第3話 妖精のローム先生
「あ〜だいぶ調子が良くなってきたな〜」
ベットから起き上がり背伸びをする。痛みはひいている。しこたま殴られたはずなのに思っていたより早く治った。三日間寝ていたから身体が凝り固まってる。軽くストレッチしてから部屋を出た。
「おはよう、タクトもう起きて大丈夫か」
俺に気がついた父さんが布袋を背負って仕事に行こうとしていた。
「父さんごめん今日も手伝えなくって」
「あ〜いいよ気にするな!それよりまだゆっくり寝ていろ身体痛いだろ」
「いや〜それが全然痛くないんだ。俺の身体結構丈夫みたい、だから心配しないで」
父さんはなぜかアゴを数回触りじっと俺の顔を見る。
「タクトお前少し変わったか?なんか違和感があるんだが」
「え!?」おかしなところでもあったか、確かにいまいち記憶が定まってないから変なところがあったかも。
「んーー悪くはないけど、父さん的には前の方が好きかな、タクトも男だからな、俺って言ったほうが強そうとかカッコイイとか思うんだろうけど勘違いはしてはいけないよ。言葉だけでは意味はないからな、行動が伴って初めてカッコ良くなりそしてモテるぞ!そうすればすぐに彼女が出来る!心配するな」
「父さん、途中から話がズレているよ!心配してないから」
モテたいが、まずはそれはおいといて、そう言えば、タクトの一人称はボクだった。前世では俺だったからついつい言葉に出てしまったが変に疑われても面倒だ取り敢えずボクに戻しておこう。
「そうか、そうだね。父さんが言うなら戻すよ」
笑顔で答えた。
「いいぞ、その調子だ!それじゃ父さんは行くから母さんに言っといてくれ」
「え!?母さんまたスネるよ!会って行ってよ」
「悪いな!タクト後は頼んだ。遅刻しそうなんだ。じゃ〜な行ってくる」
父さんはそのまま走っていった。
え〜母さんなだめるの大変なんだぞ〜
父さんと母さんは今も仲が良いから朝のイチャイチャタイムが長い、俺と喋っていたから今からイチャイチャタイムに入ると遅刻する。
仕方ない今日はボクが母さんの相手をするか。
それから母さんが水汲みから帰ってくると母さんは案の定プンプンと可愛いく怒っていた。それをご飯を食べながら聞き、ところどころ父さんをヨイショしつつ母さんをなだめた。
身体の調子も良いし外に出たい。
母さんに言うと心配されたけど、大丈夫だよと笑顔で言うと遊んでおいでと笑顔で送り出してくれた。
………………▽
んーー気持ち〜空が青いよ。
あんな事があったのになぜか清々しい、それにワクワクする。タクトとしてこの町に住んでいた記憶はあるけど拓哉の記憶が混ざったことで新鮮な気分になってる。よーし行くぞー
町はのどかな田舎の雰囲気がある町並み、仕事に追われていた俺には最高に良い環境だな。
「おいのろまのタクトやっと外に出て来たのか〜」
後ろから罵声が聞こえ振り向くと俺よりも一回りデカい男の子が取り巻き二人を連れていた。
「ん?どちら様でしょうか?」
「はぁーなんだその喋り方はそれにボケてるのかまたボコボコにしてやろうかーあ〜」
スゲー睨みつけてくるよ何だよこいつ………あ!?思い出した。
「タンクさん、おはよう……」
「へっ、やっと思い出したか〜タクトは頭ものろまなんだな〜アハハハ」
タンクが笑うと取り巻きの二人も俺をバカにして笑う。相変わらずムカつく野郎だ!
タンクは俺よりも二つ歳上で、この辺の同年代ではタンクに逆らえる子はいない。特にここ最近身体つきも良くなってか横暴な態度が多くて周りの大人たちも困っている。特に昔からなぜか分からないが目の敵にされ俺がいじめられる事が多い。
「それにしても相変わらず見ているだけでムカムカするぜ。な〜タクトぶっ殺してやろうか〜ア〜」
なんでいつもいつも俺ばっかりいじめるんだよ!めんどくせー、しかしこれはヤバいな〜非力な俺がこいつに勝てる通りはないぞ。
「ほら〜よ!くらいな」
タンクが腕を振り上げ俺を殴ろうとしている。遊びのつもりなんだろう動きは単調で躱せる。でも間違っても当たるわけにはいかない。やっと怪我が治ったのにまた怪我をしたら母さんが心配する。それだけはダメだ!
「お!何だよ今日はずいぶんと反抗的な目をするじゃね〜か、いいぜ相手をしてやる」
うっせいな〜こっちは喧嘩なんかしたかないんだよ!さっさと消えてくれ!
その時、声が聞こえた。
「タクト!こっちじゃこっち!」
その声には聞き覚えがあった。俺は即座に方向転換し走って逃げる。
「おい!タクト待ちやがれー」
タンク達が追いかけてくる。このままだとすぐに追いつかれる。
「まったく世話が焼ける。地の精霊頼む!」
追いかけてきたタンクの足元がやや下がり体勢を崩し転倒、取り巻きはさらにドミノ倒し状態で倒れ、その隙に俺は逃げ切った。
………………▽
「はぁーはぁーメッチャ走った。助かったよ先生」
「何をやっておる。あんなやつぶっ飛ばさんか!」
俺の肩に乗って喋るから耳元にガンガン声が響く。近いんだからもうちょっと音量を下げてくれません。
「無理言わないで下さいよ!あっちは3人だし身体の大きさもあっちのほうがずっと大きいんですから!」
「…………なんじゃ珍しい〜言い返すのか?いつもならごめん先生、次は頑張るから、と言うと思っておったが」
そうだ、俺は気が弱く。誰にも逆らえない。今みたいに言い返すことはまずない。謝って済むなら悪くなくても謝るようなやつ。
「タクト言い返すのは良いが、言い訳くさいのは許さん!」
「ゴヘッ」
突然地面が隆起して手の形に変形、「ゴチン」っと
叩かれた。
「痛い………先生何を……いえ、すいません」
これ以上言うのは得策じゃない我慢しよう。
「ふん!タクトが悪い。タクトは優し過ぎるのじゃ!あんな奴ら我が教えた精霊魔法でぶっ飛ばさんか!」
「精霊魔法?」
「なんじゃその顔は、ボケでも噛ますつもりか」
ゲシゲシと顔を先生に蹴られる。なんでこんなに妖精が凶暴なのよ。全然イメージと違うんだけど、しかしローム先生が言いたいことは分かった。
言い方がおかしいけどタクトつまり俺はあの三人を倒す十分な力を持っている。
精霊魔法、エルフや妖精が得意とする特別な魔法、ヒト族で使える者は稀でまずいない。しかしタクトは資質があり精霊を見ることが出来た。これはタクトの優しい心が可能にした奇跡と言うべき力!らしいけど拓哉という存在が目を覚ましたことで使えなくなったら………俺の性格が悪いと言うことになる?それは悲しくなるから止めて欲しい。
「あの〜先生!どうやって精霊魔法を使うんでしたっけ?」
先生の額に青筋が立つ。
「何度も同じ事を言わせるなーー」
先生の飛び蹴りが頬を直撃し俺はぶっ飛んだ。
そうだったそうだった。
俺が先生の指導を受けてはや五年が過ぎていたんだ。




