第331話 落ちるアンデラ⑤
「アンデラさん最後にもう一度聞くけど、教えてくんな~い!」
俺はニッコリと愛想良く笑う。
「………気に入りませんね!その顔、君は私を喋らせる方法があるように思えます。先程あなたには無駄だと言いましたが、どうにも気味が悪い」
「ん!そう見えますか?でも気にしなくて良いですよ!どうせあなたには何を言っても聞いてくれなさそうですし、説得は諦めました。ただま〜ボクとしてはあなたを地獄に落ちるほど苦しんでもらおうかと思ってましたけど、………それより面白い方が良い気がしてきたのであなたはそのままでイイデ〜ス!」
俺は継続してニッコリと愛想良く笑う。
「その顔……不快です。やめなさい!」
アンデラはすこぶる嫌な顔をしている。
「いや〜その顔が見れたのは良かったかな!それじゃアンデラさようなら」
ライトのスイッチを光と善に切り替えて照射!
『スイッチON』
眩しい光がアンデラを照らす。アンデラはしばらく不思議そうにライトの光を見ていた。俺にはかなり眩しそうなのにアンデラを見続ける。無言のまま数分後……アンデラの様子に変化が、表情が穏やかになって来る。効果が出始めて来たようだ。でもジェーさんとはなんか違う?これって上手く言ってるんだよな………
「…………長い」
それからさらに数分が経ち、今だにアンデラは何も言わない。ジェーさんの時なんて1分もかからず変化が見えたのに、この人の場合頑固そうだからな、中々効かないのかな〜。
「………しつこいな……」
まだかよ!もうかれこれ15分照らしてるのに!アンデラの悪意をなくして話を聞き出そうと思っていたのに穏やかな顔になった以外何の変化もない。いい加減効いているのか不安になる。そろそろこっちから話しかけてみるか。
「あの〜アンデラさん、体調はどうですか?」
アンデラはゆっくりとこちらを向き、少し俺を見て固まり、表情がだんだん変わってくる。
「新たなステージに立ったオレ! 気分は最高潮のオレ!生まれ変わったようなオレ! 調子はいつもの倍倍倍倍、十六倍だぜ!Oh yeah!!」
略:私はとても調子が良いです。生まれ変わったようだ。
「…………はい?な…ナンテ?」
「お前の心に届くぜ、間違いなし。聞こえないなら、もっと叫ぶぜ、俺の声は止まらない、まるで嵐で。
若いだけじゃダメ、心を開け!」
略:若いのに耳が悪くて私の声が聞こえないのですか?
「ちょっとストップでお願いします。カンナ〜カンナさんヘルプ〜」
「なんやー!困った時のカンナちゃんやでぇ〜」
空間を裂いてカンナが飛び出て来た。
「カンナ、ちょっと聞きたいことがあってさ!」
「………………フン」
カンナは横を向く。
あれ?なんかご機嫌ナナメかな。
「んーー、どうした?」
「タクトは困った時しかウチのこと呼ばへんの?ウチド◯えもんとちゃうんやでぇ!」
「ん?どうした。もしかしてあんまり呼ばなかったからへそ曲げてるのか?」
「ふ〜ん!ええんや!どうせウチなんてただの道具やもんな。ふ〜ん!ふ〜ん」
俺の一言で更に捻くれたカンナは後ろを向いて、もういいと言わんばかりに背中を見せる。まったく面倒なヤツだな〜。言わなくても分かっていてくれそうなもんだけど、言葉にしないと伝わらないのかね〜。
俺はポンッとカンナの肩に手を置く。
もちろんカンナは気がつくがこちらを見ようとはしない。無視をするつもりだな。一応カンナは俺のスキルらしいけど、感情が豊か過ぎて全然そうは思えないわ。
「カンナ、そんな寂しいこと言うなよ。ボクは何度か言ったはずだぞ。カンナはボクの相棒で大切な道具さ」
ん!…言ってから思ったけど最後の一言は余分だった気が…
「タクト〜……」
カンナはうるうると目をさせていた。
これは……嬉しい?悲しい?どっち?
「ウチ……大切な道具やんな!ウチ嬉しい!」
う…う〜ん、道具ってところを気にしていたんじゃなくって、ただの道具って言うところを気にしていたのか、大切にしますんでカンナ宜しく〜
「よし!元気が出てきたところで、アレについて教えてくれ!」
なんか言いながらオーバーリアクションで騒いでいるアンデラ、悪意、敵意、など特には感じないので大丈夫ではありそうだけど、豹変し過ぎて周りのみんなが驚き、さっきまでの警戒とは違う意味で距離をとっている。どう取り扱って良いか分からん!
「あれはライトをつこたん?」
「あぁそうなんだけど、またオカマ風に仕上がると思ってたんだけど……やってみてからの驚きの仕上がり」
カンナは「う〜んう〜ん」唸りながら考える。
「タクト、もしかして長く光を照射したんちゃう?」
「あっあ〜確かに、今までて最長の15分くらい当てたかな。なかなか反応がなくてさ〜」
「あー、前ゆうたやん!取り扱い注意って、これは明らかに当て過ぎやん、たぶん興奮状態にもなっとるでぇ」
アチャーやり過ぎたか!ちょっと心配だったんだよな。
「反応がなかったってゆうたけど、効果がなかったちゃうんや。こいつめっちゃ精神力が強うて頑固者じゃないん?ライトの効果に耐えられてまう。せやけど長く当ててたからどっかで負けていってもうたんやな。ちょい暴走気味」
う〜ん、どうしようか、俺はラップで「よぉ!よぉ!俺よ!アンデラでよぉ〜」……と歌っているアンデラの姿を見て、コイツはコイツで面倒くさそうと肩を落として落ち込む。