第255話 ちっこいドラゴン誕生
「ん?なんか胸のあたりが温かいんだけど」
ポケットを開けると何かが飛び出して来る。
「あた!?いった〜……なんだよ〜今のは?」
飛び出して来たものがアゴを直撃、かなり硬いぞ。
石なんて入れた覚えないけどな〜。
ん?頭の上になんか乗っているような。
「タクトなんやそれ?ちっこいドラゴンかいな?」
「ドラゴン?」
俺は頭の上に居る何かを掴み取り上げる。
「ちっこいドラゴン……あ!あの卵!孵化したのか!」
ポケットの中を見ると殻が割れて中身がいない。
つまりこのドラゴンが生まれたってことだ!
「お〜こいつ可愛いな」
俺の手にスリスリと擦りつけている。
手乗りドラゴンってか癒される〜。
体長は10cmちょっと小さく、全身がエメラルド
グリーンでとっても綺麗、体型は西洋のドラゴンで
がっちりした体に尾がある。
「なんや?そんなヤツよりウチをナデナデ
してぇーやぁ〜」
「おい、いちいちヤキモチ焼くなよ!まだ生まれた
ばかりの赤ん坊だぞ。優しくしてやれ」
俺はそう言いながら牛乳パックを購入する。
「う〜ん……ドラゴンって牛乳飲むかな?肉の方が
良いかな〜。でも赤ん坊だし早いよな」
皿に牛乳を入れ傍に置くとドラゴンは少し
おっかなびっくりと言った感じで近づき牛乳を
舌で舐める。チロチロ、チロチロと嬉しそうに
飲んでいる。問題はなさそうだな。
「美味しそうに牛乳を飲んでいるこいつを見ていると
腹が減ってきた。工具の手入れをしている間に結構
時間が経ってたな。そろそろ食事の準備でもするか、
今度はレトルトって訳にもいかないからな」
作る料理はハンバーグにポテトとニンジン添え、
それとサラダにすることにした。
せっかくだしメインのハンバーグは美味しく
作りたい。料理本でも読みながら作るか。
俺はタブレットですぐ購入し読む。
なになに、美味しくする3つの極意と、まずは
冷やしながらこねる。これによって粘りが出て割れに
くくなるか、次に表面をなめらかに整える。これで
火が均等に通りさらに割れにくくなって、旨味である
肉汁がしっかりと閉じ込められる訳か、なるほど、
そして最後に蒸し焼き&余熱でうまみを閉じ込める。
「よ〜し、上手く出来たぞ〜!カンナ〜そろそろ料理が
出来上がるから王妃様を呼んできてくれ」
「了解やぁ!う〜ハンバーグ楽しみやぁは!
まっとってぇ〜や!ハンバーグちゃん」
カンナは飛び上がる勢いで部屋を出ていった。
「そんじゃ、俺は国王様達を呼んで来るか、
チビすけも来い、勝手に食べちゃダメだぞ」
チビすけとはさっき生まれたドラゴンのこと、
まだ生まれたばかりで名前がないのでそう呼んだ。
さっきからハンバーグに狙いを定めてよだれを
垂らしている。あの感じだと俺が部屋から居なく
なったら食べられそうだからな。連れて行こう。
俺は国王様達が寝ている部屋に行くと、すでに二人は
起きていた。
「お二人共起きられていましたか、食事が出来たので
来て頂けますか」
「食事か、それは助かる。寝ていただけなのだがな。
腹が空いているようだ。行くぞローラン」
国王様は立ち上がりローラン様も特に何も言わず
ついて来た。
ふう〜何か睡眠薬の件で言われるかと思ったけど
国王様は気づかれていないのか?それとも許して
くれたのか?分からないが取り敢えず黙っておく。
「ささっ、こちらへどうぞ」
テーブルと椅子は準備済み、二人を座らせ料理を
並べていく。あとは王妃様をカンナが連れて来たら
食べよう。
「タクト連れて来たでぇ!はよ食べよ」
「おう、ありがとうカンナ………え!?」
カンナが王妃様を連れて来たのだが、王妃様の姿を
見て俺は絶句する。
赤いジャージ姿の王妃様が居た。
国王様とローラン様の目が点になっている。
やってくれたな〜カンナ!
「ソニア、その格好はどうしたのだ」
「ハド、これのこと?これはジャージって言って
寝間着らしいわよ。それに外で来ても良いんですって、
動きやすくって快適よ」
王妃様にジャージって合わんやろ!
違和感しかない!
「ほう。そうなのか、いつもと違うソニアも……良いな」
「そうでしょ!」
少し大きめのジャージだったのか?王妃様は手を袖に
すぼませて腕を上げる。その姿に国王がデレた。
おい!それで良いのか!国王よ。
なんにしても良かった。ローラン様は何か言いた
そうだけど、二人のやり取りを見て何も言わなかった。
「それでは揃いましたし。皆さん食べましょう」
全員が席に着き食事し始める。
「ん!?」
「おう!?」
「これ……とても美味しい」
皆さんそれぞれ一口食べて表情を変える。
王妃様の美味しいの一言に皆さん頷く。
「ほう!このような料理は食べたことがない。
とても柔らかく食べやすい」
「本当ですな。食べた瞬間に中から肉汁がジュワっと
飛び出て旨味に驚きました」
良し!やったぜ!貴族様の舌にも通じた。
皆さん上品ではあるが一心不乱に食べている。
「チビすけお前も食べるか?」
「キュイ〜」
チビすけもガツガツと食べている。
俺はヨシヨシと身体を撫でてやると可愛く鳴いて
応えてくれた。
「あ!そうだ、皆さんワインとかありますけど
飲みます?」
皆さんの視線がグワッとこちらに向き、「飲む」と
勢いのある返事が来た。こりゃ〜3人共相当好きだな。
それから皆さん満足されたのは良かったのだけど、
ワインを飲みすぎてすぐに就寝することになる。
話はまた明日だな。
チビすけを頭に乗せて散歩に出ることにした。