
ジェーさんはバニラさんに連れられ部屋を後にした。
…………あれ?俺って何のために居たんだろう?
「ふ〜……何とか被害の拡大は防げたようだな。タクトくん待たせたね!」
「あ!?いえ、気になさらないで下さい。それでなんでボクはここに呼ばれたのでしょうか?」
「ん?…あ〜そうか、そうだね。タクトくんには説明しないといけないね。君に来てもらった理由は2つ、1つはジェット殿を説得した君がいた方が話がスムーズに進むと思ってね。実際想像以上に事は上手くいった。感謝するよ!タクトくん、そしてもう一つが本題さ!」
え!……なんだろうか、バロン様が改まって言われるような事………恐ろしい!
「今度私と旅行に行かない」
「…………へぇ?」
なんですと!?
「いや〜マルクトに今度遊びに行こうかと思ってね。せっかくだしタクトくんも誘いたいな〜と思ってね」
「え、……はぁー……そうですね……」
バロン様は意外と俺に気軽に話しかけて頂ける。嬉しいのだがバロン様は貴族、俺は平民なわけで恐れ多く感じる。
「タクトくんはマルクトには行ったことはあるかな〜」
「いえ、ボクはこの町を出たことがないので」
「お!それは良い!是非ともタクトくんも行こう!とても大きくてそれに色んな種族が集まるとても良い町だよ!」
にこやかに貴族様とは思えない笑顔を俺に向けるバロン様、これは断れる雰囲気ではない。ま〜そもそもバロン様の誘いを断れるわけもない。
それに実際は行ってみたいとも思っていた。俺はこの町以外に他の町を知らない。他の種族か〜エルフとかドワーフとかもいるのかな〜
こうしてボクはバロン様のお話を承諾し帰宅した。
………▽
「我も行くのじゃ!」
「ワンワン!」
ローム先生とニキが踊るように騒いでいる。
「そんなに旅行だ〜旅行だ〜嬉しいな〜を全身で表現されてもな〜、連れていけるかどうか、先生は最悪見えなくなれるから連れて行けると思うけど、ニキはどうだろう……」
「ワーン!!」
ニキはショックを受けて岩のように固まった。
「ま〜なんだ、一応は聞くからさ、期待して待ってろよ!」
「さすがはタクト、オレは嬉しいぞ!ペロペロ」
ニキは嬉しさのあまり、俺に飛びつき顔を舐める。
「嬉しいのは分かったから、舐めるな!」
俺にかぶさるように乗っかるニキの上に突然ツールボックスが………落ちた!
「わふーん」
ニキが頭を押えて転がる。
「コラ〜タクトに何するんや!このワン公!タクトをナメナメして良いのは、ウチだけやでー!」
カンナに俺はカパカパと噛まれた。
「おっとそうだった!カンナに聞きたい事があった!」
「なんや?ウチに聞きたいことって、カパカパ」
「ボクのユニークスキル、つまりカンナについてか、ややこしいな〜、カンナあれから何か道具は増えてないか?」
「増えてないで!残念ながらあのおっちゃんとの闘いくらいやと、大した経験にならんかったみたいやな〜、ま〜せめて殺しとったらレベルが上がったかもしれへんけどな!」
「な!?殺し……殺したほうが経験値を得られるのか!」
「そや!今後最後までやったほうがええで〜!」
「ん……ん〜」
「ふ〜冗談や!確かに経験は多く取れるやけどタクトは殺しはしと〜なかったやんな!無理せんとき!やりとーないことは無理せいへん方がええねん!」
「おう、ありがとうな!カンナ」
俺がカンナを撫でるとカパカパと嬉しそうにした。
「さて、ステータスは確認しておくか!」
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『タクト』 Lv:26
【種族】ヒト族
【年齢】14
【職業】庭師(お手伝い)
【称号】村人
【加護】特になし
【HP】650/650(+0)
【MP】250/250(+0)
【魔力】85(+0)
【筋力】55(+0)
【耐久】55(+2)
【敏捷】70(+2)
【運】 100(+0)
【ユニークスキル】ツールボックス Lv.1
【レアスキル】 地の精霊魔法 Lv.2 雷魔法 Lv.1
【コモンスキル】剣術 Lv.2 体術 Lv.2
生活魔法 Lv.2 魔力操作 Lv.2
言語理解 Lv.1 料理 Lv.2
掃除 Lv.2 採取 Lv.2 隠密 Lv.2
new!M Lv.1(ブタ野郎!)
道具 プラスドライバー
ニッパー
絆創膏
ハンマー
メガネ
ライト
作業手袋
ヘルメット
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うぇ!?マジかよ!デバフ付いてるんだけど……
「な〜カンナ、スキルって消せないの?」
「そんな簡単には無理やで〜、基本的には取れんと思っとき〜」
俺はガクッと膝を突いて愕然とした!