第230話 パズムの試練
「パズム、次は負けないと思うよ」
アンディが話をする相手はやっぱりこの椅子に座っているのがパズムか、大きなドラゴンを想定していたけど竜人なのか、初めて見た。
「エルフ君、君ね!ついさっきふっ飛ばされたばかりなのに、すぐに戻ってくるのはどうかと思うよ。ボクはね!あまり殺しは好きじゃないから手加減してあげたのに、次は死んで貰うことになるよ」
パズムは余裕しゃくしゃくと言った感じ、こちらをチラッと見たあとは本を読んだ状態で話をしている。
「貴殿がこの地を守るパズム殿なのか」
「ん?あなたは誰ですか?」
「私はイリス教の教皇を務めているファーガスと言う者、お話をさせて頂けないたろうか」
「それは構わないよ。特に用もないし、話くらいはいくらでも聞くけど」
意外にもパズムに迎えられた。
椅子に座り茶まで出してくれる。
えーっと……俺達ってお宝を取りに来たんだけど?
それからパズムは俺達の話を聞いてくれた。
パズムはここに一人でずーっと居たせいか人に飢えていた様で話出すとやたらと口数が多かった。
「そうか、それは大変だったね!でも一応ボクはここを守る番人だから、この奥にある宝具は渡せないかな〜。でも必要なんだよね。ボクと戦う?」
ん〜このパズムって人、全然敵意を感じないから戦いたくないんだけど、説得出来ないかな。
「パズムさん、そこをなんとかなりませんか?パズムさんは悪い人には見えないので戦いづらいんですよ」
「それは残念だけど無理だよ。主様の言いつけなんですよ。欲しければ試練を受けてボクを倒してほしい」
「ん〜そうですか、仕方ないですよね。でもパズムさんを殺さなくっても勝てば良いんですよね」
パズムさんは目を大きく開き少し驚いた表情をした。
「君面白いこと言うね。それは自信からかな?あんまり過信すると足元救われるよ。本気で来なよ」
「それはもちろんだよ。俺達は試練を受けます」
「うん!分かった。じゃ〜みんなついて来て」
パズムさんに連れられて部屋を出る。
しばらく通路を歩くと学校の体育館くらいの広さの部屋に出た。
「それじゃ〜始めようか、試練の時だよ」
パズムは空中に浮かび上がると高い魔力を纏う。
試練に挑むのは俺とアンディ、アイリス、教皇のおっさんの全員で挑む。
「みんな先に言っておきたいことがある。パズムは風を操る。それは良いんだが問題はその攻撃が見えないと言うこと、でも大丈夫、私に任せてほしい」
「どうするつもりだ?アンディ」
「私のユニークスキル『リスクヘッジセンス』で見極めれば危険な場所が分かるだ」
そうかなるほど、見えない攻撃をする相手には効果的なスキルだな。
「分かったアンディ任せ………あぁ!?また!」
アンディと話をしていると、雄叫びをあげて突っ込んで行くおっさんが一人、もう本当にあの人は勝手なんだから!
「おわあぁぁ〜」
言わんこっちゃない。おっさんは宙を舞って壁に激突ズルズルと落ちた。
ま〜おっさんが話を聞かなかったのが悪いから良いとして、でもお陰で見ることが出来た。おっさんは何もないところで吹き飛ばされた。見た感じから圧縮された空気の爆発と言ったところか、あの鍛えられたおっさんが悶絶しているあたり、当たるとタダじゃすまない威力を持っている。
「アンディお前には本当に見えるんだな」
「見える!だから行け!」
「んーーー……分かった。指示は頼むぞ!」
アンディ……やや心配だ!
「まずは真っ直ぐ走れ!……2時の方向に5メートル飛び上がれ!………次は真上10メートル飛んで………」
俺はアンディに言われるがまま移動、仕掛けられた圧縮された空気弾を躱しパズムに辿り着く。
『ハンマークラッシュ』
「なに!?結界!」
パズムをハンマーで攻撃したのだが、パズムの周りには風の結界が張られており防がれた。
「ボクのエアボムは完全に見切られたみたいだけど、この風の結界は突破出来ないだろ」
パズムは手をこちらに向ける。
『ブラスト』
強風で俺は吹き飛ばされ壁に激突する。
「大丈夫か!タクト」
アンディとアイリスが走って来た。
「あ〜なんとか、頭打ったわ。でも手加減された」
「そうか、やっぱり彼は殺しはしないらしい。私の時もそうだったよ。近づくことは出来ても、あの結界を突破出来ず、手をこまねいている間に吹き飛ばされた。でも死んではいない」
「やっぱパズムは優しいヤツみたいだな。……でもアンディ聞いておきたい。お前結界のこと知ってたな!」
「え!?ハハッ、……大丈夫だ!これ以上
言い忘れはない」
「言い忘れはない!じゃねぇーよ!先言っとけ!冒険者なんだろう。一瞬のミスが判断が命取りだろうが!頼むよ〜」………ガックリ
しかしアレだな。こっちも手加減したとはいえ、あの結界は相当硬い、突破するのはチッと面倒だな。それなら次は…………配管。
配管でパズムの後ろに一気に空間転移、結界の中に侵入しビスで空間固定だ!
「……あら?」
配管から出たら、こちらに手を向けて待ち伏せしているパズムが居た。
「やぁ!タクトさん、すごいじゃないか!空間転移が出来るなんて、油断出来ないな」
「あれれ?なんでバレたのかな」
「ボクは敏感さんなのさ、空気の振動も気になっちゃうんだよ」
移動した時の風の動きを感知したってことか、空間転移で近づくのも難しいってことか。
「わあぁぁーー痛え!」
壁に吹き飛ばされ振り出しに戻った。
アタタ……さてどうしたものか。
トコトコテクテクとアイリスがこちらにやって来る。
「タクト大丈夫なの?痛い痛いなの?」
アイリスは頭を撫でてくれた。
「アイリス大丈夫だよ。ありがとう。それより良いこと思いついたんだ!アイリス手伝ってくれない?」
アイリスを見て作戦を思いついた。
「なの?」
アイリスは可愛く首を傾げた。
アンディと教皇のおっさんにも手伝って貰い。パズムの攻略だ!




