第262話 自宅に帰って一休み
魔物の大群は一瞬で倒され静寂が流れる。
たぶんこの気配を恐れて周りに居た他の魔物も
逃げ出したな。
「父さん、これって……」
「うん!父さんのもう一つの隠しスキルかな。
ユニークスキル『デスサイズ』死神が持つと
言われる恐るべきスキルだよ」
父さんは少し嫌そうな顔を変わる。
「このスキルは常闇の任務を勤めている中で
手に入れたスキル、人を殺す為のスキルだ!
決して誇れるスキルではない」
父さんそう言っては俯いた。
「ん?そうなの父さん、そのスキルすごく強い力だと
思う。父さんは常闇の役割を理解したうえで言って
いると思うけど、この力をどう使うかが重要だと
ボクは思う。それに父さんはその力をボク達を守る為
に使ってくれるんでしょ。だから何の問題もないよ」
「そうか、タクトがそう言ってくれると、この力を
気にせず使えるよ。ありがとうタクト、お前が息子で
良かった」
父さんの言葉に嬉しくなって抱き着く。
俺も父さんの息子で良かったよ!
「それじゃ〜バロンの話でも聞きに行くかな。
タクトはこの後どうする?」
「う〜ん、ボクも父さんについて行ってバロンさんの
話を聞くべきかも知れないけど、母さんと話がしたい
から一度家に戻るよ」
「タクト……一応もう一度言っておくけど……」
「分かってるよ!父さん、ビビリ過ぎたって、
母さんには聞かないから安心して」
父さんはマジな顔で言っている。
再三再四言われているから言わないよ!流石に……
「それなら良いけど……タクト気をつけてくれよ」
父さんとの話し合いを終えた俺達はソウルフロン
ティアへと戻り、父さんはバロンさんの下へ、俺は
自宅へと戻る。
…………▽
「ただいま」
「おかえり〜タクちゃん」
帰宅するとムギュっと母さんに抱き締められた。
ん〜……この豊かな胸の感触……これが母さんだな。
記憶を取り戻りてからは母さんが性的欲求の対象に
なってしまったが、ここ最近は慣れてきた。でも
あんまり長いと窒息する問題は相変わらずである。
そろそろヤバい!とポンポンと母さんの背中をタップ
した。
「お腹空いたでしょ!すぐ作るわね」
母さんはさーっと台所に行き料理を始める。
トントントンっと軽快な包丁の音、ジューッと
肉を焼くフライパンの音、どんどんと調理が進んで
行く。
母さんも慣れたもんだ、火を使わないオール電化の
生活、初めはおっかなびっくりの連発だったけど、
母さんの順応性は半端なかった。今ではマーリンから
移住した住民に使い方の指導まで行っている。
「はぁ〜い!出来たわよ!食べて食べて!」
母さんの料理は相変わらず美味しかった。しかも
俺の味覚に合わせてくれたのか、元の世界の材料と
俺の意見を聞いて日本にある一般料理を作ってくれた。
「う〜ん!最高だよ!母さんウマすぎ!」
「母さんはその一言を貰うために頑張ってるのよ!
ありがとうね!タクちゃん」
母さんとはここ最近にあった出来事について
話しながら食事をして自室に戻る。
父さん約束は守ったよ。
母さんには何も聞かなかった。
…………▽
「お〜おかえりタクトよ」
「あ!タクトなのだ!」
「あれ?先生にニキ、戻っていたのか?なんだ
それなら一緒に食べれば良かったのに」
自室に戻ると先生とニキがベットでまったりと
寝ていた。
「お前の母に遠慮した。たまには良いと思ってな。
なので腹が減った。何か出すが良い」
「お腹減ったのだ〜」
「はいはい、分かったよ!ちょいお待ちあれ」
オレの肩に乗る先生と足元にしがみつくニキに
美味しい食事を提供した。
「ふむふむ……その様な話となったか、面白くなって
来たのじゃ、それでタクトはもちろん行くのじゃな」
「うん、そのつもりだよ」
「ならば我も行こう。そろそろモーリスから離れても
良いだろう。あまり手をかけ過ぎると自立せんしな」
「本当ですか、先生が来てくれると心強いですよ」
「タクト俺も行くのだ!」
「おーニキもか、嬉しいぞ!宜しくな」
先生とニキに協力が得られて良かった。
今回は人手が居るからな。さて休憩は終わったし
そろそろ行くかな。
俺が次に行くのは教会の裏に作ったイリスの自宅、
実は事前にお告げ的にテレパシーで呼ばれていた。
少し緊張する。
なぜなら、イリスの自宅に入ると、相変わらずの
無表情で緑茶を飲む横で聖女様が一方的に笑顔で
話しかけ、傍らにあるソファにムスッとした表情の
キョウカが座っていた。
なんか上手くやっていける自信がない。
女神イリスの使徒全員集合である。