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第227話 寝坊助のダーマちゃん


「おい聞いてるんか?ゼラフ司教」

 鋭い眼光でおっさんは睨みつける。


「まさか、教皇様が来られるとは、どう言うことだ!聖都は魔物に襲われていたはずだ!クソ!」


 ゼラフと言ったか、どうやらだいぶ動揺しているようだ。明らかに落ち着きがない。これは何か知っていそうだ。コイツは捕縛だな。


「お前さんが宝物庫から盗んだで良いんだな!」

 おっさんもこの男が今回の事件に関わっていると断定したのか戦闘態勢を取り拳を振った。


「うぬ?」


 手加減はしたと思うけど、おっさんの拳がゼラフに届かない。何をした?それにあの盾まさか!?


「ダーマちゃん!?」

 

「………………」


 剣さんがあの盾のことをダーマちゃんと呼ぶと言うことは、あれが例の友達、しかし反応がない。あの盾は喋れないと言うことか?


「ハーッハッハ、流石は聖なる盾、聖騎士団最強と言われた教皇の一撃を難なく防ぐか、これで私には誰も手だし出来ん!」


 何だ?急に、さっきまで動揺してオロオロしていたかと思ったら今度は随分と余裕をもった態度を取り始めた。



「ダーマちゃん返事をしろ!聞こえないのか!おーい!ダーマちゃんってば!」


 剣さんいつもと違って友達の前だと子供っぽい言葉遣いをする。ま〜仲が良いと言うことか。



「アレは寝てるな」


「はぁ?寝てるだと、剣さんそれはどう言うことだよ」

 

「ダーマちゃん、昔っから一度寝ると起きんのだ。しばらく宝物庫に置かれておったから熟睡しておるな」


「そんなのあるのかよ。それに剣さんと一緒なら使い手を選ぶんじゃないのか、アイツは認められたのか?」


「アレは違うな。ダーマちゃんのヤツ寝ぼけておる」


「え〜……そんなあり〜」


 んーーならさっさと起きてもらわないと困る。


「どうすれば起きるんだ?さっきから声掛けをしてるのに全然反応がないぞ!」


「取り敢えず殴れ、あのおっさんと同じ様にやっていればいずれ目が覚める」


 剣さんに言われダーマちゃんを見ると、「オラオラオラオラ」と教皇が盾を殴り続けているが盾に触れることすら出来ていない。


 何で触れられないんだ?


「えーい潰れてしまえ!」


「ナヌ!?ベフッ」

 教皇が大の字になって地面にへばりついている。

 イリス教のてっぺんの方がなんちゅ〜格好でコケているんですか?


「なんてアホなことを考えいる場合じゃないか、アレは何ですか?剣さん」


「ダーマちゃんは斥力と引力を使うのだ。離れているからと言って安心するでないぞ」

 

 まったく面倒なヤツだな。

 早く目を覚ませよ!


「それじゃ〜行きますか、手袋着用して空間障壁の応用『裂空撃』」


 空間障壁を変化させ空間打撃で攻撃を仕掛ける。


「ヌアーー」

 あれ?ゼラフは盾を持ったままあっさりと吹き飛ばされた。転がりながらも即座に立ち上がる。動きから武術の心得があることが分かった。だけど今のは想定外だったな。こちらとしてもあちらさんとしても、何で防げなかったんだ?


「くそ!今なにをした!」

 ゼラフはイラ立ち吠える。


 どうやらコイツ攻撃されたことが……そうか、今までのヤツらが達人級のヤツらばかりだったから気が付かなかったけど、この攻撃は透明、つまり見えない。気配を感じるか、特別なスキルでも持ってないと躱すことも防ぐことも困難な攻撃だったわ。


「タクトすごいなの!あっさり攻撃したなの〜」

 アイリスはワイワイと嬉しそうに飛び跳ねる。


「寝ぼけているとはいえダーマちゃんに一撃喰らわすとはやるな!タクトよ」

 剣さんが褒めてくれた。

 ま〜ねぇ!と答えておく。


「お前が何かしたのか!おのれ〜!」

 おっと喋っていたから聞こえてしまったようだ。


「えーい潰れてしまえ!」

 ゼラフは盾をこちらに向けて黒い玉をこちらに向けて飛ばす。


 アレは受けちゃいけない気がする。

 

「なのぉーー」

 アイリスが黒い玉を一刀両断って!?

 なぁー!?アイリス大丈夫かーー。


「なの?」

 アイリスは剣を振った体勢から振り向いてとぼけた顔をする。カワイイ……ってそんなことは良い。何ともなさそうだな。


「レジストした。でなければ潰されていたぞ。アイリス無闇に防ぐでないぞ!」


 どうやら剣さんが効果を無効化してくれたようだな。流石は剣さん頼りになる〜。


「ムゥ〜じゃ!どうすれば良いのさ〜けんちゃん」


「アイリスよ。問題なかろう。タクトに任せておけ」

 

「剣さんボクにぶん投げるんですか?」


「もう気がついているのだろう。あんなヤツにこれ以上ダーマちゃんを使ってほしくないのだ!さっさとやってくれ」


 ん〜ま〜アレならなんとかなりそうだな。

 

「分かったよ。ボクに任せておけ」

 

 俺はゼラフに向き直りつまらなそうに言ってやった。


「あなたはボクより弱いので降参していただけませんか?」


 ゼラフはみるみる赤い顔に変わる。


「クソガキが調子に乗るなよ!殺してやる」

 聖職者にはあるまじき言葉遣いだな。

 少しは反省してもらいたいものだ。

 ま〜もう手遅れだがな。


 ゼラフの周りにいくつもの火が渦巻き、それが炎の槍に変わる。


 へー攻撃魔法も使えたのかこの人。

 でも隙だからだからさ。


『手袋(空間障壁)……突』

 ゼラフの頭上にある空間を長方形の障壁に変えて落とす!


「ゴハァ」

 ゼラフにはこの攻撃が見えていない。だから躱すことも防ぐことも出来ず。頭上から衝撃を受けて地面におネンネすることになった。


 意識を失ったゼラフは盾を落とし、決着がついたのだが………


 この聖なる盾は相当な寝坊助か?

 結局戦いが終わっても目を覚ますことはなかった。


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