第336話 逢魔の扉
「宝物庫に納められた宝具、国王様は何か心当たり御座いますでしょうか?」
父さんの質問に国王様は黙り考えている。かなり険しい顔をしながら口を開く。
「宝物庫には多くの装飾品、宝石そして様々な武具が納められておる。そのどれもが強い魔力を帯びた宝と言われる逸品なのだが、恐らくボルジアの目的は別であろう。………宝物庫には少し変わった場所がある」
国王は一度間を置き息を吐いてから喋り出す。
「逢魔の扉………王族である我らが守り通して来た特別な場所に繋がる扉、私も入ったこと……いや開けたことがないというべきか、逢魔の扉、この扉は絶対に開けてはならないと代々伝えられておる」
「それではボルジア公爵の狙いはその部屋にある何かと思われるのですね」
父さんは国王に尋ねる。
「それは分からない。だか伝承によれば大いなる力目覚めし時、偉大なる王達を超え、すべてを統べる者となるであろう。ボルジアはその力を手に入れ、この国を……いやそれどころか他国まで侵略するつもりやも知れん」
「それでは急ぐ必要があります。早急に王都奪還の作戦立てます」
バロンさんは即座に反応し対応の準備を始めようとしたが、なぜか国王様はそれを止めた。
「うむ!それは助かる。しかし待たれよ。まだ話には続きがある。ボルジアはこの部屋に入ることは出来ない」
「それは……なぜです?何か特別な鍵をかけられていると言うことでしょうか?」
「うむ!その通りだ。鍵は二つ。一つは血、逢魔の扉は王族に連なる者に反応しする」
「そうですか、ですがそれなら国王様、あなたの弟君であるボルジア公爵には開けられてしまいます」
「そう、ボルジアもそれを知っている。それしか知らないとも言えるがな。さっきも言ったが鍵は二つ、逢魔の扉を開くには代々血族の長となる者が秘密裏に引き継がれてきた太陽の指輪を着けて開けねば開かん」
「なるほど、ボルジア公爵はそれを持ってはいない。そしてそれを持っているのは国王様と言うわけですね」
「その通りだ。息子のエリックにそろそろ渡そうかと考えていたが、もしもこのことを知られていたと考えれば私が持っていて良かったわ」
国王様は左手を握り右手の指で左手の指をランダムに押していくとまるでキーコードを打ち込んだ時のような高い音が鳴る。すると薄っすらと薬指に何かが見えてくる。そしてそれは指輪になる。
「これが太陽の指輪だ。今までは別の次元に隠していた。他の者ではまず見つけることは叶うまい」
へぇーーあれは見つからない。そこにあるけどそこにない。普通の人には見ることも触ることも出来ない。あれは俺の道具と同じ空間属性の力だと思うけど、きっとあれをなんとか出来るのは俺と同じ力を持つ者だけだろう。だからまず取れる者は居ない。
ん?……ちょっと待てよ!
俺はふと思った。
「あの〜国王様、と言うことはボルジア公爵はその部屋に入れて居ないのでは」
「フゥ…ふむ……」
国王は太陽の指輪見て何かを思う。
「この指輪は偽物ではない。この指輪がここにあるのだ。ボルジアは入ることが出来なかったであろう。恐らくは何かが足りないことには気がついておるだろう。今頃血眼になって私を探しているであろう」
良し!これはチャンスだ!厄介ごとをこれ以上増やすつもりはない。早いこと片付けることにしますか。
「バロンさん、今すぐにでも城に攻め込みたい!」
「タクトくん無茶を言うようになったね。でも少し待ってくれ今日中には計画を立てよう」
流石はパロンさん、俺はすぐ行きたいなんて無茶苦茶なことを言ってしまったけど、一国の城に攻め入るのだ。たかだか一日でそれをやってくれるなんて優秀な人は違う。それなら俺は今のうちに道具の手入れでもしておくかな。
俺は話し合いが終わったと思い別のことを考え始めていたが、バロンさんは話を続けた。
「計画を立てる前に不安…いえ不確定要素が御座います。反乱の首謀者と言われていたバラク、それに未だ理由が分かりませんが、彼に従っているエリック王子とラウラ王女の動向が見えません。最悪戦闘になる恐れがあります」
バロンさんの言う通り、しまったな〜。あの二人が居た。バラクに関しては特に問題はないが王子と王女に怪我なんかさせた日には首が飛びかねない。あ!いや……でもあれだな。俺達二人と戦ってたわ!……あれはノーカンってことにしておこう。詳しくは話していないから大丈夫大丈夫。
「バロンよ。二人のことは気にしなくてよい。息子達は自らの意思で動いておる。行動には責任を伴うものだ。ならば私は信じてやりたいと思う」
国王様ともなるとやっぱりひと味もふた味も違うわ。威厳もあって覚悟が出来ておられる。ああ言う大人になりたかった。………いや、今は子供だったか。
「分かりました。エリック様達がどのような行動に出るか分からない状況ではありますが、私も彼らとは面識が御座います。説得をしてみましよう」
「うむ。バロンよ!助かる」
あ〜良かった!出来ればあの二人とは戦いたくはなかったからな。さーーて気合入れて行くぞー!
俺は心の中で気合いを入れていると、後ろから声をかけられた。
「タクトちょっと良いかな?」
「あれ?ルナ久し振り、どうかしたのか?」
ルナはなぜか少し浮かない顔をしている。
「ちょっと来てほしいんだけど、いいかな……」
「う、う〜ん……いいけど……」
ルナの雰囲気から不安になったが、特に断る理由がなかったので俺はルナに連れられて行くことにした。
着いた場所はとある住宅街だった。