第318話 タクトメシなのだ!
「て言うことがあったのよ!あなたのことは知ってるから驚かないけど、最初に言っておいてほしかったわね!」
「あ〜ごめん、ボクも父さんがどのくらい強いかは知らないし、ニキに関しては説明したところで信じてくれない気がして……アハッ」
「ま〜良いわ!私が想像してた以上に頼りになるって考えれば好ましいことだし」
あ〜良かった。キョウカは一応納得してくれた。たぶんキョウカは納得がいかないことになるとトコトン責めるタイプだと思うんだよね。ぶっちゃけそう言うの面倒だから嫌いなんだよね〜。
ぶつぶつと頭の中で考えていると背中でゴソゴソと動きだす。お!お目覚めだな。
「アイリス起きたか?気分は悪くないか!」
「うっうにゅ〜……う〜なんかキモチワルイ」
ん〜やっぱそうか、アイリスは幻術魔法で混乱状態になっていた。それはある意味頭を弄られた様なもの、気分が悪くなってもおかしくはない。
「キョウカ、アイリスが調子悪そうなんだけどなんとかならなないかな?」
大魔導士様ならなんとかなるかな?と思い聞いてみる。
「治せるわよ。こっちに連れて来なさい」
キョウカはそんなの簡単よ!と言いたげに指示され、アイリスをキョウカの前に降ろす。
『リカバリー』
キョウカの手から光が放たれ、それがアイリスに吸い込まれるように入っていく。するとアイリスが淡く光だし少しすると徐々に光が消え、アイリスが目を開ける。
「うーー元気がでたなの〜〜!」
アイリスが復活した。早いな!
「キョウカお姉ちゃんありがとう!」
アイリスはニパーっと笑顔でお礼を言うと、キョウカから「うっ」と堪えるような声が漏れる。
「いいのよ。お姉ちゃんに任せなさい」
キョウカはガシッとアイリスを抱き締めた。アイリスは嫌がってはいなさそうだけど、不思議そうな顔をしている。それはなぜかと言うと、キョウカの目に涙が浮かんでいたからだ。たぶん妹さんのことを思い出したのだろう。アイリスは何かを感じたのか、キョウカの頭を撫でていた。
「うーん、ま〜良かったのかな。取り敢えずあの二人はそのままにしておいて、父さんこの後の予定はどうなってるの?」
確認しないといけないのは、ここからの脱出方法、
多分父さんは上から出るつもりのはず。
「あと一つだよ。この上に出口が必ずある。だからあと少しなんだが、過去にこのヘルホールから脱出出来た者はいないと聞いている。この上に何かが仕掛けられているのは確かだ。だからまずは食事にしよう」
「父さん案外余裕だね。でも僕達も急いで来たから、ちょっと疲れたかな。良いタイミングかもしれない。ここで一度休みを取ろう父さん」
シュパ!シュパパパ!
