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第31話 狙われたお母さん


◆バロン男爵の視点


 ここは町にある飲食店。

 この町では数少ない大型店で多くの住民が利用する人気店なのだが………店内はテーブルや椅子が倒れ床には料理やお皿が散乱、酷い有り様だ。そして多くの人が壁にもたれかかったり床に倒れ怪我をしていた。


 なんてことをするんだ。あの男、絶対に許さんぞ!

 私は内心怒り心頭であったが今は住民の助けることが優先、医者と住民の応急手当てを兵士達に指示する。


「すまない、大変なところ申し訳ないが、ここで起きたことが分かる者はいるか」

 周りの者に声をかけると、一人の青年の男が足を引きずりながらこちらに歩いて来る。


「大丈夫か?君」

「バロン様、聞いてくれ、このままだとこの町が大変なことになる」

 私は青年を心配してかけるが、青年は怪我など気にもせず、必死に私に何かを訴えようとしがみつく。


 青年の話によると、店に人の大きさ並みの大剣を背負った大柄な男が入り酒を注文した。男はしばらく酒を飲んだあとに、近くの客と揉め始め、一方的に暴力を振るう。そして青年と連れの女性は危険と感じ逃げようとしたところを男に捕まり、女性に乱暴を働いた。それを見た青年と周りの男達が激怒し乱闘になってしまった。実際は止めるどころか一方的なものとなり怪我人が続出、最後には「こんな胸の小さなブスなんか興味ねーよ!」と言って女性の顔面を殴り、去って行ったと言う。女性は鼻の骨を折る重傷、恐ろしく野蛮な男なのが伺える。そしてこれで確信に至った。間違いなく噂のドラゴンバスター、ここ最近、他の村や町で好き放題やっているとは聞いていたが、まさかここまでするとは……


「あの男……こんなブスじゃ萎える。もっといい女でも探すか、そう言って出て行きました。もしかしたら他でも………」


「こうしてはおれんな!これ以上被害が出る前にやつを止めるぞ!」

「………宜しいのですか?あの男は……」

「関係ない!ここは私が管理する町だ!断じて住民を危険にさらすようなヤツを野放しに出来るか!」

 私はとうとう我慢の限界に到達してしまった。警備隊長に声を荒げてしまう。

「すまんな。少々感情的になってしまった」

「いえ、気にしないで下さい。私もバロン様と同じ気持ちであります」

「そうか、そうだな。それではあの男の足取りを探せ、見つけたら必ず私を呼ぶのだ!ヤツは強い!私が相手をする」


………………▽


「あ〜いい女はいないか、中途半端にムラムラしちまったから、落ち着かね〜」


 男はイラついていた。

 貴族と言われる。特別な血筋に生まれ、そして冒険者の中ではAランクと言われる。滅多にいない上級冒険者まで上り詰めた。しかしそれでも男が欲するもの(女)は手に入らなかった。


 ここ最近では半分やけになり周辺で少々派手に遊んでいるが、そろそろ塩時かも知れん、あまりやり過ぎれば父上の耳に入ってしまう。それは今後のためにはあまり宜しくない。


「ま〜この辺でしばらく大人しくするか、しかし今日はその分だけ楽しんでおかないとな!」

 男はより邪悪な笑みをして獲物を探す。


「……………お!……あの女……美味そうだな〜…」

 あれは良いな〜服の上からでも分かるボリューム、形も良さそうだ!揉みほぐしがいがあるぜ!


 男は大股でその女に近づく、女は腕に籠を持ち夕飯の材料でも買っているのだろう。今も食材を見て迷っている。


「う〜〜ん……どうしましょ〜今日は野菜を煮込んだ具たくさんスープにしましようか、それとも焼き肉に野菜サラダ?………あ〜迷っちゃう!」


 女はなぜか悶えるように身体を動かし、妖艶な声を出している。店のオヤジも鼻の下を伸ばしていた。


 へっ、そいつは俺様の女だ!見てるんじゃねーよ!

 俺はオヤジに向かって殺気を飛ばすと、「ひぃ〜」と情けない声を出し尻もちをついて倒れた。



「よぉ!ちょっと話でもしないか」

 俺は後ろから女に声をかけた。


「……………」反応がない。

 ほぉー、俺様を無視するとはいい度胸だ!

 これは調教しがいがあるぜ!

 

 俺がニヤリと笑った。


「おい!無視してるんじゃね〜よ!」

 俺は女の肩に手を置き、こちらに向かせる。


 ほぉー、想像以上じゃね〜か!

 真正面から見た女は、やや幼い顔立ちだが、かなりの上玉、近くで見ると胸の形がたまらね〜ぜ。


「はい?……どうされました?」

 女はポカーンとした顔で、俺様を見てもビビっていない。大概は見た瞬間一歩引くのだが、中々の胆力、ますますこのあとが楽しみになった。


「俺様と遊ばないか、楽しませてやるから!」

 俺はやや威圧して、言うことを聞かせようとするが、「すいません!今夕食の献立を考えてて忙しいので遊べないんです」

 女はあっけらかんと簡単に俺の誘いを断りやがった。おかしな女だ。まさか俺の威圧に気がついていないのか?


「な〜あんた、拒否出来ると思ってるのか〜俺様が優しく言ってる間に言うことを聞いておいたほうが身のためだ。今なら優しく抱いてやるぜ!」

 ぐいっと女を抱き寄せ顔を近づける。女は理解したのか、「成る程」と一言、「すいませんが、私には愛する夫と息子がいますので、あなたとお付き合いすることはできません!」


 まさかこうもはっきりと断られるとは……驚きながらもこれはこれで楽しめば良いと思い、女に手を伸ばす。


「やめろ!お母さんに手を出すな!」

 そこに突然クソガキが乱入してきた。

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