第220話 戦場跡そしてラキを救う為に……
ゴエティア九王プルソンに勝利した俺達だったが、あれからどれだけ聖女様やルナ、そして仲間達が声をかけようとラキが意識を取り戻すことは無かった。そして他にも多くの問題がある。
「そんな……あんなに美しかった聖都マーリンが……」
ガクッと立っていられない程のショックを受けたアポロンが呆然と瓦礫とかした町を見る。
「これはキツイな。………遅れてすまんなタクト」
イグニスの服装はボロボロになっていた。その姿を見れば激しい戦闘が合ったことが伺える。
「いや…気にしないでくれ二人についてはルナから少し話を聞いてる。悪かったな。苦労かけた」
イグニスとアポロンは俺が大聖堂を出たところで会った。アポロンのダメージが大きくイグニスが担いて来たのだけど、半壊した大聖堂を見てアポロンが悲鳴をあげて大騒ぎ、今はある意味落ち着いた。
「それで……これはだいぶ手痛くやられたが、みんなはどうなんだ?もちろんルナや聖女様は生きているんだよな!」
「うん〜もちろん、聖女様もルナも無事だよ!それに確認中だけど、避難した住民は大丈夫だと思う。それにしてもこれは……しばらくまともな生活は望めない………だろうな」
魔物は町の中にかなり侵入されてしまった。建物がボロボロに崩れた場所がいくつも見える。それにゼーラントが化け物に変わった時の攻撃らしいが大聖堂から一直線に建物がなぎ倒されて酷い有様だ。でも悲観してばかりはいられない。多くの人達は生きている。生きていればやり直しは出来るんだ。
こちらにルナとアイリスが走って来た。
「イグニスさんとアポロン!?良かったぁ〜!無事で居てくれたんですね」
「おう!ルナも無事で良かった。それと悪かった。助太刀に行けなくって」
「いえ、仕方ありません。相手は水の勇者、簡単に倒せる相手ではありませんから、それよりアポロンは大丈夫ですか?かなりの怪我をしていました。治療部隊も下に連れて行きますが」
ルナは呆然と動かないアポロンが心配になった。
「いや、良いアイツは頑丈だからな。それに致命傷になりそうな怪我は自分で治した。今は休息が必要だろう。俺達もルナもな」
「はい……そうですね。ですが私は皆が待っていますので、聖騎士団団長としての務めを果たしてきます。タクトすいません。この後のことはアイリスに任せてあります。それでは………」
ルナは町の中へと走って行った。
他の団員達をまとめられるのは、やっぱりルナなんだろうな。
「タクト〜メリダが呼んでるなの」
「メリダ?えーっと……あ!聖女様の名前か!アイリス、聖女様を呼び捨てするのは良くないのでは?」
社会人として目上かつ上司に対していかがなものかと、とは言えアイリスはまだ子供、許されるのか?
「うう〜ん大丈夫なの!ワタシとメリダは仲良しなの〜」
「そっか!分かった」
深くは気にすまい。
それにしても何の用かな?
……………▽
「お待ちしておりました。女神の使徒タクト」
「えーー何それ〜、今までと対応が違うけど?何でそんな真面目な姿勢何ですか?聖女様なんでおかしくはないんですけど、今まではもう少し接しやすい雰囲気でしたけど?」
えらく真剣な眼差しで見られ居心地が悪い。
「そうですね。タクトくんとは普通にお話をした方が宜しいですかね。では一つお願いがあります。聞いて頂けますか?」
「ええ……聞きますけど、なんかイヤな予感がしますね」
俺はこの後、聖女様からえらいことをお願いされる。イヤ〜それはマズイでしょ。それにイリスに怒られる。
「う〜ん……それについては要検討と言うことで」
「分かりました。では前向きな返答を期待しておりますね」
この後がとても憂鬱である。
「ま〜おいおい考えますよ……それでラキさんはどうなりましたか?」
聖女様が治療されていたけど、悪魔に長く取り憑かれていたし、何らかの後遺症が残っていなければ良いけど。
「ラキは……身体は問題ありません。ですが悪魔に取り憑かれ前に悲しい出来事ありまして、心が戻らない
のです」
「そうですか、それは残念です。でも今は悪魔はいませんし、時が解決してくれるかも知れません。聖女様もあまり落ち込まないように……」
「えーありがとう。それにしてもタクトくんとお話していると、まだ子供とは思えませんね」
「いえいえそんな……」
ま〜中身は大人なんで、それなりにしっかりしてますよ!
それから聖女様は町の住民を纏めるため働き続けた。ルナも聖騎士団をまとめ町に居る魔物の残党を狩るため見回りを続ける。俺達も何か出来ないかと聖女見習いのティアさんに相談、怪我人の手当てをお願いされた。どうも絆創膏のことを知っているようだ。
「はぁ〜疲れた」
ひたすら絆創膏を貼るだけの仕事だけど、絆創膏を作るのに結構な魔力を消費する。だから思ったより楽じゃない。
「お疲れ様です。本当に大活躍ですね。あなたのお陰で多くの人が助かりました。感謝致します」
瓦礫に座って休憩しているとティアさんがこちらに水をコップに入れて持って来てくれた。
「ティアさんもお疲れ様、少しは落ち着けそうですか?」
「えータクトさんのお陰で、もう怪我人はいません。本当に……あなたは女神の使徒様なのですね」
「そんな立派なもんではないですけど、それでも役に立てたなら嬉しいです。これで後はラキさんをなんとか出来れば……」
「そうですね。私は治療魔法に長けています。ですけどラキを治すことは叶いません。心の傷は魔法でも治すのは難しいのです」
ティアさんも聖女様と同じ様に悲しそうに、そして力になれないことを悔しく思っている。
「心ですか?どうすれば治せるんでしょうか?正直ルナのあんな顔はもう見たくありません」
「フフッ、その言葉ルナに聞かせたいです。そうですね。ラキはきっとすごく後悔しています。それをなんとか出来れば目を覚ますかも知れません」
「後悔ですか?…………その、力になれるか分かりませんけど、ラキさんに何があったか教えてもらうことは出来ませんか?」
「ええ……聞いて頂けますか、聞いていて気分が悪くなるかも知れませんですが、私はなんとしてもラキを助けたいです」
うんっと俺は頭を縦に振り、ティアさんの話を聞く。
胸クソ悪い〜
酷すぎる。無関係な俺でも腹が立って仕方ない。
プルソンめ〜もっと懲らしめてやれば良かった。
「う〜ん……どうすれば助けられるかな〜」
俺は考える。手持ちの道具で使えそうなのは絆創膏とライトくらいか、絆創膏は使えば教会の子供が救えるか?難しいだろうな。時間が経ち過ぎている。ライトに関して言えば心を癒す効果まであるのか?やってみないと何とも分からない。
「俺にもっと力があればな」
自らの力のなさに落ち込む。
「タクトには相棒のうちが居るやろう」
いつの間にかカンナが横に座っていた。
「イッヒヒ、おめでとさんLv70になっとるでぇ!」
流石は相棒、カンナの言葉で希望見えた。