第２７６話 俺のメガネは何でもミルミル！
赤い光の玉は爆発、周辺に衝撃波が放たれた。
「……………あ！ロームさん」
「無茶をするでない。相手はどうやらその辺のゴロツキ共とは違うようじゃ」
爆発の直前、ローム先生はラキさんの前に土を隆起させ壁を作り、ラキさんを衝撃から守った。
「先生、ラキさん大丈夫か？」
俺は二人に駆け寄る。
「別に大したことないわ」
やや機嫌が悪そうに答えるラキ。
「このくらい問題はないのじゃ、しかしあやつらには逃げられたようじゃな」
周りを見ると仮面を付けた者達は居なくなっていた。俺には気配を追うスキルがない為、今から追うのは難しい。
「アイツら〜！どこよ！絶対に見つけてやる」
「ちょっ！待った！」
ラキさんがアイツらを追いかけて行きそうなので、咄嗟に腕を掴む。
「離しなさい！」
「ラキさん落ち着いて、追いかけるって言うけど、さっきの爆発に紛れてどっちに逃げたかも分からないんじゃないの？ここは知らない土地だし、無闇に走り回っても見つからないよ」
「そうかも知れないけど、まだ近くには居るわ。追いかければ追いつけるかも知れない」
ラキさんは俺の腕を振り払おうとするけど、俺は離さない。
「確かに逃げた方向に行ければ追いつけるかも知れないけど、逃げた方向が分からないなかで行くのは確率が悪過ぎですよ」
「そうね！あなたの言う通り、でも居ても立ってもいられないのよ！離しなさい！」
「ま〜ま〜ラキさん、何も追わないって言っている訳じゃないですよ。一度冷静になって動いた方が良いと言ってるんですよ」
ラキさんは不満そうな顔をしていたが、理解はしてくれたようで走るのを止めた。
「あ〜痛かったわ。タクトくん、私は心配してくれないのかしら？」
頭をブンブンと振りながらこちらに歩いてきたのは、ふっ飛ばされて家垣に突っ込んだジェーさん。
「ジェーさんがあのくらいで倒されるなんて思ってませんよ。だから心配なんてする必要はないんです」
実際は忘れてました。なんて言えね〜。
「そう、信じてくれていたのね」
ふふ〜んと嬉しそうなジェーさん、滑稽だな……ってそれは俺が言ったらあかんヤツだな。アハッ。
「それで！あなたには何か策があるんでしょうね！」
「ラキさん圧強いですから、怖いよ」
気持ちは分かるけどマジ度合いがすごい。ルナから少し聞いていたけど想像以上だった。
ラキさんはイリス教で最も模範となる信者の一人で
誰よりも規律に厳しく真面目な人だと聞いていた。でも実は短気な面があり度々揉めることがあり、ある界隈では恐れられる程、ルナの話では特に教会で行われている孤児院での問題が発覚した時には直談判しに行き解決するまで帰ってこない。本人的には譲れない物があるのだろうが、色々な物をほっぽって行っているので周りの者からすると迷惑な話である。つまり日頃はとても優秀な人であるが子供達のことになると、周りが見えない猪突猛進の面倒なタイプなのだ。
「そんなことは良いでしょ！でぇ！見つけられるんでしょうね！」
「アハハ、任せてよ良い方法があるからさ」
まったく面倒な人だ。だけど誰よりも優しい良い人だとも思う。こう言う人の為なら俺も頑張れる。
俺はメガネをかけてクイッと上げる。
「それでは行きますか」
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名称∶メガネ ※能力向上
分類∶装身具
属性∶時空間
性能∶時空間把握により過去の出来事を遡り見る
ことが出来る
制限は四十八時間前まで ※制限解除
魔力に応じて遡れる時間増加
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俺はメガネをかけて状態で仮面の女が居た場所を見る。メガネの側面にあるダイヤルをカチャカチャと回し見ると、過去の映像の仮面の女が視えた。あとはそれを追うだけ、なんちゅ〜便利な道具、楽勝だな。
何でもミルミル、仮面の女を追いながら優越感に浸りつつも、心の中でなんちゅ〜恐ろしい道具だとしみじみ思う自分が居た。
