第354話 VS ゴエティア72柱 アミー①
ルナがボティスと戦闘していた頃、アポロンとセルギウスもまたゴエティア72柱の者と戦っていた。
敵はアミーと名乗り、その身体は炎に包まれた大柄な男で、まるでゴリラのように四肢を使って移動、動きがアンタッチャブルで読みにくく苦戦していた。
「だぁぁーーコッチ来んな!バカヤロー……うわっ〜と!」
アミーがアボロンに突進、ギリギリのところで躱す。
躱せない速さではない。しかし問題は……
「親父どうするんだよ!殴っていいか!」
「いい訳ないだろうが、見て分からんか!あんなの殴ったら大やけどになるわ!」
「そうは言っても、これじゃ〜埒が明かないぜ!こうなったら覚悟を決めてやるしかないだろ〜」
「アポロン早まるな!その覚悟はまだとっとけ!まずが私がやろう」
「親父まさか!?やるのか!」
「言っておくがお前が思っているようなことはせんからな!」
セルギウスは魔力を闘気に変え身に纏うと腕を大きく振って闘気を腕から飛ばした。
闘気はアミーの頬に当たりよろける。
よろけた方向にはすでにセルギウス拳を引いて殴る体勢をとっていた。
「ガンッ」と硬い物に当たる音がした。
アミーはアッパーカット弧を描き吹き飛ぶ。
圧倒しているように見えるがセルギウスの表情は険しかった。直接は殴っていない。それなのにも関わらず殴った拳は火傷を負っていた。見た目以上に男の周りが高温だと分かる。
「んっだよ!そう言う方法で行くなら言えよ親父!この悪魔ボコボコにしてやんよ!」
「待て!アポロンこの方法はなしだ!他の方法を考えよう」
「あ〜ん?なんだよ!闘気を飛ばして殴れば闘えるんだろ」
「あ〜闘えはする。だが倒すのは難かしそうだ」
アミーはムクッと立ち上がり身体を動かし調子を確かめていた。
「あの男、思っている以上にタフそうだ。先程の攻撃ては百発ぶち込んでも倒れはせんだろう」
「んじゃ〜どうすんだよ!このまま指くわえて待っているほど気は長くないぜ!」
「ふん!そんなことは知っている。親子なのだからな。ルナ殿の命令通りなら時間を稼げば良い。だが性に合わん」
「へっへぇ!流石は親父」
「ま〜な!全力でやって結果時間を稼いだことになるのは仕方ないが、是非ともコイツとは全力でぶつかりたいわ!アポロンいいな!」
「おうよ!それでどうするんだ?」
「アイツが纏う炎はかなり危険だ。本来なら接近せず魔法による攻撃が好ましいが、私達にはそんな都合の良いものはない。ならばあるものを工夫してやるまでよ!」
「フン!フン!フ〜ン!」
セルギウスは拳を振り気合を入れる。
「そんで!具体的にどうする」
「フッ!コイツよ!コイツ!」
セルギウスは腕に着けた簡素なガントレットをアポロンに向ける。
「はぁ?それがどうした!分かんねぇ〜よ!」
アポロンのガントレットは肘まで覆われて、少々ゴツイが、セルギウスのはそうではない。手の部分しか覆われておらず、装飾が凝っておりデコボコしていた。
「そう言えば、アポロンには見せたことはなかったか、このガントレット真の力を」
「なんだよ!親父、なんかワクワクする言い方しやがって!早くみせろよ!(ワクワク)」
「そうでなくてはな。このガントレットはな。見て分かるように凝った装飾がされている。これはな、風の力が発動する魔法陣が彫られている。魔力を込めることで風を纏うことが出来る。更にここに丸い窪みがあるだろ。ここには魔石をセット出来るようになっている。ここには火の魔石を付けて殴れば相手は大爆発よ!」
「おースゲーな!親父だけどよ〜」
アポロンは少し呆れたような顔をするが、セルギウスは手で制して話を進める。
「ま〜待て!お前が言いたいことは分ける。そもそもアイツを殴れないだろ!と言いたいんだろ。だかそれはやり方次第だ。良いか!俺がアイツを守っている炎をなんとかしてやる。そうしたら迷わずアイツを殴れ!」
アポロンは納得は出来なかったが、それでも自信満々で親父が言っているので従うことに、そしてなにより楽しそうにする親父は止まらないと知っていた。
「はぁ〜親父程々にしろよ」
「分かっていますよ!」
セルギウスはアミーに向かって一直線に走って行く。アミーは動かず迎え撃とうと両腕を上げた。
セルギウスは最初のやり取りで闘気を纏っていてもアミーの半径50cmに入れば火傷を負う。そのため範囲に入る前になんとかしなければならなかった。
セルギウスはアミーの手前に来ると大きく腕を振りかぶって…………地面を殴った!
地面で炸裂したことで土砂となってアミーに覆い被さる。土砂がかかったことでアミーの炎は沈静化、土に埋もれたアミーにアポロンの重い右ストレートが炸裂した。