第34話 謝罪
ツールボックスには色々な物が入っており、カンナの話しによると、レベルに応じて物が増えるらしい、俺のレベルは20を超え、それなりに増えたのだが、その中に取り扱い注意と書かれているものが2つある。ヘルメットとライト、なぜこの2つにはこんな事が書かれているのか、気になりカンナに聞いてみた。
「そんなん知らんわ!」
カンナはなんでも知ってるキャラではなかった。
ただヘルメットに関しては分かる。1秒を60秒に、もう少し言い方を変えると、みんなにとっての1秒流れる間に俺は60秒の時が経っている。もう少し分かりやすく言えば使い続けた場合、みんなが1歳歳を取ると間に俺は60歳も年を取る。つまりヘルメットの多用は寿命を著しく縮めてしまう。
それではライトはどうだろうか?正直使い方でよく分からない部分があり、使ってみないと分からない。
………………▽
どうなるか分からないから、ライトを人には使いたくなかったけど、最悪こいつならどうなっても良いし、一応予想が正しければ、俺としてはこのあとの心配がなくなって助かる。
ハンドライトには3つのスイッチがある。分離⇔消滅、光⇔闇、善⇔悪、今回は悪と消滅を選択しスイッチを切り替えた。
「お前の悪意を消滅させる!良い子ちゃんな〜れ! ライト点灯!」
「うわぁ!眩しいじゃね〜かやめろ〜おおうおおう〜」
……………▽
◆バロン男爵の視点
「バロン様こちらです!ドラゴンバスターと思われる大男の報告があった場所は」
「ん!なんだあれは、大地が隆起している。それにあそこに居るのはノルン!に……ミルキーさんまで!?」
あの二人が居ると言うことは、必ずトラブルになっている。急がねば!
私は衛兵達を置いて行き一気に加速、ノルン達の下へといち早く到着する。
「ノルン、ミルキーさん大丈夫か!怪我はないか」
「お父様!?私もタクトのお母さんも怪我はありません。でも、この中にタクトが!……変な大男に絡まれて」
「何だと!?」
急いでタクトくんを助けに行かねば!まずはこの壁を破壊する。
私は剣を引き抜き土壁に向かって剣を構えた瞬間、突如壁が徐々に下がって来た。
警戒しつつ土壁が下がるのを見ていると、こちらに歩いて来る二人が見えた。
「タクトくん!?」
そのうちの一人はタクトくん、大きな怪我もしていないようでホッとする。彼にはノルンと共に、この町を支えてもらいたい重要な人物、それに彼に何かあればミルキーさんが怖い。
私は心の底から安堵したが、気を緩めるわけにはいかない。なぜならタクトくんの隣を歩いているのは件の人物、警戒を高めるも見る限り緊迫した雰囲気はない。何があったのだ?
「タクトー大丈夫なの?すごい音がしてたけど」
娘のノルンが恐る恐るタクトくんに声をかける。
「うん!大丈夫だよ〜ホラこの通り!」
タクトくんは両手を上げ、どこも怪我をしていないアピールをしている。そこにミルキーさんが何の躊躇もなくタクトくんに近づき抱き締める。
「よ〜しよし、よく頑張ったね〜タクト」
「でへ!どうもどうも」
抱きしめ優しくタクトくんの頭を撫でるミルキーさん、相変わらずの溺愛っぷりだな。ちょっとタクトくんの反応がいつもと違う気がするが気のせいだろう。
さて、あの大男で間違いないな!あの顔、前にセドリック領主催のパーティーで見ている。確かポール子爵の息子、名はジェット
「君、すまないが話を聞きたい。こちらに来てもらえるか」
相手は私より格上貴族の息子、失礼があっては後で問題になる。しかし抵抗するようであれば、住民を守るため、容赦をするつもりはない!
大男はこちらをギロリと見て、顔を赤くしてこちらにやって来る。
何か異様なオーラを出し、私の前で止まる。2メートル以上の身長に強面の顔が見下ろしてくる。これはなかなかの威圧感だ。
「君はドラゴンバスターのジェット殿で相違ないか!」
大男は少し身体を拗らせ、
「え〜超イケオジじゃな〜い!ナンパ!ナンパなの〜私の名前まで知ってるなんて、ワタシの超ファンじゃな〜い!いや〜ん!テンアゲ〜、でもねワタシファンには手を出さないことにしてるの……なんちゃって〜、それでなんだっけ?あーそうだそうだ、ワタシがドラゴンバスターだっけ?そうよ〜ワタシがドラゴンバスターのジェットよ!」
ものすごい早口でハイテンションに喋る。
いけない。想定外な反応でかつ、若干オネェが入っていて反応に困る。
とにかくだ!ここは一度心を落ち着かせ、話を聞かなければ。
「オホン……まずは私の名を名乗っておこう。私はバロン、この町を治めている者だ!そこで君に聞きたい。先程この先にある飲食店で暴れたのは君かね。正直に話してほしい」
ジェットの顔つきが一気に険しいものへと変わる。
「申し訳ありませんでした!ワタシはなんて酷い行いをしてしまったの!謝っても許してはくれないと思うけど本当に申し訳ありませんでした~ウォ〜ンウォ〜ン」
ジェットは頭を地面に叩きつけて謝罪を述べる。その後は野太い声でギャン泣き。もう何が何だか分からず、横を見るとタクトくんが苦笑い。これは彼に話を聞いた方が良いかもしれないな。
「タクトくん、ちょっといいかな」
彼は苦笑いしながらこちらに走って来た。