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第321話 なんも言えねぇ〜


「ここを通るのは無理よ!考えるだけ無駄だわ。他の方法を考えましょう」


 ここを脱出するために最上階をどうやって通るかを話し合っていたのだが、キョウカがそれをバッサリと否定する。


「キョウカ気持ちは分かるけど出口はここにしかないんだぞ。どうにかするしかないだろう」

 

「そのどうにかを何とかしなさいよ!出来るもんならね!さっきから何度も言ってるけど、この時魔法は突破出来ないわ!この魔法は本当に恐ろしいの、どんな力もすぐに劣化させ力を失わせる。仮に私の上級魔法を放っても、奥にある扉の遥か手前で消滅するわ。何も出来ないのよ。私達には………」


 キョウカは大魔導師であるがゆえに、この時魔法を誰よりも感じ取っている。だからか喋りながら徐々に声の勢いが弱くなっていった。キョウカの心は折れかかっているのかもしれない。


 これは……良くないな〜。このままだと、みんなもキョウカみたいに諦めようとしてしまうかもしれない。それはダメだ!どんなものでも良い希望がないと、ここは嘘でも良いから元気づけないと!



「キョウカ諦めるのはまだ早い、確かに時魔法はすごい魔法なのかもしれない!だけどボクのスキル、『ツールボックス』に不可能はない。さっき良い方法を思いついたんだ!」


 俺はみんなを元気づけるために、敢えて高らかと自信満々に言って見せた。


「わーい!タクトはすごいなの〜」

「流石はタクちゃんね!カッコイイ!!!」


 アイリスと母さんがいい感じに褒めて盛り上げてくれた。ま〜それほどでもないけど、って言うか嘘なんだけどね!てへぇ!



 俺が少々調子に乗って喋っていると、キョウカが気に入らないとばかりに俺の前に腕を組んで立ち塞がる。


「ふーん……それで、どうやってここを通るのかしら」


 うっ……いかん。当然聞いてくるよな。さてどうする。いったん嘘でもいいから時間を稼ぐために通る方法を言わないといけないけど、あまりにも説得力のないことを言ってもすぐに突っ込まれるだけだから納得させるいい方法……なんかないか?

 


「オホン!ま〜焦りなさんな。キョウカくん」

「焦れったいこと言ってないで早くしなさいよ!私待つの嫌いなの!わかる?」

「はい……さ〜せん」


 どうやらキョウカに誤魔化しは通用しない。今すぐ、速攻で!なんか考えないと〜。と俺は頭を悩ませていた。


「ふう〜…仕方がないな〜!教えてやろうではないか、(どうしよう!もう言うしかない!あ〜なんとでもなれ!)俺のツールボックスにあるドリルを使うんだ!コイツには空間を破壊し穴を開けることが出来る。そうすれば空間ごと時魔法を消し去ることが出来る」


 …………………俺が言い切ったところで沈黙が流れる。 

 …………………ダメ?それともOKどっち?


「なるほど、確かにその方法はありかもしれないわ」


 シャーー!上手く誤魔化してやったぜー!

 思いつきで適当に言ったのにキョウカにかなりしっくりと伝わったようだ。逆になぜ?


「あなたのツールボックスの中にある道具で時空間に干渉する物があったわよね。あなたのスキルには時魔法と同質の力が秘められているかも………それなら時魔法の相殺は可能かもしれないわ。流石じゃない!やるわね!タクト」


「あ……どうも……(なんも言えねぇ〜)」


 キョウカさんそこまで考えていません。むしろ色々と解説して頂きありがとうございます。聞いてる私の方が納得で〜す!


「それじゃ〜早速やるの?」

 

「え!?いや、焦ったらダメだ!これだけ強力な魔法を相手にするとなるとドリルを使うにも準備がいるんだ。ちょっと待ってほしい」

 俺はワチャワチャと同様丸出しで答える。


「へぇ〜そうなの、分かったわ。準備が出来たら宜しくね」

 キョウカは意外にも俺の動揺した姿を全く気にせず

あっさりと引いてくれた。キョウカは一度納得すると疑わないタイプなのかもしれない。



…………▽


 はぁ〜何とか逃げ切った。なんか目的が変わっている気もするけどひと息はつける。それにしても自分で言っておいてなんだけど、本当にドリルで行けるんじゃないか?試してみようかな。でもな〜失敗したらいきなりおじいさんだからな〜リスクが高すぎるか、やっぱやめておくか。



「ん!?なんだこの揺れ」

 一息ついていたところで突然地面が揺れる。震度2くらいのそれほど強くない揺れだった。


「しまった。そろそろ時間だったか」

 父さんがボソッと呟いた次の瞬間、ガコンっと何かが外れる音と共に身体に浮遊感を感じた。転けそうになったけど、なんとか踏ん張り耐え見渡す。周りは特に変化はなし、みんなも大丈夫そうだ。今のは一体なんなんだ?


「タクト心配しなくていい、一つ落ちただけだから」

 父さんは今の現象を知っているようで、慌てていない。取り敢えず危険はないみたいだけど、かなり気になる。


「父さん今のは何なの?」


「タクトはアンデラさんから聞かなかったようだね。

あの人にしては珍しいな〜、いつも時間稼ぎに使うのに、ふふっ…よっぽど焦っていたんだろうな」


「父さん焦らさないで教えてよ〜」


「あ〜分かった分かった。慌てるな。タクト今説明するからな。この場所はアンデラさんのスキルによって作られた異空間、出口はただ一つ、最上階に設置された扉のみ、各階層の罠や魔物を突破し到達しなければならない」


「でも行ってみて分かったけど、最上階には時魔法の力によって守られていて、扉に到達するのは実質不可能と言ってもいい、正直嫌になる状況」


「その通り、最上階に限らず上がることを諦めた者を確実に跡形もなく消すため、この最下層には地獄に繋がるゲートが存在する。さっきの揺れは諦めた者を最下層に連れて行くためのシステム、私達もまた地獄へと近づいたわけだ」


 そうか、さっきまで居たのは最上階の手前の階段だったけど、今は九階層の手前の階段になっちゃったわけか、不思議な現象だけど、スキルや魔法がある世界だ!物理的な考えは不要か。


「父さんありがとう。理解出来たよ。それじゃ〜また登らないといけないのか。面倒だけどみんな行こ〜」


 俺は仕方なく最上階に行くために足を踏み出した。

上手くいくかは分からないけど、脱出するにはこれしか思いつかない。一か八かドリルを使う!俺は覚悟を決める。


「な〜タクト、ヒト族があれを突破するのは難しいから下から行かないか?」

 ニキが俺の前に出て不思議なことを言う。


「ニキ何言ってるんだよ!出口は上なんだから、下に行ってどうするんだよ。下に行ったら地獄、あの世なんだから死んじゃ………あれ?(そう言えば……)」


「タクトは許可されてるから入っても大丈夫なのだ!」


 そうだった!?完全に忘れてた。大丈夫かは分からないけど、俺には死なずに戻れる方法があった!


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