第285話 それが本当なら私達は………
「うふ!これ美味しいですわ」
「んー味わい深い。是非ともレシピを頂けないだろうか」
ムリです。自分で作ってないんで。
でも二人共喜んでくれたようで良かった。
話をする前に軽く腹ごしらえとクレープを出してみました。たぶんこの世界にはないはずの珍しい品、チョコにイチゴにマンゴー、色々と味の種類があって飽きないよね〜。
「ねぇ〜タクト、これはどこで買ったのかしら、もちろん王都で購入されたのですわよね」
ラウラさんがグイグイと聞いてくる。
やっぱり女性は甘いものが好きなんだろうな。
「あ、いえ……こちらは王都で購入したものではないんですよ。ちょっと特別なところで仕入れています」
「ではそこを教えて下さいませ!私が交渉してレシピを教えて頂きますわ」
「それも無理なんで、さっきも言いましたけど特別なんで」
「それは問題御座いませんわ。私が言えばなんてことも御座いませんことよ。ですので教えて下さいまし」
う〜ん……面倒くさ、上手く話を進める為に出した美味しいデザートが裏目に出た。余計に話が進まん。
「ラウラ、気持ちは分かるが、そのくらいにしなさい。タクトくんも困っているようだよ」
「あら?本当ですの、それは大変申し訳御座いませんですわ。ついあまりにも美味しかったもので、熱くなってしまいましたわ」
ラウラさんはソファに戻り腰掛けた。
「それじゃ〜う〜ん…何から話せば良いのか、僕達はあることについて調べているんだけど、それについては現段階では話せない。なぜならあなた達が敵になるかもしれないから」
「だがそれでは私達にも話せない!私達も同じ様に君達が敵である可能性がある」
ん〜やっぱりそう言うよな。
エリックさんもラウラさんもこちらを警戒している状態、こんな中で話が聞けるはずもない。
「ま〜ですよね。となると無理やりにでも………て言うのも嫌なんで!困ったな〜」
「ちょっと待ってくれ!私としては君達と敵対したいとは思っていない。確かに話すことが出来ないことはあるが、君達が悪人とは思っていない。だから答えられる内容については話そう」
「ん!それは助かりますけど、そちらは良いのですか?今の言い方だと一方的にこちらが質問することになるんだけど」
「もちろん、こちらからも質問させてくれれば嬉しいが、君達には感謝している。私達は君達が来なかったら殺されていたかもしれない。そう考えれば、当然の対応だと思っている」
あれれ?以外だな。あっさりと受け入れてくれるのか?
でもそれなら助けた甲斐があったってもんだ。
「それじゃお言葉に甘えて、あなた達はバラクとはどう言う関係ですか?それと今どこに居るんですか?」
エリックさんは少し顔をしかめた。
「やはりバラクを追って来たのか、狙いはバラクの捕獲もしくは命を狙ってと言うところか」
「あーう〜ん……それはどうだろう。何とも言い難いけど、取り敢えず話は聞きたいかな。どうしてあんなことをしたのかと………」
俺がそう言うとエリックさんは少し考え始める。
「君はバラクが王都の反乱を行った主犯格として追っているのだと思っていたが、国王軍には見えない。かと言って手配書にのっているバラクの捕縛をしに来た冒険者でもないようだな。一体何が目的なんだい」
「今は情報収集です。この王都では今良くないことが起こっています。だけどこれはまだ序章に過ぎないと思っています。なんと言ってもゴエティアが絡んでいますからね。ボクはそれを止めたいんです!」
エリックさんとラウラさんは二人共目を少し大きく開き驚いているようだ。
「それが本当なら私達は………」
……………なぁ!?なんだ?
エリックさんが話をしている途中、突然視界が歪み頭がクラクラとなり俺は膝をつく。周りに居る先生やラキ、それにジェーさんまでもが同じ状態になっていた。
「何をやっている。早く来い!さっさとズラかるぞ!」
長槍を持った体格の良い男が窓を開け入って来た。
「バラク遅いわよ!いつもいつも………」
ラウラが遅れたことを問い詰めるように厳しい口調で言う。
「仕方ないだろ!ばあさん達の説得に時間がかかったんだ!もともと今日話がつくとは言ってないぞ!むしろ褒めてほしいくらいだぜ」
あっけらかんとバラクは言葉を返すと、ラウラの表情はムキッと怒った顔になる。
「バラク、それはつまり霧隠れの魔導師様の助力が得られたと言うことで良いか?」
エリックが眉間にシワを寄せ真剣な顔でバラクに聞く。
「あ〜そう言うことだ。話は上手く進んだ。ばあさん達にとっても、今の王都は看過出来ないそうだ。俺達としても願ってもないことだ。それで、コイツらはどうする?」
バラクは倒れている俺達に長槍を向ける。
くっ!……立ち上がれねえ〜。
まるで二日酔いになった時みたいできぼちわり……
「さっきのヤツらだよな………殺すか?」
バラクから強い殺気が放たれる。
今の俺達にとってはそれを受けることすら辛く、動くことがまったく出来ない。このままじゃ、殺される!?
「止めておこうバラク、今はこの者達構っている暇はない。それに一人、いや一頭動ける者が居る。油断すればこちらが痛い目をみることになるよ」
エリックの言葉にバラクは周囲の気配に集中する。
「確かに気が付かなかったぜ!なんだそいつ?ポケットの中に獣でも飼ってるのか!あぁん?」
四つん這いになっている俺のポケットがゴソゴソと
揺れ、出てきたのはエメリア、その姿は今までの愛らしい姿ではなく。纏う闘気がメラメラと湧き上がっていた。
「エメリアちゃん………」
ラウラは手を伸ばそうとすると、エメリアは歯をむき出しにしてラウラを威嚇する。
「ラウラ、行こう。今は時間がない。少しでも早く国民を救わなければならない」
「えぇ、分かっています。エリック兄様……」
バクラ、エリック、ラウラ、三人は屋敷を出ていく。その姿を黙って見ているしか出来ない自分はまだまた弱いと痛感させられた……