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第320話 最上階を通るには……


「タクト階段を登り切るなよ」

 アンディーは真剣な顔をしていた。と言うことはその言葉には意味がある。


「アンディー視えるのか?何色なんだ?」

「手前から徐々に赤みがかっている。奥は真っ赤を通り越して赤黒視える。間違いなく死ねるね」

「そうか……それは相当ヤバそうだな」

「もちろん、私でも楽しめない脅威だよ」


 俺はアンディに言われた通り、最上階には上がらず階段からその階の様子を見る。その階には何もなくただただだだっ広いだけ、でもその奥には扉が見えた。恐らくあそこがヘルホールから脱出口、ザックリだけど100m先ってところか。



「ん〜……アンデラさんが何もしないとは思えない。それにこの部屋には不思議な気配が満ちている。なんだろう?」


 父さんは俺の横に立ちアゴに手を立てて考えている。元常闇のメンバーである父さんでも分からないみたい。



「何しているの?早く行きましょう」

 キョウカが俺の真後ろまで来て、なぜ進まないのか聞いてくる。


「どうもこの階は入るだけでも危ないらしいんだ。それが何でかはサッパリなんだけど。あとそろそろアイリスを離してやれ」


「何を怖気づいているのよ!そんなんじゃ〜出られないでしょ。それにアイリスちゃんがかわいいんだから仕方ないじゃない」


 そう言いながらアイリスを降ろし、キョウカは魔眼を使い最上階を視る。


「これは……」

 キョウカは呟くように言って眉間にシワを寄せる。


「入らないで正解よ。たぶん扉に行く途中に死ぬわ」

 キョウカには分かったようだ。あんまりいい話は出なさそうだと俺は身構える。


「どうやったかは分からないけど、これは古代に失われたと言われるかなり希少な魔法、私も少しは使えるけど、これは別次元ね」


「キョウカ、それはどんな魔法だ?」


「う〜んそうね。言うのは簡単だけど、私も絶対の自信がないから確認も込めて試しましょう」


 キョウカはポケットから紙を出すと、それに魔法をかけて紙飛行機を折る。


「いーい、しっかりと見ているのよ!」

 スーッと紙飛行機は飛んでいく。

 何事もないように飛んでいた紙飛行機に異常が起きたのはすぐのことだった。

 

 飛んでいた飛行機は変色しながら奥に進む、突然紙が破れだし落下するも地面に着く前に塵と化す。


「キョウカ……実験は成功か?」

 明らかに入るのが危険なのは分かった。問題はどう解決するか、頼む!キョウカなんとかしてくれ!


「成功よ。最悪だけどね。これは時魔法、この先に進めば進むほど時間の流れが早くなっている。出口の扉

まで行く間に、ここにいるみんなはおじいさんとおばあさんになるわね」


「キョウカ、冗談を言う余裕があるってことは、何か解決する方法があるんだよね?」


 恐る恐る聞いてみる。なぜなら俺にはそんな強力な魔法を何とかする方法を持っていない!頼む!


「私が冗談を言うタイプに見える。はぁー冗談を言わないとやっていけない気分になるほど追い詰められているのよ!こんなに強力な時魔法を見たのは初めて、

対策としては自分の周りに時魔法の逆行する結界を張るか、時魔法を維持している核を破壊するかだけど、

時間を遡られる魔法なんて大魔導師である私でも出来ないわ!核についてもこの奥にあると思うから手の出しようがないの、完全に手詰まりよ!」


「そんなに怒っていうなよ。別に責めてないぞ!」

 キョウカは自分にも使えない魔法が使われていたからなのか、喋りながらだんだんイラつきだしており、このままだととばっちりが来そうだったので釘を刺しておく。


「フン!私だっていつかは使えるようになるんだから!あのアンデラって人には負けていないわよ」


 キョウカって負けず嫌いだったのか、気は強そうだけど意外だ。こちらの世界に来て魔術師としてのプライドが出来たのかもな。


「キョウカさん、気にしなくていいと思いますよ。アンデラさんは魔術師ではありません」

 そこに父さんが会話に入って来た。


「え!?ブラックさん違うんですか?ならこれは別の人が……」


「ん〜それはなんとも言えませんが、これはもしかしたら古代の遺産、神具と言われる道具を使ったのかもしれませんね」


 それを聞いたキョウカは納得したようで機嫌を直していた。それは良かったのだが問題はキョウカでもどうにもならない魔法がかけられた場所をどうやって通ればいい?


 頭を巡らせるも良い方法が思いつかない。

 この際配管で空間転移を………あ!?なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだ。俺はみんなに話をする。


「あんたバカ?」

「はい、すいません……」


 心底呆れた顔でキョウカに罵倒され、俺は反射的に謝る。


「そんなことここに閉じ込められた時にすぐに思いついたわよ!ただね〜ここは元の世界と断絶された異界なの、空間転移は出来るでしょうけど出られるか分からないし、運が悪ければ異空間の果ての果てに飛んでいくわよ。リスクが高過ぎるわ!」


「はい、すいません」

 ちゃんとした理由を聞くと余計に落ち込む。そうだよね〜そんな簡単なこと誰でも思いつくもんね〜。


 ガックリしていると背中がゾクッとして、目の前に居るキョウカの顔が強張っている。……ヤバい。


「キョウカ、あのさ……」

「ちょっと待って私に言わせて!さっきのは悪くない考えよ!考えてみれば、私が扱う空間転移とあなたの使う配管の空間転移は必ずしも同じではないわ。いえ!タクトはすごいからきっと空間転移で脱出出来るわよ!」

「えーーホント、そんなに褒めてくれると嬉しいな〜アハハハ……」


 背中に感じていた寒気が徐々に消えていく。キョウカ悪いけど、母さんの前で俺を罵倒するのは止めてね。


 この後、階段に座りみんなでこの場所を通る方法を

話し合ったが解決策はなかなか出なかった。

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