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第348話 息子を心配するのは母親として当然



「タクちゃんちょっと待っててね!母さん昼食の準備してくるから」

「あ!うん、出来ればなんだけどシチューが食べたいなかな」

「ま〜嬉しい。珍しくタクちゃんから食べたい物を言ってくれるのね!任せて、すっごい美味しいシチューを作るから」

「わ~いやったね!楽しみ〜」


 母さんはパタパタと早足で台所に向かう。

 それを見送ると、俺とカンナは居間でグッタリしている三人に話を聞きに行った。



「えーっと、どうしたのかな?えらくお疲れみたいで」


 ぬらりとこちらを見る三人。最初に口を開いたのはローム先生だった。


「まったくどこをほっつき歩いていたのじゃ、おかげで酒が全部抜けてしまったわ」


「いや先生、もうすぐ戦なんで飲まないでくださいよ。酔っぱらって戦えないとかやめてくださいよ」


「もう分かっておるのじゃ、散々お前の母君にいわれたからのう〜。飲む気になれぬ!」


 え!?母さんに?なにを?


 トコトコトコとゆっくりとした足取りでニキはふらつきながら俺の足元にやってくる。随分とクタクタの姿をしており軽く撫でてやった。


「ううっ、タクトメッチャ怖かったのだ。お前の母さん、ヘル姉級なのだ」


「お、おう…それは相当怖かったな。ボクもお前の姉さんにはこっぴどくされたからな。きっと相当なんだろう」


 それで結局なにを?


「タクトおかえり」

「父さんただいま、それで説明は父さんがしてくれる?」

「あ〜ハハッ、大変だったがこれくらいは想定内だから問題はないよ」


 確かに他の二人に比べると父さんは元気そうだ。


「今回の戦、私と母さんはタクトと別の場所に行くわけだが、母さんはタクトについて行きたいと。ただま〜それを何とか説得して、母さんは大聖堂に向かってもらうことになったのだが、そこで自分がついていけない代わりにロームさんとニキに闘魂注入していたわけだ」


 なるほど、それは先生とニキに悪いことをした。あとで労ってやらんとな。


「仕方あるまい。息子を心配するのは母親として当然なのじゃ、タクトは気にするでない」

 先生は俺の頭にポンッと乗り寝転がる。

 てっきり何か不満を言われるかと思った俺は少し拍子抜けした。


「そうなのだ。タクトの母さんは怖いけど優しいのだ!ベル姉とは大違いなのだ!」


「ニキもう少し気をつけて発言した方がいいぞ。どこで聞いてるか分からないし、それにヘル姉にも優しいところはあると思ったけどな〜」


「のだ〜……優しいなのだ?しばかれた思い出が強烈なうえに多過ぎて、あっても思い出せそうにないのだ」


「あ~。確かに強烈……うん!確かに思い出に残るインパクトのある人だった。それは間違いない!」


「………タクト、ヘル姉となんかあったのだ?」

「いえ、なにも」

 不思議そうな顔をしたニキに俺は短く返事を返す。



「コンコンコン」

 ん?誰が来たようだ。

 俺は玄関に向かう。


「どちら様…あれノルン、どうしたの?」

「どうしたの?じゃないわよ!どこほっつき回ってたのよ!探したじゃない。はぁ〜戻っててよかったわ」

「あらら、ごめんちょっと寄り道してて、手間かけさせちゃったか、ごめん」

「ま〜良いわよ!それより父様から伝言、皆準備が整ったから、今から三時間後に教会に集合だって、王都奪還計画決行よ!」

「そっか、分かった。ありがとうノルン」


 そっか、もうすぐだって分かってはいたけど、行くぞって号令かけられると一気に緊張するんだよな〜。ソワソワして来た〜!


 そう感じながらノルンを見ると、ノルンも緊張しているのか、顔を強張らせていた。ノルンは特にこの国で最強と言われる剣士と闘うわけだし、緊張しないはずはないか、でもここは幼馴染として緊張をほぐしてやらないとな。



「ん?ノルンもしかしてビビってるの?」

 ノルンの表情が変わる。

「はぁ?何言ってるの?私がビビってるて言ってるの!」

「うん!だって顔を見たらすぐに分かるよ。無理しない方が良いんじゃないの?イグニスに任せれば〜?」

「ふざけないで!これはチャンスなの!私の夢が叶うかどうかのね!それをみすみす見逃せって!そんなの絶対イヤ!死んだって闘って!そして勝つわ!」

「ふ〜ん……それならそんな顔しないでよ。いつもみたいにさ!自信満々で無謀にも突っ込んでいくノルンの意気込みで行ってくれよな」

「………そうね。私少し弱気になってたかも、勝つ気で行かなきゃ、勝てるような相手じゃないもんね!弱気でどうするのよ私!絶対勝つ!」

「そうそう、その意気!」

「タクトありがとう。気合は入ったわ!でも一つ私からも言っておくは、ここ最近は無謀なのはタクトよ!

もう少し自分の命は大切にすること、だいたいね〜………」

 

 あれ?いつの間にか、俺がコンコンとノルンに説教されることに、それから玄関でダメ出しをひたすら言われていると、母さんの声が聞こえてきた。


「あ!ご飯が出来たみたい。お!そうだ!ノルンもご飯食べて行かない?多分一杯あるから一緒に食べようよ!」


「まだ話の途中だったんだけど、ま〜いいわ!ちょうどお腹も空いてたところだったし、でもタクトさっき言ったこと忘れないでよ!死んだら許さないんだから!」


「うん!分かってるよ!言っておくけどノルンもだからな!死んだら許さないし、ボクがそうはさせない!」


「タクトも強気なことを言うようになったわね!良いは、それじゃ〜私のこと守ってよ!」


 ノルンは穏やかな表情で笑った。

 ん?守って?いつもなら守ってあげるって言うのに。

 バロンさんの影響でノルンには騎士道精神がある。だから何か危ない時にはいつも俺を守ろうと前に出るのに、もしかしたら俺が強くなったことを認めてくれての言葉なら嬉しいかな。


「うん!ノルンはボクが守る!約束するよ!」

「んふふ、タクト約束だ………よ」


 あれ?ノルンはさっきまでと一転、表情が驚きに変わり固まっている。そしてすぐにその理由が分かった。


「タクちゃ〜ん。ご…は…ん、できたわよ!」

 後ろを振り向くと母さんが立っていた。

 しかも表情が笑顔にも関わらず威圧感がある。

 これは怖い!


「タクト!父様からの伝言は伝えたからじゃ〜ね!」

「え!?ちょ!ノルン〜ご飯は〜」


 ………ノルンは凄まじい速さで走って帰ってしまった。


「さ〜タクちゃん、ご飯が冷めないうちに食べましょうね〜」


 俺は母さんにいつになく強い力で抱き着かれ、家の中にズルズルと連れて行かれた。

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