第30話 俺はMじゃね〜ノーマルだ!ブタ野郎!
事件はパトリアさんの自首により解決へと進んだ。パトリアさんを知る者は誰しもが驚き、そして信じることが出来なかったと聞く。
今もまだパトリアさんの取り調べは行われている。なぜなら現状証拠らしい証拠が見つかっておらず彼女の証言のみ、恐らく調査にはしばらく時間がかかると思われる。
「信じられないわ!犯人はきっと他にいるはずよ!さ〜探しに行くわよ〜」
「ノルン〜もう勘弁して〜ちょっとは休もうよ〜」
パトリアさんが自首をした日からノルンと俺は幻の真犯人を探している。
ノルンもまたパトリアさんが犯人ではないと思っている一人だから。
ま〜気持ちはよく分かる。ノルンもまた俺と一緒でパトリアさんにはお世話になっていた。信じられないのも無理はない。しかしながら、俺は真実を知っているゆえに、この調査がどれだけ無意味かを分かっている。いない犯人を探しても見つかるわけないじゃ〜ん!最初は少し付き合って探せば満足すると思ったが、もうかれこれ1週間、もうそろそろ諦めて欲しい。
………………▽
◆バロン男爵の視点
ここは町の警備塔の取調室
「この度は本当に申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げるパトリア
「あ〜君が言っていることが真実であれば、大変な事をしたことになる。それは君が一番よく分かっているようだね」
「バロン様、私がやったのです。悪魔の契約し、そしてワタシは…ワタシは…」
パトリアは涙を流し後悔に苛まれていた。
「もう良いよ!パトリアさん、君が嘘を言っているとは思ってはいないよ。とは言えそんな事をする人とも信じがたいがね。ま〜それについてはしっかりと調べるつもりだ。それでだ、私が君には聞きたいことは別にある。君はどこで悪魔と接触したのかね」
これこそが最も早く対処しなければならない事、恐らくそこには奴が、死の商人がいるはず。
私はその話を詳しく聞こうとした時、
バンっと突然ドアが開く。
「パロン様大変で御座います!緊急でお話したいことが」
慌てて入ってきたのは、この町の警備隊長。
「どうしたんだ、そんなに慌てて今大事な話をしているのだがな〜」
敢えて威圧的に返事をする。
本当はこんな言い方はしたくないが立場的に注意するべき事はしないといけない。
「はぁ!はい〜すいません、バロン様〜」
顔を真っ青にして頭を下げる警備隊長。
おっと、ちょっと効きすぎたかな。
「それで何のようですか?出来れば手短にお願いします」
「はい!『ドラゴンバスター』がこの町に来られております」
「なに!?」
私は驚き椅子を倒して立ち上がる。
なんでこう忙しい時に面倒事が増えるのだ!
私は警備隊長に案内するよう命令し、その男の下へと向かう。
………………▽
◆タクトの視点
俺はノルンと今日予定していた事件現場巡りを終えて魔導ショップに立ち寄っていた。
「ブヒ!ブヒ!ブッヒ〜」
「ブヒブヒ、ブヒブヒ煩いのよ!女王様とお呼び!」
「ブッヒ〜ン」
店に入ると半裸の男がボンテージ姿の女性に踏まれムチでしばかれている。
俺は一度見ているから耐性が出来てるけど、ノルンはそうはいかない。
顔をやや赤くして呆然と立ち尽くしている。
「あら?お客さん……」
ハイヒールをグリグリと男の腹に喰い込ませながら、こちらに気がついたようだ。
「どうも、お取り込み中なら帰りますね〜」
なんとも見てはいけない環境に早く出ていきたい。
「おう!坊主お金を取りに来たのか、準備は
出来てるぜ!来いよ!」
半裸でムチの跡だらけの亭主は普通に戻った。
「なに偉そうに言ってるのよ!えい!」
「ブヒー!?」
いや、やっぱりブタだった。
「あの〜それって楽しそうですね!」
え!?ノルンなに言ってるの!
ノルンはまだ顔を赤くして、ボンテージ姿の奥さんにわけの分からないことを言っている。どうした〜血迷ったかノルン〜
「あら〜これの良さが分かるの!あなた良いわね〜見どころあるわよ!特にその鋭い目、間違いなくSだわ!」
「S?……私はSなんですか?」
アカーン!ノルンに変なことを教えるな!変態夫婦、ここはノルンの教育に良くない!さっさとお金を貰って帰ろう。
「おじさん!お金早く頂戴!」
俺は少し早口で言う。
「ま〜待てって、そんな慌てることないだろ!」
おっさんは分かってない!こっちはノルンが変なことに目覚めないか不安なんだよ!だいたいお客の前だぞ!服を着てから言え!
「ほらよ!20万ウェンだ!」
「ありがとうおじさん」
「よ〜し、大金が入ったな!せっかくだから
なんか買ってけ坊主」
「えーでもこれは食費に当てる予定なんで……」
とは言え、実はこの店の商品は気になっていた。よくゲームでありそうなアイテムがゴロゴロと置いてある。ワクワクが止まらないぜ!
それからほんの少しの時間、店の商品を見て、ポーションを3本、毒消し草3個、聖水3本、そして最後にラッキーサイコロと言う商品を買った。話によりとこのラッキーサイコロは運を一時的にアップさせる事が出来る。特殊な魔道具らしい。すごいがこれが特別高くて、結構お金を使ってしまった。
「このラッキーサイコロ使いてー、でも意味ないところで使ってもしょうがないか、しばらくは持ってよ〜っと、さてと、ノルンはどこだ?」
俺は店の中をウロウロと探すが居ない。そこまで広い店じゃないし、外に出たのか?
「そう!良いわよ。その調子!やっぱりセンスがあるわ〜」
「エイ!ヤー!ブタヤロー」
え!?………なんでこうなった。
ノルンが蝶の仮面を着けてムチを振る練習をしている。そしてその横でボンテージ姿の奥さんが熱く指導していた。
「ノ、ノルンさん何をしているんですか?」
恐る恐る聞いてみる。
すると二人はこちらを見て、
「あら…ブタが一匹紛れ込んでいるわ!」
奥さんが俺の方向を見て何やらおかしなことを言う。俺の後ろにおじさんが居たかな?
「ほんと〜とっても叩きがいがありそう」
ノルンの目が据わっている。
俺の方を見てペロリと下唇を舐める。
なんかゾクゾクする。
「さ〜ワタシが今からみっちり調教してあげるわ〜」
パンパンと俺の足元にムチを叩きつける。
ヒィ〜と声を上げる俺。
「ヒィ〜じゃないでしょ!人の言葉を喋るな!
このブタ野郎〜」
「ブ!ブヒー」
俺は情けなくブヒーブヒーと鳴くのだ!
それからノルンは奥さんに褒められまくり、俺はおっさんに「恥じらいが出ている。まだまだ俺には遠く及ばない」と言われた。
うっさい!俺はMじゃね〜ノーマルだ!ブタ野郎!
……………▽
「フン〜フン〜フン〜……今日は何にしようかな〜タクちゃんには「美味しかったよ!お母さん」って今日も言って貰うんだ〜…よ〜し新メニューの開発ね!頑張るわよ〜!」
商店街で一人の奥さんが嬉しいそうに元気に笑顔で歩いていた。そんな姿を見るのは、この町では日常の出来事、周りの人に声をかけられ、明るく挨拶する姿は周りを明るくさせる。
そんな微笑ましい光景の後ろに、邪悪な視線を向けている大男が居た。
「あの女……美味そうだな〜………」