第243話 ラキを救う③
ラキは目を覚まし、しっかりと会話も出来ている。まずは一安心、ラキは起きてからみんなの身体を一人一人見ていた。腕と脚が治っていることには気がついたはず。ちゃんと治しておいて良かった。
……しかしそれだけで解決するものでもなかった。
「みんなは私の事を恨んでないの?」
恐怖からか身体を震わせながらラキは喋る。
「はぁ?何言ってんだよ!ラキ、まったくお前のせいじゃないぞ!」
「そうだぜ!ラキはいつもみんなを守ってくれたんだ。本当は俺達の役目なのに情けねぇ〜すまないな!ラキ」
一番年上のロンとイルは申し訳なさそうに頭を下げる。
「二人とも頭を上げてよ。私が居なければみんなはあんな酷い目に遭わなかったんだよ。だから……私のせいだよ……」
シュンとするラキ、さっきから何度も声をかけてみんなで説得をしているけど、ラキは自分の所為でみんなを大怪我させてしまったと自責の念に囚われている。
そう簡単に上手くはいかないとは思っていたけど、そろそろあの人達にお願いしようかな。
『配管+視える人』であの世へのゲートが開かれる。
配管(空間転移)であの世とこの世の狭間に居る。バネスさん、神父様、シスターをみんなの前に呼び出す。だけどそれだけではダメ。幽霊となった彼らは普通の人には視えない。そこで使うのが視える人スキル、配管にその力を伝え、配管を通してバネスさん達をみんなに視えるようにする。
(よ!みんな元気してるか!)
「「「神父様!?」」」
みんな驚いているぞ!ま〜当たり前か。
亡くなった人達が現れたんだから……
(ラキ!どうしたんだ。随分と元気がなさそうだぞ。ラキはいつも駆け廻ってやいややいやとみんなに声をかける。元気な女の子だと思ったがな!)
神父様は少しおどけるように言葉を紡ぐ。
その言葉にはどこか温かみを感じる。
「神父様……ワタシのせいで……」
(ラキ、あなたの所為など誰も思っておりません。それよりも私達はあなたが心配なのです。どうか私達の為にも元気を出して下さいな)
ニコリと優しく微笑むシスター。
「シスタ〜!ワタシ…ワタシ…グスッ……」
ラキの目から止めどなく涙が流れる。
それを止めようと腕で涙を拭う。
(泣かないで下さい。私は笑ったラキが好きなのですから……私はラキの幸せを願っております)
シスターは小さく手を振っていた。
「シスター待って!行かないでぇ!」
ラキは配管に向かって手を伸ばす。
「おっと!それはダメ!」
俺は配管に向かうラキを止める。
「退いてお願い!シスターが!神父様が!行っちゃう」
ラキ悪いけどそうは行かない。
そのまま行ったらあの世行きなのよ!
みんなが悲しむバットエンドになっちゃうから〜
俺は必死に暴れるラキを抑えていると、配管からまた別の人の声が聞こえた。
「ラキ……あなたはまだこちらに来てはいけません。前にも言いましたよ。人の為と言っても自分の命を粗末にしてはいけませんと」
「師匠……バネス師匠!」
ラキはバネスさんを見て動きを止めた。
俺は二人の間にいると邪魔になると思い。
ラキから離れた。
「師匠申し訳ありません。私がもっと早く駆けつければ、師匠が死なずに済んだかもしれないのに……」
ラキはグッと歯を食いしばり悔しさを滲ませた。
それを聞いたバネスはゆっくりと首を左右に振る。
「ラキ、私が殺されたのは、私自身が至らなかった。ただそれだけです。あなたには何の落ち度もありません。ラキ!師として最後のお願いです。強くなりなさい!もっと強く!身体だけでなく心もです!そしてシスターが言うように幸せになって下さい。良いですね」
バネスさんはラキに言い聞かせるように言った。ラキを想う気持ちが一言一言に乗っており、ラキはそれをしっかりと受け止めていた。
ラキは目を赤くしていたけど、もう涙は流していなかった。バネスさんの一言がきっとラキの心を強くしたのだろう。
「そうです。その顔であれば私も安心してあの世にいけます。ラキ……あなたにイリス様のご加護があらんことを………」
バネスさん達はスーッと消えて行った。
多分だけど思い残すことが無くなって成仏したのだと思う。
確かにラキの表情をみればもう大丈夫だと分かる。この人は元々強い人なんだな。もう完全に立ち直ってるよ!
「ラキさん、目は完全に覚めたようで良かった」
「あなた誰!」
ラキに話しかけたらえらい睨みつけられたぞ!ま〜俺は初対面だけどそんな目で見なくてもいいじゃないですか傷つくな〜
「いきなりじゃないのラキ、タクトは私の旦那になる人よ!失礼な態度は取らないでくれる」
部屋に入って来たのはルナ。
おい!勝手に決めるなよ!
ルナは部屋に入るなりラキを抱き締める。
「良かったよ〜ラキ……目が覚めたんだね」
俺の位置からは見えなかったけど、声から泣いているのが分かった。
「ごめん!……私良く覚えていないけど、みんなに心配や迷惑をかけちゃったみたいね。本当にごめん」
ラキもルナをしっかりと抱き締める。
アレだな、今ここに俺が居るのは邪魔なだけだ。
俺はそっと部屋を出ると後ろから誰かついて来た。
「タクトくん、ラキを救ってくれてありがとう」
「聖女様……ボクのことは気にしないで下さい。さっきの様子だと多分大丈夫だと思いますけど、どんなに強い人でも限界はありますからね。周りの人が支えてあげないと、早く戻ってラキさんについてあげて下さい」
「タクトくん、あなたは良い男です!」
「そりゃ〜どうも!」
俺は軽く手を振って立ち去る後姿を見ていた聖女様は頬に手を当て笑っていた。