第343話 周りを頼るように
「タクトさん、少し宜しいでしょうか?」
「あ!カミラさん」
空から降り立ったのはイグニスの奥さんカミラさんだった。大きな翼を仕舞いニコリ笑顔になる。相変わらず優しそうな知的美人さんだ。グッと来ぜ!
「お久し振りです」
「カミラさんどうされたんです。珍しいですね。こんなところに出て来られるなんて?」
カミラさんはイリスの眷属であり日頃はイリスのもとで働いており、あまり会う機会がなかった。
チョンチョンと肩を突かれ振り返ると頬を染めて珍しく興奮気味のルナがいた。
「ど…どうしたのルナ?嬉しそうだね」
「こ…この方ってもしかして天使様なの!」
「えぇ、この方はカミラさんと言いまして、イリス様の眷属の天使様です」
「えーーー天使さま〜すご~い!キャ~キャ〜」
ルナは腕を胸に当たりに持っていき騒いでいる。日頃見ない姿に少しびっくりした。
スススス〜っとルナはカミラさんに寄っていく。
「あの〜私ルナって言います。もしよければ握手してください」
「あら、綺麗で可愛いお嬢さん、握手はもちろん良いわよ」
カミラさんはルナの申し出を快く受け握手をする。
「ん!あなたもしかして天使の因子お持ちなのですか?」
「はい!」
ルナは嬉しそうな返事をすると、その白く美しい翼を広げた。
そう言えばルナは天使化と言う力を持っていたっけ、あんまり詳しく知らないけど。
「ほぉ〜。これは驚きました。あなたは天使の……いえあまり聞いていいことでは御座いませんでしたね。失礼をお許しください」
カミラさんはスーーッと頭を下げる。
「いえ、そのようなことは……頭をお上げてください」
ルナはワタワタと手を振って慌てて否定した。
そう言えばルナはカミラさんと同じように白い翼を生やして戦っていた。つまりルナも天使なのか?疑問に思いつつもカミラさんが聞くのをやめたのに俺が聞くのはどうかと思い踏み止まる。
「あの~カミラさん、ボクに何か御用ですか?」
俺は話を戻そうも声をかけた。
「はい、イリス様がタクトさんをお呼びです。少々お時間を頂けないでしょか?」
「え!?イリスがですか……えーーっと一つ確認なんですけど、ヘカテー様はまだ居られるので?」
「いえ、ヘカテー様は先程お帰りになられました」
「そうですか、それなら安心」
俺は胸を撫で下ろした。
「タクトさんあまり安心は出来ないかもしれません。たぶんイリス様はお怒りに……」
……………あ、あ〜………思い当たることはある。
この時、俺が思いつく心当たりはヘカテー様を置いて行ったことしか怒られる理由を思いつかなかった。
でもおかしい、確か最後の方はイリスもいい感じにして逃げて来たはず。
俺がん〜ん〜と唸って悩んでいると、ルナに諭された。「女神様が呼んでいるんだよ!早く行かないと!」と。不安ではあるが行くしかないか、はぁ〜。
「ルナ悪いんだけど、ボクは言ってくるわ。申し訳ないんだけど、そこに転がってるおっさんのことは頼む」
「えぇ!分かったわ。先程の商品には私も興味があるから部下を連れて見させてもらう」
「あぁ、そうしてくれ」
俺はルナにおっさんのことを任せ、イリスが住んでいる屋敷へ向かう。
それにしてもなんだろうな〜。変なことを言い出さなければいいけど。
「イリス様、タクトさんを連れて参りました」
「ありがとうカミラ、私はタクトと話をするから少し席を外してくれる」
「はい!かしこまりました。それでは失礼致します」
カミラさんは一礼して部屋を出て行った。
…………▽
「イリス……どうしたのかな〜?もしかして怒ってる?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「タクトあなた、私が言ったこと覚えてないのかしら!」
イリスは目を細めじーっと責めるように見る。
げ!?なんだっけか?全然覚えてないぞ!
「その顔、何にも覚えていないようね!」
ギクッギクッ……これは怒られるヤツ、ど、どうする!どうやって回避する!
「はぁー、もう言ったでしょ!周りを頼るようにって、話は私の耳に入っているわよ。地獄に落とされたそうじゃない。一人でなんでもかんでもやろうとするからよ」
あれ?常闇のリーダーアンデラにヘルホールから地獄に落とされたのを誰が教えたんだ!?
「今回も相手は九王、楽な戦いにはならないわよ。今度も一人でやるつもり?」
「あ、いや、そう言うつもりでは、それにこの間は母さんもいたし…」
「はぁぁー!言い訳しない!一人くらいで反論しない!」
「はい……すいません……」
イリスの強い言いようにサクッと頭を下げる。
「あなたにはあまり言っても効果がなさそうだから、私は違う方法をすることにしたの」
え!?どういうこと?
「カミラ来なさい!」
「はい!イリス様」
パタン……扉が突然開く。
カミラさんあなた、扉の前で控えてましたね!
つまり最初っからそのつもりだったんですね。
「タクト、カミラと模擬戦をしなさい!」