第297話 ソウルフロンティア帰還
俺達はバラクに逃げられた。追いかけることも考えたけど一度戻りみんなと情報を共有する為、ソウルフロンティアに戻っていた。
「父さん達がまだ戻って来ない!?」
王都の調査のために出ていた4つのパーティーのうち父さん達が帰って来ていない。父さんは案外アバウトなところがあるから遅れることがあるかもしれないけどキョウカはキッチリカッチリタイプのはず、絶対におかしい。
「助けに行かないと!」
俺は一人部屋を飛びだそうとすると。
「待つんだ!タクトくん」
バロンさんに止められる。
「でも父さんを助けに行かないと!」
「タクトくん焦る気持ちは分かるが、どこにいるか分からない状況で1人で探しに行っても見つけることは出来ない」
「そんなの関係ありません!それなら王都を全域を走り回って探すだけです」
「え!?お…落ち着きたまえ!そんなことできるわけ………フッ、あとでブラックに教えてやるかきっと喜ぶ」
バロンはタクトくんはいつも冷静で落ち着きのある子だと思っている。それなのにがむしゃらにブラックを助けに行こうと心配する姿を見て微笑ましく感じていた。
「タクト落ち着きなさい!」
後ろから母さんの声が聞こえて振り返る。
「でも母さん、父さんが…………なんで母さんむくれてるの?」
「べつに〜」
母さんはぶんむくれである。
もしかして母さん……俺が父さんを心配しているのに嫉妬しているの?………かわいい、でも父さんの心配もしてよね。
「父さんは大丈夫よ!罠にはまるような間抜けじゃないし、逃げ足なんて超一流なんだから」
「うん……分かった。母さんの言うことを聞くよ……」
母さん、大丈夫なのは伝わったけど、悪意のある言い方ですよ。
「良かった。良かった。流石はミルキーさん、タクトくんの説得はミルキーさんに限りますな〜」
バロンさん、明らかなヨイショ、ありがとうございます。母さんがエヘヘっとニヤけています。ご機嫌取りは成功です。
「バロンさんすいませんでした。自分ちょっと冷静じゃなかったです」
「それは気にしなくて良い。心配するのは分かるからね。だからこそ急ぐ必要がある。さあ!君達の話も聞かせて欲しい。行こう」
バロンは急遽情報収集をしたパーティーメンバーを招集、教会に集まることとなった。
俺が教会に入ると多くの人達が座っていた。どうやら情報収集に関わったメンバーだけではなくイリス教の代表者聖女様に教皇様に国の代表として国王様とローラン様上流貴族の方も居る。
「タクト〜!」
「うん!おう久し振り」
突然カンナが現れて抱き着かれた。どうした?
「なんや!なんか冷たいでぇ!久し振りに愛しのカンナちゃんに会えたんやでぇ!もっと言うことがあるやろ!」
「いや…二日程度やろ。そこまでは……」
「そないこと言わんで労いの言葉とかヨシヨシ撫でるとかせいやー」
プンプンと文句を言うカンナ。まったくかわいいヤツだ。カンナは情報収集メンバーが戻ってくるのを想定して待機させていた。確かにしっかりと働いてくれたようだし感謝は伝えないとな。
「良くやったなカンナ!大助かりだったよ」
そう言ってカンナの頭を撫でてやるとネコのように気持ちよさそうにしていた。
「何をデレデレしているのかしら?」
おっと!いけないカンナが可愛くって表情が緩んでしまった。
「オホン、そんなことはないと思うよイリス」
女神イリス、彼女も話を聞きに出て来たようだ。
「あなたは相変わらずそんな感じでいるけど、今回は今までのようには行かないと思いなさい。あなたは私の使徒なんだから勝手に死ぬんじゃないわよ」
イリスは言いたいことだけ言ってスタスタと言ってしまう。
「まったく神様もツンデレか、普通に心配だから油断するなよ!って言えばいいのに」
俺はクスッと静かに笑った。
「タクトくんには女神様に心配して頂けるのですね。
羨ましいことです」
イリスに入れ替わるように聖女様が来る。
「そうですか。イリスは聖女様のことも心配していますよ」
別に特別視されているとは思わない。
「ふふっ、そうですね。女神様は皆を平等に見ています。ですがイリス様としてはどうでしょうか?ふふっ、これは私のヤキモチかもしれませんね」
ふふふふっと笑いながら聖女様は言ってしまわれた。
え!?それだけ言いに来たの?
「タクトくん!こっちに座ってくれるかな〜」
おっといけない!皆様をお待たせしてしまった。
俺は慌てて席に着く。
「だいたい全員お集まり頂けたようで、僭越ながら今回は戦略担当として拝命された私バロンが取りまとめを務めさせて頂きます」
礼儀正しくお辞儀をするバロン様、こうして王都奪還のため情報共有会が開かれた。