第350話 白い霧と魔術師
王城に攻め込むといきなり奇襲を受けた、相手は魔術師で白い霧を発生させ俺達の足止めをしている。
このまま足止めされるのはマズイ!
敵に増援をされれば面倒になる。
早急にこの霧をなんとかしなければならない。
「キョウカならこれ!何とかなるよな!」
「もちろんよ!この程度なんてことないわ!」
キョウカは魔法の杖を指揮棒のように巧みに振り同時に三つの魔法を放った。
『ブラスト』
『シルフィード』
『エアシールド』
ブラスト∶突風で霧を飛ばす。
シルフィード∶風の精霊を召喚、術者を捜索。
エアシールド∶風の盾をいくつも作り守りを固める。
周辺の霧は吹き飛んだが、まだどこからか発生しており、徐々にこちらに霧が迫って来る。
「流石は大魔導師、鮮やかな魔法だ!それは良い。……キョウカお前、風の精霊魔法も使えるのか?ズルいぞ!」
俺はガックリとして悲しそうなに横目でキョウカに訴える。
「なんでズルいのよ。私の大魔導師のスキルは過去の所有者のスキルを継承出来るんだから仕方ないでしょう」
「んーーそうなんだけど……羨ましい〜」
「気持ちは分かるわ!だけど特に精霊魔法は精霊との関係性が威力を左右するから、あなたほど力は引き出せないし、上手く制御も出来ないわよ」
「へーそうなんだ。万能だと思ってた大魔導師スキルにそんな弱点が」
「そうよ!いくら使えても、使えるだけで力を引き出したり上手く制御しようとすれば、それなりに扱って訓練しないとまともには使えないの。私だって努力しているんだからズルいとか言わないでくれる」
「あ、はい。すいません」
俺は素直に謝る。
「分かればいいわ。それより精霊が術者を見つけた。コイツは私が抑えるからあなた達は先に行きなさい」
「キョウカ、流石に一人はマズイ、う〜んどうすっかな。時間もあまりかけられないし……あ!そうだ。ニキ悪いんだけどキョウカについてやってくれる」
「のだ?俺がコイツにか?」
ニキは後ろ足で頭をかきながら、嫌そうではないが、なんでコイツについていかないといけないんだと
疑問の顔をしている。
「タクト、別にいいわよ!私は一人で、このくらいなんてことないから」
「分かってる。キョウカは強い。だけど絶対じゃない。不測の事態はあり得る。キョウカ、君はボクに一度負けている反論はなしだ」
「ムカッとする言い草ね!でもそれを言われると反論は出来ないわ。良いわよ。その喋る犬が役に立つか知らないけど、勝手に来れば」
「分かってくれて嬉しいよ。それじゃ二人とも頼んだ」
ニキは不満そうだったが、俺の言うことを聞いて、
キョウカについて行ってくれた。
「それじゃ、術者はキョウカ達に任せて、僕達は建物の中に入ろう先生」
「そうじゃの〜我らの力を見せてやろうぞ!」
俺達はキョウカとニキと別れ先に進む。
ここで一つ説明しておきたい。
王城に侵入したメンバーはついて。
・ソウルフロンティアの住民
タクト、ローム、ノルン、バロン、スカーレット、ジョー、ニキ、イグニス、エメリア
・国王軍
ハドリアヌス国王、ローラン侯爵、ブライアン侯爵、宮廷魔術師アルス、国王軍兵士二十人
計三十人ほどで城を攻める。あまりにも無謀な作戦に感じる。だが父さんとバロンさんの話では、このメンバーであれば囲まれる前に突入しボルジア公爵を捕らえられると言われている。俺としては信じるしかないのだが、国王様達はどこだったのか?こうして作戦が実行された以上は説得は出来ているのは間違いないが、どうやったんだか?
「タクト止まれ!後ろに誰もおらぬぞ!」
………はぁ?…なんですと!?
俺が勢いよく後ろを振り向くと、そこには誰も居ない。そしていつの間にか白い霧がまた発生していた。
「おい!これはどう言うことだ」
「う〜ん……恐らくじゃが、術者は一人ではなかったのではないか」
「…………あ〜なるほど、てぇ!そんな理由!しまった!そんな単純なことに気が付かなかった。油断するなって思ってたのに〜」
「うむ!過ぎたことを言っても仕方なかろう。目的地は同じじゃ、そのうち合流出来るであろう」
まったく入って直ぐにこれだ。想定外のことは戦場では当然のように起きると聞いていたが、起こってみると驚きだ。ただ先生の言う通り、事前に城の見取り図は頂いて大体の位置さえ分かれば、ボルジア公爵が居ると思われる謁見の間には行ける。一応目的地はここになっているから無事であればここで合流出来るはずだけど、それでここにボルジア公爵が居なければ書斎室か宝物庫に向かう予定。
「探し回るよりかは向かった方が良いか……心配だけど、信じるしかないよな」
俺はみんなの別れ進むことにした。
俺は城の中に入り広々とした廊下を走る。
ここで少し違和感を感じていた。
誰ともすれ違わない。
普通兵士か使用人くらい歩いてそうなのに。
「確かここの角を曲がって……!?」
曲がった先には数人の兵士が倒れており、奥から戦闘音が聞こえる。もしかしたら俺より先に誰か来ているのかも、加戦するするため急ぎ進むとそこには一人の男が兵士を薙ぎ倒していた。
「ん!まだ居たのか?良いぜ相手になってやるよ!」
男は威勢の良い言葉を俺に投げかけて来た。
しかしそんなことはいい、なんでここにコイツが!?
「………バラク」