第256話 カンナ吠える!
「お…おはよう御座います。食事が出来ていますよ」
国王様達が少し眠そうに降りて来た。
またしてもやってくれたな!カンナ〜
赤、青、緑、三色のジャージ姿で食事をしている。
この人達のこの姿には違和感しかなくズキズキと
心に刺さってくる。
この姿は他の人には見せられん。
「あの〜皆さん、食べ終わったらブライアンさん達と
合流してお話をしたいので移動します」
「あぁ、分かっている。昨日はすまなかった。
まさかあんなことになるとは、お恥ずかしい」
国王様だけではなく、皆さん恥ずかしそうに
頭を下げる。流石に昨日のことは反省しているみたい。
「それでは行こうか!」
「はい!行きましょう。でも皆さん着替えて下さいね」
ローラン様以外の二人が「えっ!?」て顔をして
いる。言っておいて良かった。そのままいくつもり
だったな。あんな姿見せたら、今度こそブライアンに
斬られる。
俺は事前にルナに連絡を取り教会に集まるように
言っておいた。
教会に着くとすでに呼んでおいた人達も来ている。
「皆さんお待たせしました」
最初にこちらに駆け寄って来たのはブライアン
とアルス、昨日から心配だったんだろう。今は国王様
と王妃様の姿を見て安堵している。
俺はルナとノルンにお礼の挨拶に行き、その後
傍に居たバロンさんとスカーレットさんに挨拶を
した。
「タクトくん、これまたえらい人を連れて来たね」
「タクトくんはやっぱり大物ね。これからが楽しみだわ」
二人と話しているとローラン様がこちらに
やって来た
「まったく疲れたよ。バロン、昔少しだけタクトくん
の話を聞いたことがあったが、この様な子だったとは
………驚かされてた」
「そうでしょ、ローラン様もご無事のようで」
「あータクトくんに助けられたよ。それにしてもここは
一体どこなのだ?」
「さ〜私も分かりませんな。ただここは神の御わす
特別な空間で安心が出来る我々の町ですよ」
「神が御わす?それはどう言う意味だ?バロン
ん?……そう言うことか」
ローランはこちらに歩いて来た人を見て納得する。
「ローランさん、あなたは大丈夫ですか?体調が
悪くなったらいつでも言って下さい」
「聖女様、大丈夫です。身体は好調なくらいです。
そうかバロンが言いたかったのは聖女様のことなの
だな。確かに神にも等しい存在よのう」
ガシッとローランは肩を掴まれる。
「その通り母ちゃんは神のような存在、
流石はローラン殿だな」
「相変わらずだな。ファーガス教皇、元気が取りえ
なのは知っているが、肩が痛いからやめろといつも
言っているだろうが」
ファーガス教皇は「すまんすまん」っと言って
今度はローラン様の肩を叩いて叱られていた。
ファーガス教皇が騒がしいから気になったのか
国王様達もこちらにやって来られた。
「聖女殿、こちらに居られたのか、先程は助けて頂き感謝する」
「いえ、大したことでは御座いませんよ。
お元気になられた様で安心致しました」
さて呼んだ人は全員集まっているのは分かったから
話を進めないと。
…………▽
「皆さん、すいません注目して下さ〜い」
…………うっ、ほとんど俺を見てくれない。
見ているのはルナやノルン達だけ、みんなお偉いさん
だから命令する側であって聞く側じゃない。こんなものか。
「はぁ〜」ため息が出る。
「なんや!コラァ〜!タクトが話してるんやでぇ!
話聞かんかーい!しばくでぇ!」
おう!?……カンナさんどないされたの……
はぁ!そうか、俺に気を使って…ありがとうカンナ。
「タクトはなぁ〜小心者なのに声張り上げとんやでぇ!
聞いてやらんと可哀想やろうが、うっうっううう…」
カンナーー恥ずいわーー!
でも……俺のことを思って言ってくれているだけに
怒れない。とは言え感謝も言いたくない気分〜。
ん!……流石に今のは受け入れきれなかったか。
国王様の臣下であるブライアンとアルスから
威圧を感じる。何かするなよ。
「二人共待て!この者達に手を出すでない。
我らの命の恩人であるぞ」
「はぁ!申し訳ありません。出過ぎた真似を」
「王、何を、彼らは無礼にも程がある。叩き潰すべきだ」
ブライアンは剣を収めたが、アルスは止まるつもり
はなさそうだ。またか面倒だけど…上手く止めれるかな。
アルスが杖を構えると数十発の魔弾が杖から
放たれる。この狭い教会の中、受け止めるだけでも
衝撃が周りに出てしまうかもしれない。まずは魔弾の
軌道上に配管を設置。
魔弾を別の場所に飛ばす。
それを見たアルスは少し顔をしかめ杖を操り
魔弾をコントロール、配管を躱しこちらに向かって
来る。
宮廷魔術師、このくらいのことはやってのけるわな。
それじゃ〜次は……
俺は手袋をはめた手を魔弾に向けた瞬間、魔弾が
突然停止する。
「アルス何をやっているの!タクトに杖を向けると
言うことは私に向けるのと同じことよ。杖を下ろしなさい」
扉から入って来たのははキョウカ、片腕を魔弾の方に向けて止めている?
「流石はキョウカだよ。ボクの放った魔弾を自分の
制御下するなんて、圧倒的な制御能力だよ。だけど
これはどうかな!異なる鎖『マッドチェーン』」
アルスの足元に魔法陣か展開され一本の鎖が現れる。
「アルス…あんたバカでしょ、そんなもん召喚したら
ここに居るみんなが危ないでしょうが」
キョウカは眉間にシワを寄せ両手を上げると
空中に魔法陣が現れ、そこから白い鎖が複数伸びて
マッドチェーンに巻き付く。
縛り上げられたマッドチェーンは微細な振動を
高速で行い。次の瞬間キィィィーーンっと音を出す。
ボロボロと砕け落ちる白いチェーン、キョウカの魔法が
砕かれた。
「このくらいじゃ〜、アレは止められない!
まずいわ!次に鳴かれたら死人が出る!」
キョウカの言葉に尋常ではない危機感を感じ、
突撃する体勢を取るのだが……
「五月蝿いわよ!私の領域に悪意ある物を
入れるなんて、いい度胸をしているはね〜」
マッドチェーンはサラサラっと塵になって
消えていく。
俺が後ろを向くと機嫌悪そうにしている
イリスが立っていた。