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第308話 虫けらさん?


◆タクトの視点


「こんな所に隠れていたんだ。見えない建物なんて反則だよ」


 空中にそびえ立つ大きな屋敷、なんとも言えない異様な空気を感じさせる。これは結界のせいか、それとも中にいる何者かのせいか、ここに入るのが危険なのは間違いない。



「母さん、出来るだけボクから離れないでね!危なくなったらボクが助けるから」


「は〜い!タクちゃん守ってね!」


「うん……でも母さん、前から抱き着いたら何も見えないから、もう少し離れてねぇ〜」


 母さんは事あるごとに抱き着くから、いちいち離さないといけない。名残惜しくも思うが一応母親なので変なことはしない。




「よし!屋敷に突入だ!」


 俺は正面の扉に手をかけようとすると、母さんに腕を掴まれて止められた。


 

「母さん……どうしたの?」

 俺は首を傾げた。何か変なところでもあったか?


「大丈夫よ。タクちゃん変な虫がいたから潰しておこうと思って」


 虫?…蚊でも飛んでいるか?

 周りを見渡す。そんなのはいなかった。


 俺がよそ見をしている間に母さんが扉のノブを捻るとノブの形が手に変わり母さんの手を掴む。


「母さん危ない!?」


「ギョェーー!」


「はぁ?え!?」

 

 何が起こったのか分からない。突然叫び声が聞こえたと思ったら真っ黒な人形の何かが倒れて来る。母さんはそれをさっと避けて、それは顔面から倒れて痛そうだ。


「母さんこれって、もしかして」


「そうよ!ムシ…虫けらね」


 俺は倒れている虫けらさんを見る。まったく動く様子がない。放っておいても良さそうだ。


 その後屋敷の中へ入ると虫けらさんが大量発生した。俺には全く分からないが母さんの目は誤魔化せないようだ。俺が壁にもたれようとした時、休憩しようと椅子に座ろうとした時、そしてトイレで用を足しに

行った時、コイツらはどこにでも湧き出る。母さんが言う虫けらと言う言葉案外あっている気がする。



 それにしても母さんはすごいな〜。どうやって見つけているんだろう?聞いてみようかな。


「母さん、虫けらさんをどうやって見つけているの?」


「え!……う〜ん、どうやって、そうね〜勘かしら……」

 あれ?教えてくれないの。


「母さんもしかして焦らしている?」


「ええっ!?そんなことないわよ」

 

 どうしたんだろう。母さんが挙動不審だ。何か理由があるのかな〜?


「はい!は〜い!ぼくわかるよ」

 パタパタと翼をはためかして、俺の頭の上にエメリアが着地する。


「ん?エメリアは分かるのか?」


「えっとえっとね〜変なにおいがするの、だから居るのがわかるよ」


 匂い?なるほど、それなら分かりそうだ。だけど俺にはさっぱり分からなかった。エメリアはかなり鼻が利くのが今回のことで分かったな。それにしても母さんも教えてくれれば良いのに、それとも母さんは別の方法で分かったのか?。


 母さんを見ると口を閉ざした状態で喋ろうとする気配はない。日頃饒舌な母さんがこれなら喋りたくない何かがあるのかも知れない。これ以上は聞かないでおこう。



……………▽


◆ミルキーの視点


 危なかった。タクちゃんに嫌われるところだった。


 エメリアのお陰で話が私からそれたみたい。でもエメリア!それ以上は言ってはダメ!あなたが言っている変な匂いは血の匂いでしょ!タクちゃんに変なイメージがつくからやめなさい!殺すわよ!


 私も匂いで見つけられたけど、今回私はより確実に相手を見つけることが出来た。



『ペインサーチ』


 私のユニークスキル『ペイン』の能力の一つ、相手の身体にある痛みを感知出来る。その辺の一般人ではあまり怪我をする機会は少ないでしょうけど、冒険者、特に戦士ともなれば怪我は日常茶飯事である。虫けらのコイツらは恐らく暗殺者、危険度の高い仕事をしているだけに怪我をしていない時はほぼない。だから扉に擬態してこちらを伺っていた者がすぐに見つけられた。


 それにしてもさっきからタクちゃんばかり狙って………イラつくわ。全員発狂させて上げようかしら。


 またあんな所に……

 壁に張り付く虫けらが三匹、こちらを覗くように見ている。まったく台所で出るGのようなヤツら、早くはたき落としたい。

 でも出来るだけタクちゃんに私が戦う姿は見せたくない。だって怖がられて嫌われたくないもの、もしも嫌われたら私死んじゃう〜。


 私は気づかれないように暗殺(未)を実行する。


 

「タクちゃんあんな所に綺麗な石があるわよ」

 

「え!どこ?」


 ほんの一瞬で良い。タクちゃんの視線を壁からズラす。私は傍にある石ころを蹴り壁に張り付く虫けらにぶつける。


『エンチャント…ペイン』


 物体に痛みを付与して、それを当てることで相手に激痛を与える。痛みの度合いは魔力と私自身が蓄えている痛みによって威力がます。


「はわ!?」

「いで!?」

「ほげ!?」


 ドサッ……三匹の虫けらが壁から落ちた。

 タクちゃんはそれに気づきビクッと驚いている。カワイイ!

 

 上手く私がやったのは誤魔化せたわね。

 この感じだと虫けらはたくさんいそうだけどタクちゃんには指一本触れさせないわ!

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