第299話 王都情報共有会②…そしてゾクゾクが止まらない!?
「エリック王子達については捜索する必要があると思いますが、今は保留とさせて頂きます。タクトくんの話でもう一つ気になることがありました。……『霧隠れの魔導師』です。彼らがバラクに従い動いている可能性があるとしたら、これは非常に厄介なことです」
自分が言っておいてなんだが、霧隠れの魔導師?
何者なんだ?誰か〜説明してくれー
そう心の中で呟いているといい感じに宮廷魔術師のアルスが説明してくれた。
「それって本当の話?アイツらが表舞台に出てくるとは思えないんだけど、だってさ〜アイツらは人と関わるのが嫌で隠れ里を作って逃げてるような連中だよ。どうしてバラクに協力するのかな〜?」
「私は彼らの名は聞いたことはありますが、詳しくはありません。彼らはなぜ人と関わることを拒んだのですか?」
バロンさんは代表して聞いてくれた。
助かるわ。
「ん?あ〜それね!アイツらはいくつもの独自の秘術を編み出した魔術師集団なのさ、特に幻術魔法が得意で隠れるのが得意中の得意さ、だから見つけるのも難しい。で!それを狙って多くの者が接触を図った訳だが、なかなか強引な方法を取る人が多かったみたいでさ〜」
「つまりそれに嫌気を指して逃げてしまったのですか、ちなみに国が関わったことは?」
「多分……あったと思うよ。知らないけどね」
「はぁ〜、それだと国を恨んでいる可能性もありますね。そうなるとバラクに協力する理由があることになります」
バロンさんとアルスの会話で霧隠れの魔導師についてはなんとなく分かった。それで直近の問題はあの時の幻術魔法にどう対応するかだ。俺は不意打ちとはいえ立ってすらいられなかった。俺のユニークスキル『ツールボックス』の中でそれに対応出来る道具は入っていない。このまま戦えば以前の二の舞になる。何らかの対策は必要だな。
それから話し合いは進み。情報の共有が図れた。
問題は山積みだ。どれから手をつけて良いか分からないほどに、でも俺の中ではすでにやることは決まっている。父さんを探す。バロンさんや母さんは大丈夫だと言ったけど心配なのは変わらない。一人でも行く!
◆場面は移り変わり、ブラックのパーティー
キョウカの視点
「うわーー!!!なの〜」
アイリスの叫び声が響き渡る。
落ちる…落ちる…落ちる……
建物の方向が突然九十度変わったように真っすぐの通路が落とし穴になった。
『風魔法エアライド』
私は地面に落ちる直前に風の浮遊魔法でみんなを浮かせ着地させた。
「全くくだらないことをしてくれるわね!あのオヤジ」
私は少しイラついていた。
私達は常闇のリーダーアンデラのスキル「ラビリンス」に捉えられてしまった。見た目は先ほどの屋敷と一緒なのに全くの別物、出ることの出来ない迷宮と化していた。
「おい!何か来たなのだ」
ニキと言う喋るワンちゃん、この子は本当に謎、
犬でなければ魔物と言うことになるけど、今のところ協力的、少し不安はあるけど仲間なんだよね。
「わーなの!刃物がいーっぱいなの〜!」
剣やナイフ、斧や槍、あらゆる刃物が宙を舞って飛んで来た。
「面倒ね!全部打ち落としてあげるわ」
魔弾を放とうと手をかざすと、私の横を凄い速さで
アイリスが駆け抜けて行く。
「アイリス!?待ちなさい!危ない!?」
私は急いで魔弾を放とうする。
「キン!カンカンカンカン!」
え!?うっそー!?
アイリスが目にも止まらぬ速さで刃物を全て剣で打ち落としていた。こんな小さな子供があんな剣技を……
驚きだわ。
「わーい!わーい!やったなの〜」
アイリスは両手を上げてピョンピョン飛び跳ねる。
「まーまーだな!まだ振りは遅いし、剣の振りに乱れがある。………だけど才能があるからこれからもっと上手くなろうな!」
「グスッ……うんなの!」
剣が喋った!?
聖剣や魔剣の中には意思を持つ物があるとは聞いたことがあるけど初めて見たわ。それにしても注意してアイリスが泣きそうになるのを察知して慰めるとか、想像以上に空気が読める剣みたいね。
「ここはああ言ったトラップが満載なんだよ。少しでも気を抜けばあっさりと死んでしまうかもね」
「あの〜もしかしてブラックさんはここに来たことがあるのですか?」
「昔ね!私がここは居た頃は常闇の訓練所として使用されていたんだよ。屋敷の中は弄りたい放題たからね!とても効率的に訓練がてきる」
「ブラックさん、ではこの場所には詳しいですよね!」
「うん、そうだね!ここがどのようなところかは知っているよ。さっきも説明したけど、ここは訓練所として使われることが多い、訓練所として使われる場合には三段階のレベル設定があって、初級、中級、上級と致死率が高い罠が仕掛けられて、更に複雑な迷路になっている。私は上級までクリア済みだからここが上級レベルなら脱出は問題なく出来たんだけど、まず間違いなくそれはないね!」
淡々と話を進めるブラックさん、この人は冷静に物事を判断して行動出来る人だと思う。そんな人の表情が厳しいものに変わる。
「ここは上級のさらに上……ラビリンス最上位『ヘルホール』……地獄に繋がる館」
その言葉を聞き、私はゾクゾクっと寒気を感じた。
「アンデラは逃げながら敵をこの館に誘い込み閉じ込める。そしてこの館から出られた者は居ない。そう言われている」
ゾクゾク……それが本当なら私達は出られない。
「この屋敷を出る方法なんだけど……」
「え!?出る方法を知っているんですか!」
唐突に助かる話が出て大声で驚いてしまい、あとでハッとなり、私は顔を赤くし恥ずかしがってしまう。
「どのレベルの館でも脱出する方法はただ一つ、上に行くこと、おかしなことかも知れないが、このスキルには必ず出口を設けないといけないらしい」
「でも出られるんですね!」
脱出出来る希望が見えたわ!やったー!………
………ゾクゾク……ゾクゾク、それにしてもさっきから寒くもないのにゾクゾクする。何でかしら?
「あ〜ただ急いだ方が良さそうだ。ヘルホールに限っての話だけど、この館は私達を下に落とそうとする」
「それは出さない為…ですよね!」
「いや違うよ!私達を地獄に落として……殺すためさ!キョウカさんも感じているんではありませんか?身体がゾクゾクと、地獄が近づいて来ています!」
ゾクゾク……もしかしたら私達にはもう……時間がないのかもしれない。