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第222話 うおおおーーータクトサマーー!お願いします!


「チクショウがぁ!俺が居なかったばっかりにこんなことにーうおおおーー」

 

 町に戻ったら、こんな有り様だ。気持ちはよく分かる。だけど煩いぞ!この教皇、頭が痛くなる」


「騒がしいよ!しっかりおし!」


「いてぇ!…母ちゃん叩くなよ!」


「母ちゃんじゃないでしょ!教皇」


「はい!すいません聖女様」


 何このやり取り、もう親と子で良くな〜い!

 さっきから聞いてて面倒なんだけど。


「それにしてもゼーラント大司教そこまで手を回していましたか」


 ティアの言う通り、あのおっさん抜け目がない。元々教皇の座を狙っていたのなら納得ではあるんだけどさ。


 ゼーラント大司教は今回の襲撃に合わせて裏で手を回し教皇をこの町から離れさせていた。また教皇は町に戻るまでに何度か盗賊の襲撃を受けたとのこと、これも恐らく足止めの策略と思われる。


「それにしても教皇をそこまでして止めたかった。なぜでしょうか?」


「それに関しては簡単なお話ですよ。タクトさん、教皇は武闘派でとても強いんです」


「ま〜それは見た目でなんとなく分かりますけど、教皇お一人で戦況が変わるとは……」


「タクトさんが言いたいことは分かります。ですが、教皇ならそれがありうるのです。何と言っても聖騎士団最強の戦士と言われております。あの方が居ると居ないでは士気の高さも変わったでしょうしね」


 ふーん……そこまでとは、ガチムチなのは見せかけじゃないってことか、今後のことを考えれば頼もしい話だ。


 ん?またしても影がかかる。

 つまり後ろにおっさんが居る。


「どうされまし!?」

 後ろを振り向くと号泣したおっさんが!?なぜ泣いている。

 

「お〜お前がこの町を救ってくれたんだな〜ありがとう!ありがとう!………」


 教皇のおっさんは俺の手を握りブンブン振って感謝する。お礼は良いけど腕が痛い!この馬鹿力が!手加減しろ!


「いえ……どういたしまして、少しでもお役に立てたのなら良かったです」


「なんだ謙遜するタイプか?遠慮は損するぞ!俺はお前を大いに褒めたいんだ!もっと喜べよな!ゴエティアの九王の一人を倒したんだ。誰にでも出来ることじゃないぞ!」


 このおっさん、本当に褒めてくれてるのか?

 言葉の一つ一つに威圧がこもっているような。


「そうですね。でも倒したのはルナです。ボクは少しお手伝いしただけですから」


「あ?そうなのか、ま〜それでも凄いことさ。悪魔の王と対峙するってことは生半可な覚悟では出来ないからな」


「その通りです!タクトくんは随分と謙遜されますね。これは私達の感謝が足りていないからでしょ。どうすれば良いでしょうか?この後もっとお世話になる予定なのに、これは皆さんと相談してすごいことを考えないといけませんね」


 聖女様が教皇のおっさんに合わせて、とんでもないことを言い出した。聖女様に俺は何にも求めていませんし、そんな罰当たりなこと出来るわけないない。


「あんまり気を使わないで下さい。それと例の件ですが、カンナに確認したら問題ないそうです。とは言っても暫くは不自由すると思いますよ。それでも良いんですか?」


「本当ですか!?ありがとう。これで一安心ね!」

 聖女様が今までで一番嬉しそうな顔をしている。

 う〜ん……そんなに良いところかな〜。


「ん?……かあじゃねえ〜聖女様、今のは何の話でしょうか?とても重要な話に聞こえたので教えて頂けますか?」

 教皇のおっさん、だいぶ無理してるな……


「えぇ、教皇であるあなたにはもちろん話すつもりでした。しかしタクトくんの許可が頂けなければ話になりませんでしたので、許可を頂いた今ならお話出来ます」


「そうでしたか、それでどの様なお話でしょうか?」


「この聖都マーリンからタクトくんが治めている町への移住についてお願いしていたのです」


「…………………はぁ?」

「…………………え!?」


 教皇のおっさんはまだ意味が理解出来ていない。傍に居たティアも聞いていたのだが、ビックリして固まっている。


「ちょっと待ってくれ母ちゃん!」

「はぁーまたそんなことを言って、今は仕事中ですよ。オフィシャルの場では立場を考えて……」

「そんなことは良い!何を言っているのか分かってるのか?この聖都マーリンを捨てると言っているのだぞ!そんなの誰も許すわけがない。それは聖女である母ちゃんが言っても無理だ!」

 聖女様の言っていることに教皇のおっさんは頭がおかしくなったのではないかと思っている。それ程非常識であり得ないことなのだ。


「私としても出来れば、この聖都を復興させたいと思っています。ですが周りを見てどう思います。この荒れ果てた町を、きっと復興には長い時間がかかります。それまで住民の皆様に不自由をかけたくありません」


「確かに言っていることは分かるが、それでもこの町を捨てられない。それは俺の意識でもあり住民の総意だ」


「ん?それは違うでしょ。それはあなたの思い込みです。それにあなたが最も喜ぶと思いますよ」


「何を戯言を母ちゃんは悪魔との戦いでどうかしてしまったのか!ティア何とかしてくれ」


「え〜!?私ですか!そんなことを言われても聖女様は至って健康そうですが………」

 ティアが困り顔で聖女様を見るとニコッと笑顔で返され、どうすれば良いか分からなくなる。


「ええーダメです!私では手に負えません。タクトさん助けて下さい」


「おい!ボクにどうしろって……」

 ティアは俺の後ろに隠れ。

 教皇のおっさんは俺を見下ろす。

 どうすれば良いんだ?


「タクトくん、タクトくん、手っ取り早い方法があるわよ」

 聖女様は俺の肩をチョンチョンと突いて、俺に耳打ちする。


「なるほど、それが一番手っ取り早いですね」

 俺は聖女様の意見に納得する。


………………▽


「うおおおーーー!是非ともここに住ませて下さいタクトサマーー!お願いします!」


 俺の前には土下座をする教皇様がいる。

 どんな手のひら返しだよ!


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