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第208話 カオスエンジェル


「なんと言うことを……ゼーラント大司教……」

 聖女様は悲しそうな表情をしていた。


 ゼーラント大司教が化け物に変わったことに驚いたが、それよりも今はどうコイツを対処するかだ!この圧倒的な魔力量、これは霊峰ラムラから放出されていた聖なる気を集めて造った化け物ってことなのか?


 ヒシヒシと感じる魔力に気負いされながらも俺は抗う。例えそいつが俺の十倍近い魔力を持っていようとも。


『バア!』

  

 化け物と化したゼーラントの口から高魔力が放出される。そのエネルギーは凄まじく大聖堂の壁を貫き屋外にあった建物を次々と消し飛ばして行く。


「ゴホッゴホッ……ふざけんなよ!」

 あれは俺達への攻撃じゃないな、何かを試しているのか?

 瓦礫で煙が立ち周りがよく見えないけど、ゼーラントが放った魔力で大聖堂に大穴が空き大聖堂が半壊してしまったことは分かった。


 こちらに誰か走ってくる。

 慌てて来たのは聖女様だった。

 その表情は酷く怯えていたのが分かった。


「皆さん……ここは私がなんとか食い止めます。皆さんは動ける者を連れて逃げて下さい」


「何を言っているんですか!?聖女様、あなたを置いて行くなんて出来る訳ないじゃないですか!」

 俺は即座に断る。


「タクトくん、あれはあまりにも危険な存在になってしまいました。私には分かります。あれはすでに人では倒せません。ゼーラント大司教は霊峰ラムラの力を全て取り込んでしまいました。あれは神にも等しい魔物と成ってしまったのです」


 ま〜確かに勝てない相手と言われれば、その通りではあるけれど、ま〜とは言え殺れなくはないと思っているんだよね〜オレ……


「私は今から魂喰結界でゼーラント大司教そしてプルソン(ラキ)を食い止めます」


「待って下さい!それでは聖女様が死んでしまわれます」

 突然後ろから声が聞こえ振り向くと、瓦礫を押し退け金色の髪をした少女が出て来た。


………どちら様?

  俺は首を傾げた。


「ティア!無事でしたか……良かった」

 聖女様は胸に手を当て安堵していた。


「聖女様おやめ下さい!魂喰結界でその様な使い方をされればあっという間に命が尽きてしまわれます。どうか考え直して下さい」


 ティアはが必死に説得するが、聖女様は決して縦に首を振ることはなかった。


「プルソン(ラキ)だけであれば何とか出来るかも知れません。ですがあの姿になってしまったゼーラント大司教を止めるにはこれしかありません。彼を止めなければ地下避難区域にいる住民を守ることが………出来ません!………ティア、私の命はここで尽きるでしょう。ですが心配はしていません。あなたならきっと私の意志を継いでくれると信じていますから……良いですねティア」


 聖女様はティアを優しく抱き締める。

 ティアは涙を流し静かに頷く。


「それと必ずラキを取り返して来ますので、優しく迎え入れて下さいね!」

 聖女は優しく微笑み、悪魔に取り憑かれたラキの心配までしている。これは本物の聖職者と言う者なのだろう。


 ま〜俺からすれば知ったこっちゃないけどさ!



「魔力……フルパワー……」

 俺から迸る大量の魔力で突風が吹き荒れる。


 それに気がついた聖女は振り向き、叫ぶように言う。


「タクトくん何をするつもりですか!駄目です!あなたも若き希望の一人なのです!ここで死ぬようなことはいけません!」


「聖女様よ〜……それはあんたの言い分だよな!そんなことはボクは知らないよ!だから邪魔するぜ!ルナ!後のことは任した!ボクはコイツをぶっ潰す!」


 タクトが声をかけた先には、傷が完治したルナそしてアイリスが居た。


「タクト!こっちは任せて!聖騎士団団長の名に懸けて皆を守る!」

 ルナは剣を掲げ女神イリスに誓う。


「ワタシもなの〜悪いヤツをぶった斬るなの!」

 アイリスは可愛くブンブンとけんさんを振っていた。


 俺は軽く手を挙げ応える。


「おう!頼んだぞ!………と言う訳で聖女様ここはお願いしますね」


「ふー……分かりました。タクトくん……あなたは案外ワガママですね〜」

 聖女様は息を吐き、何かを諦めた。


「ハハッ……これからは自分のやりたいことをしようと思ったからワガママじゃないと出来ないんですよ!周りに諦めて貰います」


「そのワガママが自分の為ではなく他人の為にするのであれば、あなたもまた聖職者になれますよ」

 聖女様はニコリと笑う。


「それは無理だし、お断りです!俺には自分の為にするワガママをあるんですよ!ではそろそろ行って来ます!」


 俺は化け物と成ったゼーラントを見る。

 かなりデケェー!十メートルはある巨体。


「相手をしっかりと見て………落っことす!『配管』」

 ゼーラントの真下に巨大な配管の穴が現れ、ヒューンっと何の抵抗もなくゼーラントは落ちて行った。

 俺はゼーラントに続き配管へと飛び込む!


 移動した先は町から遠く離れた何もない大地、

 配管から飛び出たゼーラントはドシーッと地面に落ち転がる。


「この場所なら誰も来ない!好きにやって良いぞ!ボクも手加減はしない…………あ!?」


「ドーン」……巨大な手が俺を潰しに来た。

 

「危ないな〜……コイツ思ったより俊敏じゃないか、見た目に騙されたよ………『空間障壁』」


 思いっきり先手は取られたが、次は俺の番だな。


『ニッパー(空間断絶)』

 魔力を込めることで刃が伸び、ゼーラントの腕を切断する。


「キィャャャャャヤ」

 甲高く耳に響く叫び声をあげる。

 

 ちっとは効いたか?

 

 俺の攻撃がどの程度効いたか見ていると、ボコボコ…ボコボコ…と音がしたので音がする方を見て愕然とする。


「おい!?………嘘だろ……」

 切断し地面に落ちた腕が変異し化け物と変わったゼーラントがもう一体増えていた!?


 コイツまさか切り落とすたびに増えるのか?

 俺はガックリしてニッパーを片付けた。


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