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第357話 あなたは悪魔ですから……


「もういいや」

 なんの感情もこもっていない冷たい声。

 ポーラン司教から出ているのか?

 違うこれは!?


 誰しもが想定出来ていなかった。

 その声は先ほど拘束した信者からだった!?


 信者達口から糸が飛び出し周りにいる者が糸に絡まれ動けなくなる。



「やってくれたわね!くっ!くっ!も〜う!」

 ラキは暴れるが絡んでいる糸が蜘蛛の糸のように粘着質があり上手くほどけない。


「ラキあまり動かないでください。よけい絡まります」

 ラキの後ろでは眉間にシワを寄せて困った顔をしたティアが一緒に絡まっていた。


 二人は糸が飛び出した瞬間聖女を守ろうと庇い前に出たことで糸に絡まってしまった。


「これを無理やり解くのは難しそうね!」

「えぇ、解くにしても時間はかかってしまうかと」

「んーー!仕方がないわ!アイリスお願い聖女様を守って!」


 ラキの言葉にビクッとしながらこちらを振り向く少女、身の丈に合わない剣を持ち!拳をぐっとして胸の前に持っていく。


「任せてなの!メリダはワタシが守るなの!」

「アイリスその意気はいいわ!でもね〜………何度言わすの!聖女様を呼び捨てにすんな!」

「なの〜!?ラキが怒ったなの~」


 アイリスは逃げるように聖女様の下へと向かい、剣を抜き構えた。


「あらあらアイリス、私を守ってくれるの。嬉しいわ」

「うんなの!メリダはワタシが守るなの!」


 聖女様はヨシヨシとアイリスを撫でられ微笑ましい光景であったが、その横では厳ついおっさんが怒りを込めて睨みを利かしていた。


「おう!どう言うつもりだ?お前、こんなことしてただで済むと思うなよ」


「教皇様そんな顔をしないでください。怖くて震えてしまいます〜」


 両手で自分を抱くように震えるポーラン。

 明らかにからかっているのが分かる。

 そしてこのポーラン司教は何者なのか?


 

…………▽


 糸を間逃れたのは六人。

 聖女メリダ、教皇のおっさん、アイリス、ブラック、ミルキー、第二師団ヴォルフ団長、ほとんどの者が糸に絡まる中初めに動いたのはヴォルフ団長だった。


 黒毛の狼の獣人ヴォルフ団長は野性味溢れる機敏な動きでポーランに接近、鋭い爪を首を狙うが、既のところでその手を止めた。


「おい!あんた……なんで躱さない。なぜそんな顔が出来る?」


 

 ヴォルフ団長は気味が悪いと感じていた。

 初めから当てるつもりはなかった。

 ポーランが肉体的には本人の可能性がある。

 殺すわけにはいかなかった。

 だから脅すつもりでやったのに……

 ポーランの顔はニヤニヤと笑うばかり。


「やっぱお前さんは本物か?だってそうだよな〜。自分の喉笛に刃物を突きつけられて平然といるのは難しいもんな〜」

 

 ボーランは平然とした顔で口を開いた。


「いえいえそんなことはありませんよ。切れないと思う刃物を突きつけられてもなんとも思いませんから」


 な!なんじゃと!?

 ヴォルフ団長は気がついた瞬間に身を引く。

 そのまま居たら捕まっていたかもしれない。


 ヴォルフ団長の手はいつの間にか糸でぐるぐる巻きとなり手がまともに動かなくされていた。


「チッ、お前さんに触れるとこうなるのか?」

「いえいえそんなことはありませんよ。ただの防衛本能です。そんなことをするつもりではありませんでした」

「はっ!言ってろ。そんなの誰もしんじねぇ〜よ!」


 ヴォルフ団長は再び突っ込もうとすると肩を捕まれ止められた。


「待て!ヴォルフ、一人で突っ込むな!」

「教皇様……行かせてくだせぇ〜!俺は突撃団長ですぜ!危険は承知よ〜!」

「そんなことは分かっとるわ!俺は独り占めするなと言っているんだ!」

「あっ…アハ、すまんかった教皇様、ちょいと動揺してあんたのことを忘れておったわ!それではどっちが先に一発入れれるか競争としましょう」

「おーーおもしろい!それでは………」

 

 二人はやる気満々で突撃しようと前のめりになったところで聖女様が待ったをかけ、二人はズッコケそうになっていた。


「ヴェルフ団長、教皇まだ彼と話がしたいの待って頂けますね」


「はい!分かりました〜」

 一人元気よく返事を返す教皇様に、呆れた皆のため息が漏れた。


 聖女様はゆっくりと歩き、教皇様とヴェルフ団長の前を横切りポーラン司教の傍まで進んだ。



「あまり時間をかけたくありません。正直に答えて頂けませんか?」


「聖女様、それはあまりにも浅はかではありませんか?そんな何の変哲もない問い。真正直に答えるものなどおりましょうか?それともまた私の声を聞いて何か探りを入れておられるのでしょうか?」


 ポーラン司教は紳士の如く丁寧な仕草で対応する。

 敵意もなく。悪意もなく。殺気もない。

 何を考えているのか分からない。

 聖女様が一体どうするつもりなのか?

 誰もがそれを見守った。


「いいえ。もう探りなど入れようとも疑ってもおりません。間違いなくあなたは悪魔ですから、そろそろ正体を見せたらどうなのです。

 

               ……………九王バエル」



 

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