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第329話 落ちるアンデラ③


◆アンデラの視点


 男は無謀なことに一直線に突っ込んで来る。何かの作戦か?どう言うつもりかは分からないが好機には違いあるまい。


 私は床に手をつき命令する。


『床よ!歯向かう敵を射殺せ!』


 ん?なんだこの感覚は上手くスキルに魔力が伝わっていないような………私は違和感を感じながらも攻撃を続けた。


 しかし………「モコモコ」………うぇ?

 床が真っ平らから丸みのある凹凸の付いた床に変わるだけ、本来は床の形状が鋭いトゲに変わり敵を串刺しにするはずなのだが、何が起こったのだ!?



「お!どうしましたアンデラさん、目の前まで来ちゃいましたよ!何もしなくていいんですか!」


 男は殴りかかってくる。速くはあるが大したことはない。躱すことも受けることも出来る。しかし内心動揺しており頭が回っていなかった。拳が私の頬に当たり倒れてしまった。


「あれれ?想像以上に驚いているようですね。このくらいあなたなら余裕で躱せたでしょうに」

 

 男は拳を鳴らしながら、偉そうなことを……これ以上相手の思い通りにするのはいけません。私は心を静め冷静に対応することを意識した。


『溺れ死ね!溢れかえる水瓶』


 水瓶から大量の水が溢れあの男に纏わりつき溺れさせ殺す。………のはずなのだが、水瓶を見るとチロチロチロ〜っとちょっと水が溢れているだけ、そんなアホな!?


「どうしたんですか〜?、そこの水瓶溢れていますけど、掃除した方が良いんじゃないですか〜?」


 からかう様にその男は言う。お…お…落ち着け、何かの手違いだ。冷静に冷静になるのだ、正しく対応するには冷静にならねばならん。


 私は震える手を押さえ、呪文のように心の中で唱える。


 この状態が続くのは良くありません!一気にトドメを刺します。


「我が屋敷に住まう者に死の鉄槌を『レジデンスウェポン』」


 この術はこの屋敷にあるすべての武器で屋敷にいる者が死ぬまで攻撃し続ける。力も技術も速さもそして戦略もすべて無にする。私の奥の手。相手は必ず死ぬ!


 ……………ん?

 ………………はぁ?

 …………………おえ?

 ………………………ゴホン、すまない話がある。



「いや、聞くわけないでしょう!」


 その時タクトは思った。

(どうやら驚き過ぎて一周回って冷静になっちゃったか残念、あんたのアホ面をもっと見てやりたかったのにな!)



 フッ、認めたくないないが現状を把握しクールにそしてクレーバーに行動しなければならない。


 スキルが使えないが、身体に何か影響があるわけではない。逃走する手段はいくらでもある。まずはシンプルに煙幕を使い離れるか。


 私は袖から煙玉を出そうとしたが腕を掴まれた。


「ん?……な!?ブラック……なぜお前がここに!」

 

「アンデラさん、どうも」


 ブラックはヘルホールに落としたはず、それなのにここに居ると言うことは、私のスキルが機能していない!?


「はぁーやっと出れたわ」

「わーい!出れたなの〜」

「タクちゃん!タクちゃんはどこ?」


 なんと言うことだ。全員生きて出て来た………

 私は呆然とヘルホールに落とした者達を見る。


「アンデラさん、息子のタクトはすごいでしょう。自慢の息子なんですよ。それで相談なんですが、これ以上戦うのはやめませんか?息子に手をあげれば、私も許さないですし、妻が大暴れしますよ」


「くっ……ハッハッハ、はぁ〜降参です。どうやっても私には勝ち目がありません」


 これだけの者達を相手に、それにスキルが使えない以上諦めるしかありません。ですが常闇の者として情報を渡すわけには行きません。死して国の糧となりましょう。さらばです。



「アンデラさん一応言っておきますけど、死なせませんよ」


 身体が動かせない。手足が風で拘束されている。これは動けば手足が落ちるな。だが元常闇の者であるブラックなら分かっているだろ。


 私は手足を動かし切断する。傷口から大量の血が流れ、大きな血溜まりが出来る。だんだん意識が遠くなり目を瞑った。


 あー………これが死に近づくと言うこと、若い頃には任務でよくありましたが、ここ最近は危ういこともなくなりしばらく感じていませんでした。我ら常闇は常に死に近いところにいる。もしかしたら私は怠けていたのかもしれませんね。フフッ、しかし国を守るために尽くしました。あの世で少しは褒めて頂かないといけませんね。…………おい!そろそろ良いんじゃないか?死ぬ時には走馬灯が流れるとか言うが長過ぎる。感情的になり過ぎて少し恥ずかしくなって来たわ。


 

 俺はゆっくりと目を開ける。


 身体は動かない。しかしおかしい……錯覚か?手に足どちらも感覚がある。無理やり首を上げ見るとそこには切り落とした手足が付いていた。


「そんなバカな!?まさか部位欠損を治したのか?」

 そんなことは大司教クラスの聖職者にしか出来ないはず、もしや大魔導師キョウカが治したのか?



「目が覚めたみたいですね。アンデラさん」


「ブラックこれは一体……」


「アンデラさん、簡単には死なせませんよ。さっき言ったでしょ、自慢の息子だって……」


「………!?治したのはタクトくんなのか?」


「そうですよ。全然痛くないでしょ、でも残念ながら流れた血は戻らないそうです」


「フッ、初めから分かってやったな。血を流し過ぎて身体がまともに動かせん。これでは自殺も出来ないな」


「そうですね。常闇と言う組織は国のために死ぬことを信条としていますのでね。あなたならしっかりと実行すると信じていました。止めるのに骨が折れそうだったので楽な方法を選びました。教えてくれますか?あなたがなぜ現国王のハドリアヌスを裏切ったのか?そしてあなたが言う王とは誰です?」


 フッ…当然の疑問だ。ブラック確かに私も随分と思い切った判断をしたものだと思ってはいるよ。しかし今でもその判断は間違っていないと私は信じている。きっと分かっては貰えないと思うがね。


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