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第286話 敵意満々


「うっう〜……やっと目眩がなくなってきた」

 ぐっと足に力を入れて立ち上がるとフラフラとコケそうになり、ジェーさんが背中を支えてくれた。


「大丈夫かしらタクトちゃん、さぁ!ソファに座りなさいな」


 ジェーさんは図太い腕でしっかりと支えて俺をソファまで連れて行ってくれた。


「ありがとうジェーさん、まだ足に来ていたみたいで、ジェーさんは大丈夫なの?」


「大丈夫とは言えないはね。歩くくらいは出来るけど戦闘になれば瞬殺よ!まともには動けないわ」


「そうですか、ジェーさんでも、ボク達は一体何をされたんでしょうか」



「たぶん呪術の類よ。麻痺、混乱、幻惑、色々とあるけど、ここまで強力なのは初めてよ」


 ラキさんは疲れた顔をしてはいるが、俺達よりはだいぶマシのようで自分で椅子に座りお茶を飲んでいる。


「ラキさんタフだな〜」

 ポロッと独り言が漏れると、それを聞いたローム先生がゆっくりと俺の方に降り立ち言う。


「ラキは状態異常に対する耐性を持っておるのじゃ、

だからタクトよりダメージが少なく耐えれる。かく言う我もある程度の耐性を持っておるのじゃが、気分が悪い、霧隠れの魔道士、噂程度では聞いたことがあったが、かなりの実力者とみて間違いなさそうじゃな」


「そのようですね」


 誰だか知らないが、俺達を状態異常にしたのはエリックさん達ではない。バクラが言っていたばあさんって言うのがそうなんだろう。また面倒事が増えた。


「はぁ〜何にしても手掛かりは見つけました。本当はこのまま追いたいところですけど、この体調では危険ですから一度ソウルフロンティアに戻りましょう。せっかくの情報と思うかも知れませんが大丈夫です。ボクならメガネを使っていつでも追えますから」


 俺達は一度町に帰還した。



………………▽


◆イグニスの視点 


「ふぁ〜……良く寝た。ふん!ん〜………」

 俺はセルギウスさんと飲んだあと、そのまま酔っ払って寝ちまったんだな。


 ベットに座り横を見るとグゥ~スカイビキをかきながら大の字に寝ているセルギウスさんが居る。


 俺が言うのもなんだが、この人聖職者だよな?こんなんで良いのか?ま〜飲み仲間が増えたと思えば俺は良いけど。


 さてと、俺も少し酔い覚まし散歩にでも行くか。

 俺は2階から階段で降りる。1階は食堂、夕食の時間になり宿の客や冒険者が食事を楽しみ騒がしくしていた。


 あ〜どうすっかな。ノルンとアポロンはまだ戻ってないみたいだし、水でも貰って少し外を回るか。


「おーい!おっちゃん水くれ!」

 宿の亭主のおっちゃんはテキパキとコップに水を入れ、俺の前にコップを置いた。


「水でもう良いんですか?まだ飲み足りないのでは?」

 亭主のおっちゃんはニヤリと笑い、水と同時に酒を勧めてきた。


「あ〜まだ飲みたいところだが、これ以上飲むと連れに怒られるんだよ!なんで今日は勘弁な!」


「そうですか、それは残念、ではまたの機会を楽しみにしております」


 亭主は頭を下げ別の客の対応に行く。それと入れ替わりに近づいて来る者が居た。爽やかな表情な優男だが、その佇まいには隙がまったくない。その辺のヤツじゃないな。




「イグニスさんですよね。私の名はトリスタンと申します。あなたには以前助けて頂いたことがありまして、是非とも御礼がしたいと思いまして」


 被っていたハットを取り頭を下げる。


「ん?そうなのか!ま〜気にすんな」


「いえそんな、そうだ!一杯奢らせて下さいよ」


「あ!良いのか……でもな〜今我慢したところなんだよ。連れに叱られる」


「ま〜ま〜そう言わずに、店長この方に一杯美味しいお酒を……」




「かーうめぇ〜!ちょっと我慢した後の酒は格別だな!」

 俺は上機嫌に酒を煽る。


「おう!もう一杯〜」

 進む進む……止まんねぇ〜わ!ノルンとアポロンには後で謝るかな……



「なぉ〜トリスタンったか、俺はお前のことを覚えてないんだが、どこで会ったんだ?」


 グビグビと麦酒エール飲み干しトリスタンに聞く。


「そうでしょうね。だいぶ昔の話ですので、今から10年ほど前でしょうか、私が住んでいた町が魔物の大群に襲われて、その時助けて頂きました」


「ふ〜ん…そうか、悪いな覚えてなくて」


「いえ、イグニスさんは色々な町で活躍されていると思いますので、覚えていないのは仕方ありません」


「そう言ってくれるのは助かるな…………でぇ!

どう言うつもりなんだ!敵意満々じゃねえか」


 ピシッとテーブルが軋む音がすると、周りの人達が

何人も椅子から転げ落ちる。


「いや〜、あなたは変わらない。あの時と同じだ!この身体の芯にゾクゾクとさせる。この威圧!待っていましたよ」


 さっきとはまるで表情が違う。爽やかな優男だと思っていたら、とんだペテン師野郎だ。今は目をギラギラとさせている猛獣に見える。


「あなたと戦いたいとずっと思っていた。とうとう私があなたを超える時が来た!」


 真っ赤な闘気を無遠慮に放ち、ゆっくりと剣を引き抜く。


 はぁ〜……まったく面倒なヤツに絡まれた。

 さっさとノルン達を追いかければよかったな。


 後悔先に立たずってな。フッ……

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