第307話 びっくり何連発!?
俺と母さんは王都に舞い戻って来たわけだが……
「分かってたけど……父さんどこだろう……」
俺達は手掛かりもなく、ウロウロと町の中を探し回るしかなかった。
「はぁ〜、このままだと埒が明かない。何か良い方法はないのかな〜」
「ねータクちゃん、あそこの店とっても美味しそうよ!見に行きましょ!」
か…母さん、遊びに来たんじゃないよ。ガクッ。
王都なんか都会に来てしまったからか、いつになく母さんのテンションが高い。
今も俺と腕を組みルンルン気分で軽くスキップをする。跳ねるたびにポヨンポヨンと肘に当たる物が俺の思考を鈍られす。母さんマジやめて!そしてありがとう。
「母さん、父さんを見つける方法何かないかな?」
考えなしで申し訳ないと思いつつ聞いてみた。
「ごめんなさいタクちゃん。私は人を探すスキルを持っていないの。だからちょっと難しいわね〜」
申し訳なさそうにする母さん、別に母さんが悪い訳では無い。だから優しく返事をする。
「そうだよね……どうしょうか…ヘブッ!?」
喋っている途中で顎を突き上げるような衝撃、一体何度目になるのか。
「いてて!エメリアダメじゃないか、いきなり飛び出すとぶつかるっていつも言っているだろ〜」
エメリア、俺の中では手乗りドラゴンと可愛がっている小さなドラゴン、日頃から俺の胸ポケットに入っているのだけど、ご飯の時間になるとよく飛び出して来る。前を見ていないのか?それとも本能で動いているのか分からないが、その度に強烈な突き上げを喰らっている。首が折れると何度思ったか分からない。注意はしているが言うことを聞いてくれない。ま〜赤ちゃんドラゴンなので仕方ないけど。
パタパタと翼を動かし俺の顔の前を飛ぶエメリア。
こう言う時は顔にへばりつこうとしている。エメリアは小さいが鋭い爪を持っている。顔を酷いことになる前に止めないと。
「エメリアここに来なさい!」
俺は右手の平を上にすると、スーッと移動しエメリアは着地する。
「はい!良く出来ました。ヨシヨシ」
俺はエメリアを人差し指で撫でると、目を細めて気持ち良さそうな表情をする。
「エメリアどうした?まだご飯の時間じゃないぞ!」
「ぼく、タクトのオトウサンのトコロわかるよ!」
「そうか、それは偉いな〜じゃ教えて貰おうかな………ん?………え!?」
おかしいことが起こった。
人は驚き過ぎると思考が停止…固まる。
「エメリアお前、いま喋ったか?」
顔を引くつらせて話す。
「うん!しゃべったよ。タクトおしゃべりしよ〜」
ニッコリと笑顔に変わる表情豊かなドラゴン、しかも喋るってか!驚きだ。
「エメリア、喋れるようになったのか?」
「うん!エメリアおぼえた。ミンナのきいておぼえた!タクトえらい!」
「お…おう、偉いし驚いたぞ!エメリア」
「えへへ」
エメリアは褒められたのが嬉しくって翼を羽ばたかせ俺の周り飛び回る。
う〜ん、エメリアが喋ったことにはかなり驚かされたけど、今はそれよりも優先しないといけないことがある。
「エメリア、父さんのいる場所が分かるのか?」
「うん!わかるよ!オトウサンのニオイおぼえているよ!」
「ホントか!それなら父さんの居る場所を案内してくれるか!」
「うん!いいよ!タクトついてきて〜」
エメリアはパタパタと飛んで行く。
俺と母さんはそれを追いかけた。
…………▽
「ココだよ!」
エメリアは父さんが居る場所を案内してくれたっぽい。だけどここには何もない。ただの草原なんだけどどうしようかな。エメリアがせっかく教えてくれたのに間違っていたと知ったら悲しませてしまう。俺は間違っていたとしても頑張って教えてくれたエメリアを褒めてやりたい!
「タクト、どうしたの?早く入りましょ」
「えぇーー!?」
俺は目ん玉が飛び出るほど驚く!
母さんの頭だけが10メートルくらい上にに浮いている。何があった!?
「か…母さん大丈夫なの?」
状況はよく分からないけど、母さんはいつも通り笑顔で体調が悪そうには見えない。
「あ!そう言うことね。タクちゃんよく見て」
母さんは何かを思いつき頭を引くと母さんが完全にいなくなった!?少し間を置きひょっこりと母さんの頭だけ現れる。
「タクちゃんここには幻影の結界が張られているわ。だからタクちゃんからだと母さんの頭しか見えていないわね」
母さんはクスクスと楽しそうに笑う。
はぁ〜びっくりさせないでよ。母さんに何かあったのかと思ったよ。でも何もないようで良かった。それにどうやらエメリアは間違っていないようだな。
俺は空間障壁を足場にして母さんが居る場所に移動し結界内に入ると、見つけた!きっとここに父さん達が居る。
大きな屋敷が建っていた。