第21話 バロン男爵と父さん
「お父様、なぜこちらに……」
ノルンはバロン男爵に駆け寄る。
「何を言っているノルン、お前を迎えに来たに決まっているだろう。このじゃじゃ馬娘が、危険に突っ込むような事をあれほどするなど言ったはずだが!」
バロン男爵からすごい威圧かヒシヒシと伝わってくる。
「えっと、それはですねお父様……」
ノルンはゆっくりと後退して行くが、突然地面を這って何かが伸びて来た!
「ひぃ~お母様お許しを!」
ノルンは一瞬でムチでぐるぐる巻に拘束される。
「あら、今晩はタクトくん」
「スカーレット様、今晩はです!」
バロン男爵の後ろからスカーレット様が現れる。笑顔を向けているがその笑顔をそのまま受け取ってはいけないとすぐに判断、俺はビクビクする。
「お母様まで来られていたのですね」
「あら、ノルンなんか母が来てはいけないように聞こえたけど気のせいかしら」
「もちろんそんな事はありません!」
ノルンは緊張でガチガチに固まって喋っている。スカーレット様怖いもんな……
「さ〜今日は家族3人でお話しないとね!帰りましょう」
「あ〜母様、せめて歩かせて〜」
ノルンはムチで引きずられ連れて行かれる。
貴族のご令嬢があれでいいのだろうか……
俺は唖然と見ているとバロン様がこちらに来て声をかけられた。
「すまない。娘が毎回迷惑をかける」
あれ?バロン様……
申し訳無さそうにするバロン様
「あの子は好奇心旺盛過ぎていつも渦中の中に飛び込んでしまう。それにいつも付き合わされるタクトくんには本当にすまないと思っている」
「バ、バロン様!そんな頭を下げるような事をしないで下さい。ボクは自分の意志でノルンといるのです誰のせいでもありませんから」
バロン様はニコリと笑って俺の手を握る。
「うん、君ならそう言ってくれると思っていた。やはりノルンを任せられるのは君しか……」
バロン様は片膝をつき俺に目線を合わせ両肩に手を置く。
そこに父さんが来て、バロン様の肩を叩く。
「バロン、その話はまた今度な、やる事がまだたくさん残っているだろ」
「ブラック、今大事な話をしているんだが」
「はいはい、君を待っている人が居るんだ。早く帰るべきだと思うよ!」
「はぁー」バロン様はため息をついて立ち上がる。
「せっかくタクトくんと話が出来ると思ったのだが、貴族とか町長の立場が邪魔をする。な〜代わってくれないかブラック」
「出来るわけないでしょバロン様、さっさとお帰り下さい」
「もう分かったよ!みんなが待ってるしな!それではタクトくんまた!」
バロン様は手を振って帰って行った。
いつ見てもなれない、父さんとバロン様の関係、いつもは敬語でしかほとんど喋らない人なのに貴族であるバロン様には今のように気軽に話す。もちろん場はわきまえてだ。幼馴染だからだけって感じが俺の中ではしなかった。
…………▽
次の日
昨日の感じからするとノルンは出てこれないだろうな。調査の件は俺達だけで進めておくか!
「はむ、モグモグ、美味い!」
相変わらず母さんの卵焼きは絶品だ!
俺は朝食を食べながら顔をほころばせる。
ん?父さんの顔色が良くない。
父さんの視線を追うとテーブルに並ぶ大量の料理。
………あ〜!なんでまたこんなに〜……そうか!
俺は視線をある二人に向ける。
ローム先生に加え新たに大食漢のニキが増えて食費がかさんで父さんは心配しているのか、この量が毎日朝昼晩と続けばそうなるか、これは今日中にこの間の魔物を換金しにいかないと。
本当はゴブリン襲撃事件の調査をしたいところだが我が家の家計がピンチ!なのは見過ごすことは出来ない!魔導ショップへ行って魔石を売りに行こう。
「すいません、魔石を売りに来たんですけど、誰かいらっしゃいませんか?」
店に入るととても狭いところだった、ただし理由は部屋が狭いのではなく。物が溢れるほど置いてあるからだ!
なんだろうこれ?魔法の杖とか魔導書とかが置いてあるならまだしも、なにかの魔物頭蓋骨とかカラフルなロウソク、ムチ、仮面、これって魔法に関係する物なのか?俺は詳しくないから分からんが客を相手にするのにこの状況はいかがなものか…というか早く誰か出てこーい。
「あん…うっせいぞガキ、ぎゃーぎゃー騒ぐな!」
まん丸髭面のおっさんが面倒くさそう出てくる。
「ガキ、ここには飴玉は売ってないぞ!よそ行けよそ」
なんだこいつは商売する気あんのか?ものすごく帰りたいぞ!しかし我慢しないと、これも我が家の平穏のために……
「すいません、飴玉を買いに来たんじゃなくて、魔石を売りに来たんです」
俺は魔石をカウンターに並べておく。
「………な〜坊主、どこで盗んだんだ!おじさんこう言うの良くないと思うぞ!黙っていてやるから返してこい」
おじさんは俺が子供だから、どこかから盗んだと勘違い、しかもなぜか優しく諭されたから、なんと答えるか迷う。
「あの〜本当にボクが取ってきたんですけど……」
「なに!?………………へー坊主、見かけによらずやるな」
予想外にもおじさんは信じてくれた。
「ちょっと待ってろ。久しぶりの客だから準備してなくてな、金庫どこだ?」
おじさんはゴソゴソと物の山から金庫を探す。
「お!あったあった!それじゃ〜坊主二十五個の魔石どいつも小粒で魔力はそれほどだな………一つ三百ウェンの二十五個で七千五百ウェンだ!」
…………う、う〜んこれじゃ全然足りないぞ!こんなんじゃ〜焼け石に水だ!くそ!こうなったらあれを出すしかないか。
「おじさんこれもお願いします」
ガコンと大きく硬いものをカウンターに置く。
「お!まだあるのか?…………はぁー!?ド、ドラゴンの牙だと〜坊主お前これをどこで手に入れた!」
「え、え〜っと……どこでしたってけ?」
「坊主ボケとかいらね〜こんな物そんじょそこらで手に入る物じゃないぞ!」
おじさんが言うことはごもっともで、きっと王都みたいな大きな町にでも行かなければ手に入らない代物だろう。
「…………………」
「何だ坊主だんまりか………別に構わないぜ!だが出した以上売ってもらう。良いいよな!」
さっきまでやる気のなかったおんさんが目がギラギラとさせて売るように要求してくる。正直さっきまでの対応と違い過ぎて戸惑ったがドラゴンの牙を売って
お金を手に入れる必要がある以上、売るしかない。
「もちろん売りますよ……!?……それは良いんですけどお、おじさんの後ろにいる人は誰ですか?」
売ると言った時、恐らく不機嫌と思われる女性が現れた。なぜ恐らくなのかと言うとその女性は蝶の仮面を付けてはっきりと顔の表情が分からない。それになぜ俺が動揺したかと言うと手にはムチとロウソクを持っていたからだ。なにこの変態?
「あんたいつまで待たせてるのよ!さっさと戻って来んかい!」
「ヒィ!?ブヒーマイハニー」
おじさんはムチで打たれて喜んでいる。どうやら
この世界はドMが多いようだ。