ジグザグと高速移動し空中で三十一回転半回り着地するワン公が一匹。
「タクトメシなのだ!」
キリッとした顔で何言ってるだお前。
「ニキ無駄にすごいところ見せ過ぎ、普通に食べたいと言え!食べたいと、ボクもお腹は空いているから食べたい物を言ってくれ」
「骨付きカレーが食いたいのだ!」
ニキはぴょんぴょんと飛び跳ねて嬉しそうに言う。
ニキは相変わらずカレーが好きだな。ま〜カレーなら作れるけど骨付きカレーか〜………それはなしだな。
「ニキ、それは今日は却下で!」
「えぇーーなんでなのだ!なんでなのだ!」
ワンワンと抗議するニキには悪いが、骨付きカレーはニキ専用に作ったカレーだ。ご飯の代わりに骨にカレーをかけて食べる。普通の人には美味しくないこと間違いなしだ。
「好きな物を聞いておいて悪いが我慢してくれ。また帰ったら作ってやる」
「うむ!なら良いのだ!それにタクトのご飯は何でも美味しかったのだ!」
「それはどうも、そう言ってくれたなら期待に応えないとな!いっちょ気合を入れますか」
さてと何にするか、ここは屋外だしそれに時間をかけ過ぎるのは良くない。あまり凝った物は作れないな。でも焼くだけとかは味気ないし………それならアレにするか。
「よし!お好み焼きにしよう!」
「わーいお好み焼き!………お好み焼き?なんなのだ?」
おバカさんキャラ出し過ぎだよ!ニキさん、かわいいから良いけど。
「ニキは知らないよな。ま〜楽しみにしていなさい。美味しいから」
俺はニキにニコッと笑顔で言う。
それじゃ〜まずは準備だ!材料は
・お好み焼き粉
・サラダ油
・キャベツ
・ネギ
・豚バラ肉
・卵1個
・だしの素
・天かすや紅生姜
・お好み焼きソース
まずはキャベツを千切りにしていくのだが、せっかくなのでこの世界の食べ物を使っていきたい。似たような野菜でマカサカと言う野菜がある。これを使おう。コイツは野菜のクセに甘いし赤いから彩りも鮮やかになりそうだ。
マカサカを切るのは母さんに任せたいけど、まだ立ち直っていないから、父さんにお願いして、俺は豚肉を軽く焼くか、豚肉も普通では面白くない。マッスル
ピークにするか、いや…待てよ。アイツは豚ではあるけど筋肉質過ぎて筋っぽかったけ、脂身は欲しいな。う〜ん……豚にこだわらず牛にしよ。バター牛にしよう。コイツは適度に霜がふってるし風味とコクがあるんだよね。
俺はバター牛を薄くスライスして5cmくらいにそろえるて、フライパンに油をひいて軽く焼く。
さて次は生地作り。ボウルにお好み焼きの粉と卵を入れて混ぜる。ちなみに卵もこちらの世界のホロホロ鶏の卵を使った。コイツの卵は濃厚で美味い!
だしの素を少量の水で溶き、先ほど混ぜたものに入れて混ぜる。滑らかになったら、キャベツや天かす等の具材を入れて混ぜる。これで生地は完成。
ここからが重要だ。焼き具合を見極めろ!フライパンに油を薄くぬり生地を流し込む。生地にプツプツと気泡ができたら、焼いておいた豚肉を乗せる。あとは手早く両面を焼き火が通ったら完成だ!
「わーい出来たのだ!」
ニキか飛び跳ねてやって来る。
「おとと、ちょっと待て!ニキ、ソース塗ってないから、あ!あとボクはマヨネーズも欲しいや〜」
俺は焼いた生地にソースを塗って皿に乗せてニキに出す。俺はマヨネーズを取り出すとみんなに料理が出来たこと伝える。………おっとニキの為にあとアレの準備もしておくか。
「タクト美味いのだ!もっとくれなのだ!」
ニキはワンワンとお好み焼きの催促してくる。どうやら気に入ってくれたようで、ま〜食いしん坊のニキなら間違いないと思っていたけど。
「おう!ちょっと待て!みんなの分も作ってる」
「そうなのか、すまないのだ。ガマンするのだ」
ニキはおすわりして待つ!ニキはここ最近待てが出来るようになった。
「それにニキには特別がある!」
「おー!俺だけ特別なのだ?」
「そうだ!特別だ!楽しみにするかいい」
「やったのだ!楽しみなのだ!」
ニキがニコニコしながらおすわりして待つこと十分、ニキのお好み焼きが出来た。
「よっしゃ!お好み焼きお待ち!」
「待ってたのだ!いっただき………ん?どの辺が特別なのだ?」
ニキは大きく口を開けたところで、疑問に思い動きを止める。ま〜思っているほど見た目は変わらないからな。
「ニキなら匂いで分かるだろ」
「のだ?………クンクン……!?のだ〜もしかして!」
ニキはお好み焼きにかぶりつき、「うまー」と言ってまたかぶりつく。
うんうんと俺は満足げに頷く。
カレー味のお好み焼きは大成功だな。
(ま〜カレー粉を入れただけなんだけどね!)