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第293話 死の商人ペンダリーとの戦い①


◆ティアの視点


 まさかこの様な手を使って来るなんて、油断しました。私は呪いに高い抵抗力があると言うのに、身体がほとんど動かせない。


「でも……諦めません……こんな呪い打ち破ってみせます……」


 私は魔力を高め、「ウーウー」っと唸りながらモジモジと身体を動かそうと足掻いているその横から何事もないようにスカーレットさんが歩いている。


 え!?なんで?

 ……疑問と驚きで私の思考が止める。


「どう言うことかな、なぜ動ける!」

 死の商人ペンダリーが少年とは思えない鋭い目つきでスカーレットを見る。


「別に難しい話じゃないわよ!あなた胡散臭いからあまり見ないようにしただけ、あなたが言った通り見なければ何の意味もない力かしら」


「舐めた真似をしてくれる。いいさ!ボクの力はこの程度のものではない!」


「ふーんそう、でも油断してるわよ。あなた……」


「はぁ?何を言っている。惑わそうとしてもそうはいかん!」


「なぜ?動けるのが一人だけだと思うのかしら?」


「え!?」ペンダリーは驚く。

 なぜなら突然誰かに肩を掴まれたから。


「なぜお前まで動ける!?」

 

 ミルキーさんも何事もないように動いていた。もしかしてスカーレットさんと同じようにあの光を見なかったの?


「なぜかしら?んーー……そうね!多分だけれどあなたが私より弱いからよ」


 ミルキーさん!?ここで挑発するんですか!

 涼しい顔で挑発するミルキーさんに対して怒りをあらわにしたペンダリーはシスターを貫いた時の鋭い動きで手刀を放つ!


 あ!?ミルキーさん逃げてーー



「ペシッ」………手刀はミルキーさんにつまみ食いを止められた子供のように軽く手を叩かれる。



「ぎゃゃゃーー」

 ペンダリーは叩かれた手を押さえて転げ回る。

 おかしい?軽く叩かれただけなのに?


 

 その姿の疑問に思い顔に手を当て気がつく。

 ワタシ……いつの間にか動ける!?

 

 そうか、ミルキーさんがペンダリーにダメージを与えてくれたお陰で動けるようになったのね。



「あーーー痛い!いたーい!」


 相当痛かったのか?まだ転がっている。

 今見るとただの子供にしか見えない。



「くそ!一体何なんだこの痛みは、手に鋭い刃物で切りつけられたような。しかも何度も……痛すぎるだろうが!」


「あら?軽く叩いただけなのに、そんなに痛かったのかしら?」


 ミルキーさんはニコニコと笑顔で答える。その姿を見たペンダリーは激怒する。


「ふざけるな!許さんぞ!ボクを怒らせたことを後悔させてやる。傀儡共来い」


 ペンダリーの呼び声に現れたのは、この教会のシスターや修道士、そして司祭様達聖職者の者までも荒れ狂うようにこちらに走って来る。とても正常な人間とは思えない。


「ボクに逆らったことを後悔しろ!全員原型がなくなくほどボコボコにしてくれる」


 

 動けるようになったのは良いけど、これだけの相手をするのはかなり危険、それに罪なき人達を攻撃するとは聖職者として行うわけにはいかない。


「イリス様、私に人々を救う力をお与えください」

 手を組み女神様に祈りを捧げる。

 

『セイクリッドシールド』

『セイクリッドランス』


 光とともに真っ白な盾と槍が現れる。

 盾はバックラーと言われる丸型の盾、盾と言いながらも受け止めるのに使うと言うより、相手の武器にぶつけて打ち払うように使う。

 槍は普通の物に比べてかなり短く、室内などの閉所で活躍する武器で投擲がしやすい武器。


「ティア、私がフォローに入るから思いっきりやっちゃって!」


 アーチは私の前に立ち、グローブをつける。

 アーチの基本武器は剣なのだが、それでは大怪我をさせる恐れがある。その為配慮したのだろう。


「行くよ!ティア!」

 猛然と突っ込んで行くアーチ、それに合わせて動き出すペンダリーの傀儡となった人々、人が波のように襲ってくる中、アーチは近くにいる順に腹部に拳をヒットさせ動きを止める。


『セイクリッドスピアー』

 

 私の持つ槍が高速で伸縮し、まるで連続突きを放ったように傀儡の人々を貫く。すると傀儡の糸が取れたようにバタバタと倒れていった。


 この槍には聖なる魔力が込められており、的確に呪いを突くことで浄化することが出来る。これだけの人間に呪いをかけるのは凄いけど、今の攻撃で呪いそのものは私でも十分解けることが分かった。


 私達は傀儡となった人々の呪いを解き倒して行く。



「ごめん!一人そっち行く!」

「アーチ任せて!」


 人だかりから一人剣を持った壮年の男が突っ込んで来た。動きから何かしらの訓練を受けた者と推測出来る。油断は出来ない!


 壮年の男は鋭く剣で突いて来る。それに合わせてバックラーで剣を殴り弾く、大きく体勢を崩したところに槍を突き倒した。


 こちらはあらかた片付いた。ミルキーさん達は大丈夫だろうか?


 私は様子を見ようと二人を見ると、なぜかスカーレットさんは壁を背にしてティータイム?

 えーっと……どこからそのお茶を持ってきたの?


 疑問に思いつつもミルキーさんを見ると周りにバタバタと人が倒れていた。

 ピクリとも動かないけど倒れている人達が大丈夫か不安、だけどミルキーさんは無事のよう。やっぱり彼女も相当な手練!

 

「あ!?いけない、ミルキーさん!」

 

 ぼーっと突っ立っていたミルキーさんが一気に周りから攻められる。

 急いで助けに行かないと!



『ペインコンダクション』


 一瞬……白い何かが走ったように見えた。

 ミルキーさんを襲って来た傀儡の者達は倒れて動かなくなった。


 心配して近づいた私に気がつき優しく手を振るミルキーさん、かわいい主婦だとは思うけど、私は顔が引きつるほど引いていた………

 

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