第252話 間違った選択
「なんと!?マジックバックに入れておったのか?これは家であるな!そうか家を入れて運ぶ発想は今までなかった。これならば旅先でもしっかりと休息が取れそうだ」
国王様がいたく感心されているが、俺としては普通のことだったのでなんとも言えない顔で対応する。
※厳密には違いますけどね!
国王はそんな俺のことを少し不思議そうに見ていた。
「タクトくん、もう入っても良いのか?王妃様を早く休ませたいのだが」
「ローラン大丈夫よ。今はだいぶ落ち着いたわ。少しのどが渇いたから、何か飲みたいのだけれど」
ローラン様が王妃様のことを気遣って俺に声をかける。これはいけない。気が利かない男で覚えられてしまう。急ぎお休み頂ける場所を提供せねば!
「すいません、お待たせして、ど〜ぞ!中へお入り下さい」
俺は家の中に案内するのだが、もちろん家の中はすっからかん。な〜もありませ〜ん!では!ババっと購入ポチッとな!
机、椅子、ソファ、ベット等、家具を入れまくる。これで取り敢えずは寛ぐ準備はOK!その次に王妃様は何か飲みたいと言っていた。この選択肢はかなり重要とみた!……考えるんだオレ、王妃様は大変お疲れなわけで、そんな時は甘い物、さらに健康になればなお良し!
うぉー……これに決めた!ポチッと購入〜
……………▽
「甘くて美味しいわ。この様な飲み物は初めて!」
「うむ!これは美味いな!量が少々物足りんがな」
国王様と王妃様にご満足頂けた様で良かった。
俺は手に持っている乳製品乳酸菌飲料を見て思う。ヤ◯ルト1000、乳酸菌 シロタ株が1本に1000億個入ってるって、スッゲェ〜………って確かに美味しいけども!さらにストレス軽減効果で健康ってか!
俺は迷い過ぎて間違った選択をしたかもしれない。
それから国王様がヤ◯ルトを思いのほか気に入ったらしくおかわりを要求されたが、適量は1日一本で継続して飲むと良いものと説明し、これから毎日渡す約束をさせられてしまった。
「ん〜どうしましょう。王妃様お疲れかと思いますが少しお腹に何か入れませんか?」
「そうですね。ホッとしたらお腹が空きました。何かお願い出来ますか?」
「えぇ、お任せ下さい」
良し!さっきの失敗を帳消しにするチャンス!
今度こそ失敗は許されない。俺は再び考える。
せっかくなので皆様には美味しい物を食べてほしいことを前提にあまり食べたことのなさそうな物を食べて貰いたい。さらに言うなら元気が出そうな食べ物、そしてあまり技量が求められない料理!
うぉー……これに決めた!ポチッと購入〜
「ん〜〜、これ美味しいわ。確か南方の国でこんな料理があったと思ったけど、こんな味だったのね!辛いのにその中に甘みを感じるわ!食べてるの食欲が湧く食べ物は初めてよ!」
「うむむむ!この横に添えられた赤い物も良い!シャキシャキと歯ごたえがクセになりそうだ!」
悩みに悩んで決めたのは……いつものカレー、しかも調理の失敗を恐れレトルトカレーにしてしまった。
またしても間違った選択を……そう思った時だった。
「あのーおかわり頂けるかしら?」
少し頬を赤くさせて王妃様がお皿を持って来た。
「私もおかわりを所望する。出来れば赤い物をもっと貰えると嬉しいのだが」
王妃の後ろから口髭にカレーを付けた国王様が同じくお皿を持って来た。
カレーって国どころか異世界すら越える万国共通の食べ物だったんだな。
国王様と王妃様の顔を見て失敗ではなかったことに安堵しレトルトカレーをお鍋のお湯に入れた。
しかしよく食べる。結局二人共おかわりを2回もした。王妃様に関してはどこに入ったのか?と疑問がつきないほど、最後にスッキリさせるため何か良いものはと考え行き着くものはいつも一緒、アイスクリームでひんやりとさせ落ち着かせることが出来た。
そろそろ王妃様を休ませようと思い声をかけると、食事をしている間に調子が良くなったと言われた。しかし国王様は王妃様の体調が心配だったので、王妃様を説得、なんとか寝て休むことになった。
「カンナ〜王妃様を案内して、あ〜あと、ドレスのままだと寝にくいから寝間着も宜しく」
「はいな!ウチに任せときー!ほな王妃様いこかぁ!」
カンナは王妃様の手を取り案内する。
なんか少し不安だ。カンナ変なことすんなよ〜!
俺の思いが届くよう静かに祈る。
…………▽
王妃様がいなくなると僅かな時間、沈黙が流れた。
「タクトと言ったな。改めて言わせてほしい。妻をそして皆を救って頂き感謝する」
国王様は座った状態で頭を下げる。
「あーそうな良いですよ。ボクなんかに頭を下げる必要なんかありません。ボクはボクが平穏な生活を送るためにやっているだけですから」
「そうか、しかし私達を救い君にどう関わるのかね。この場所は安全なのだろ。それならばここに閉じこもって入れば良い」
「う〜ん…ま〜その通りなんですけど、自分に直接関係なくても、ボクの周りの人が悲しむのは嫌なんですよ」
「つまり、我々は君の大切な人達が嫌な思いをしないようにするために救われたと」
「平たく言えばそうですかね。だから感謝なんてしなくて良いんですよ。ボクが勝手にやっているんですから」
「ふむ!……面白い面白いぞ!この様な男がいるとはな!ローランよ。お主との縁がこの男を呼んだのだな」
「いえ、私は何も……これは孫達のおかげで御座います」
ガッハハハと見た目によらず国王様は豪快に笑っていた。
「おっとすまないな。ついさっきまで生死の境を渡っておったからな。私も息を吹き返してだいぶ高揚しているようだ」
国王様は真剣な顔を変わりギロッと眼力のある瞳で俺を一直線に見る。
「君にお願いしたい。我が国を救って貰えないだろうか!」
随分と重い依頼が来たな。完全に胃もたれ案件だぞ。正直やる事は決まっている。だけどただそのまま答えるのはなんか違う気がした。
「ボクは………




