第264話 名前を考えるのは難しい
全然話が進まない。俺がチビの名前を考えている傍らでイリスと聖女様は談笑しており、キョウカに関してはチビとずっと遊んでいる。なんで俺だけ大変なの?納得いかねぇ〜。
「なんや?随分としんどそうやな〜」
「お〜う!カンナ助けてくれ!チビの名前が全然思いつかないんだ」
「なんやそんなことかいな。タクトなら良い名前をつけれるから大丈夫や!だってウチの名前つけてくれたやろ」
そう言ってカンナは俺を励ましてくれた。
そうだな。カンナの言う通りだ。少し考え過ぎていた。
大丈夫、自分に言い聞かせろ。俺なら出来る!チビに名前をつけられる。
強くてカッコ良くって、それでもってキョウカが納得する名前………キョウカが納得する名前ってなんだ?……そうだよ!この部分で却下をくらってるんだから、そこを考えないと、う〜ん、キョウカが気に入るのは……かわいい?
つまり強くて、カッコ良くって、かわいい?
なんだそりゃ!ムズ〜!
俺はチビを見る。
チビは綺麗な色をしてるな〜。やっぱり見た目も取り入れるか。
「あら?そろそろ決まったかしら」
イリスにはバレたか。良い名前を思いついた。
「ま〜ね!チビ来い!」
俺が呼ぶとチビはパタパタと羽ばたき、俺の頭に乗った。どうもここが好きらしい。
「お前の名前をちゃんと聞いてくれよな。チビ!お前の名前はエメリアだ!」
「…………………」
静寂が流れ、それぞれが何か言いたそう。
「さっきよりかはだいぶ良いけど、どうしてそうなったのかしら?」
当然の疑問、もちろん聞いてきたのはキョウカ、そして俺が言えるのはただ一言だけ。
「かわいいだろ。エメリア………」
俺の意見なんてもう良い!エメラルドのエメにかわいいかな〜と思ってリアをつけました!どうよ!
「タクトあんたね〜」
心底呆れ返るキョウカが何かを言おうとした時。
「キュイイイーーー」
エメリアが嬉しそうな鳴き声で翼を広げる。
その姿を見たキョウカは笑顔に変わり。
「エメリアに免じて許してあげる!良い名前だと思うわ!発想が単純そうだけど」
ふぅ〜良かった〜。キョウカが納得してくれたか、エメリアも俺の周りをぐるぐると回ってはしゃいでいる。
「はぁ〜メッチャ頭使ったけど良かった」
「流石はタクトやで!かわええやん!ま〜ウチのカンナに比べれば劣るやけどな」
そう言ってカンナが笑っていると、エメリアが急旋回しカンナの頭をガシガシと噛みだす。
「アタタタ!?ヤメイ!ヤメイ!痛いやろうが!」
バタバタとカンナとエメリアがじゃれあい落ち着いた頃には二人共ボロボロになっていた。
「二人共、そのくらいにしておかないと晩飯抜きにするからな!ケンカはもうしてはいけません」
ケンカが落ち着いたところで一応釘を刺しておく。これ以上騒がれて、話が進まないのは困る。
「ひどいよ!タクト、ウチはなんも悪くないよ」
「そうか、お前が余計なことを言ったからの気がするけどな〜」
「そんなことあらへんもん!」
フンッと横に顔を振り、カンナはひねくれたことを言っている。
「カンナおまえな〜」
俺が呆れているとビューンっと俺の懐にエメリアが入って来た。
「キュイ〜キュイ〜」
「お〜お〜ヨシヨシ」
エメリアを撫でる。
「あーーー!?なんやズルいやん!」
「はぁ〜……カンナ、エメリアは生まれたばかりの赤ん坊だぞ!優しくしてやらないとダメだろ」
「あー!ズルいズルい!ウチもウチも〜」
カンナも俺にすり寄ってくる。
どうしよう。話が全然進まない。
仕方がない。飯で釣るか。
タブレットと中華を発注。テーブルの上は料理でいっぱいになる。
「うまそぉ〜やん!」
「キュイーキュイー」
二人共がっついて食べている。
良し!これでやっと話が出来る。
「このシュウマイ美味しいわね」
「イリス様これってシュウマイって言うんですか?初めた食べました。美味しいです」
「聖女様これは異世界の食べ物ですから、知らなくても当然ですよ」
あれー?皆さんも一緒に食べてるの?
もしかしてこれはまだ話は進めれないのかな〜
結局イリスの話は食べ終わった後となった。




