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第358話 九王バエル


「ん?……なんで分かったのかな〜私から名乗った覚えはないけど」

 ポーラン司教はアゴに手を当てて考える仕草をした。


「なぜ……ですか、私から言わせてもらうなら、なぜ分からないと思うのですか?私はあなたを片時も忘れたことはないというのに………分からないと言うのならお教えしましょう。先ほどはポーラン司教の声と波長が違うと言いました。ですがもう一つ気がついたことがあります。私は以前あなたと会ったことがあります」


「…………ん!あ〜そう言うことですか、私の声に九王バエルと同じ波長があったと、そう言うことですか?」


 はっと思いついたような顔をしてに指を立てて言った。

 フンフンフン……うん〜……

 唸りながら何も言わないポーラン司教。

 ほぉ!とこれが漏れポンッと手のひらを叩き言った。



「覚えておりません」


「そうでしょう。以前のあなたも同じようなことを言っておりましたから、それでお認め頂けると言うことで宜しいですか?」


「えぇ、いいですよ。何か確信めいたこと言われていたので、知りたかっただけですから、だいたいは捉えましたし、もうこの姿も十分ですかね」


「なのーー!?」

 アイリスが驚きの表情で叫び、聖女様以外のものは顔をしかめて見ていた。ポーランは額に手を置くと爪をたてて額に喰い込ませメリメリと音を立てながら顔を引っ剥がす。


 

 顔の下には真っ白なピエロのような化粧をした顔が、表情は笑い。サーカスでショーを楽しめるピエロと変わらない。


「オッホン、私変身が得意なんですよ!どうです?分からなかったでしょ」


 ふんふんと鼻歌をさせながら、今度は顔以外の身体を裂いて脱皮のように出て来た姿は不可思議な格好、右手側は鎧の小手、左側は貴族が着ているヒラヒラとした袖、下半身は布に鳥かご形の骨組みがついていたドレス、上半身(胸、腹)は神父が着る司祭服、チグハグでグチャグチャ、統一性が全くない服装が不気味さを上げていた。


 聖女様の表情が悲しみに包まれていく。

 それは過去の出来事が起因していた。


「バエル、あなたは変わらない。変わってはくれないのですね。その服装、今のあなたを表しています。多くを取り込み何になりたいのですか!自分でも分からなくなっていますせんか!」


 バエルは聖女の言葉に首を傾げる。

 それを理解しないのか?出来ないのか?

 所詮は悪魔、話など出来ない存在。


「うん!聖女、あなたの言っていることは私にとって知る必要のないことだよ!私は楽しければ良い」


 ぴょ〜んと跳ね楽しそうに踊りながら教皇とヴォルフに近づいて行く。



「もう……いいよな!」


 教皇は話は終わったと確認し答える間もなく腰を落とし力強い拳の正拳突きで何の警戒感を持たずに接近してくるバエルに向かって打つ!


 拳がバエルを捉え腹部側面にメリ込む、重い一撃がバエルを吹き飛ばした。………のだが!


 教皇の身体から糸が伸びて、その糸はバエルの胸に繋がっていた。まるでゴムのように縮み、バウムが急速に接近、攻撃をされると思った教皇は守りを固めようと動くがバエルはすれ違いざまに教皇の顔に手を触れるだけでそのまま通り過ぎて行く。



「な!?くそ!気持ちわりぃ〜ベタベタする」

 

 顔を拭う教皇。

 汚い物を付けられたこと。

 攻撃するチャンスだったのに小バカにする態度。

 そしてこちらをニヤニヤと笑うバエルの姿。


 教皇の額に太い青筋が浮かび上がり。

 ガリガリと歯軋りを鳴らしながら怒る!



「ほぉー。そう言う態度でテメェは来るんだな。上等だぜ!その根性……叩き直してやるぞ!オラ!」


 教皇は突進するように右ストレートを放つ。バエルは腕を胸の前でクロスさせ受け止める。


「まだまだ!こんなもんじゃないぞ!」

 

 連打!連打!連打!

 猛追に激しく重い拳がバエルを襲う。

 

 バエルは腕でガードしつつ、拳を拳で弾くなどをしてなんとか凌いでいた。


「ほぉ〜!さっきよりだいぶ動きがいい。だかな〜守ってばかりでは俺には勝てん!」


 教皇の渾身の一撃がバウルに炸裂。

 口から血を吐き倒れた。


 

「どこを見ているんですか?」


 教皇は後ろから声が聞こえ振り向くとそこには無傷のパエルが立っていた。


「なぜお前がそこに……」

 先程殴り倒したバウムはそこには居なかった。


「おのれ〜たばかりおったな!そうか幻術魔法を使う者が居ると言っておったか、なるほどこれは確かに面倒この上なし!しかし負けはせん!」


 ふん!っと気合を入れ、教皇はバエルに向かって行く。



………………▽


「不格好ではありますが、悪くない踊りです。舞い踊れ教皇!すべてを叩き潰して狂い踊るのです」


 クックックッと笑うバエル。


「本当に変わりません。あなたのやり方はとても気味が悪い」


 そして聖女は鋭い目つきに変わり言った。

 傍には血を吐き倒れたヴォルフ団長。

 少し離れた場所でブラックが教皇に襲われている。


「あなたは昔も同じように味方同士で相打ちさせ、それを離れた場所から楽しそうに見ていました。一体何が楽しいと言うのですか!」


 バエルは二ーっと口を三日月のように開き言った。


「道化に踊らされている者を観るのは滑稽で面白い」

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