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第203話 叶わぬ思い!


 イリス様との出会いから約一年が経った。


「私にそんなに用があるのかしら?」

 本を片手にこちらを見る一人の少女。

 


「女神イリス様、再びお会いの機会を頂きありがとう御座います」


 再びイリス様の部屋に呼ばれた。


 同じミスは絶対にしない。

 私は跪き従う意志を示した。


「あれから少ししか経っていないのに、随分と売り込みが上手なのね」


 やっと届いた!私は間違ってはいなかった!

 

 イリス様の言葉の意味……行動で示せ!


 神に願うことは信者達の中にも多くいる。むしろ大半以上がそうだろう。イリス様は私が願うことを不快に思ったのか……違う、そうではない。

 

 私は願うばかりで何もしていない。

 つまりイリス様が私の願いを叶える必要もないし願いを叶えたいとも思わない。


 私はあれからイリス様に呼ばれる為に行動した。

 

 まずはどうすればイリス様の役に立てるのか?

 私は冒険者ギルドで依頼を受けていたのだが、その依頼の中から教会に関わる者を選出し依頼を受けることにした。ある程度名が売れると、今度は直接教会の者から依頼を受けるようになった。

 そしてもう一つやっていた事、それは祈ること、ただし願うのではなく、ひたすら心の中でイリス様に面会の機会を頂きたいと思い続けた。

 

「あなたの声はよく聞こえた。そこまでして元の世界に帰りたいのかしら?あなたには才能がある。ここでなら一流の魔法使いになり名声もお金も貰えるのよ?それ以上に何を欲するの?」


 イリス様は問う。

 名声にお金?そんな物は要らない!

 私にとって紗奈さなに比べたら何の価値もない!


「私は妹の紗奈さなに会いたい!救いたいんです!だから私はこんなところには居られないんです!お願いします。私に力をお貸し下さい」


 私は必死に頭を下げ願う。


「その願い……私には叶えられないわ」


「え!?…………………………」

 女神であるイリス様でも出来ないなんて、そんなのどうすれば…………


 私は絶望しかけた。でも耐えた。だって!

 紗奈さなを諦めることは出来ないから。


「私は神々の契約によって次元を超えることが出来ないの、もしも戻りたければ自分でどうにかするしかないわ」


 戻れる方法がある?


「イリス様!それはどうすればよいのでしょうか!」

 

「それは自分で考えなさい。でも少しは手伝ってあげられるわよ。あなた次第だけど」


「なんでもやります!教えて下さい」


「分かったわ。ではキョウカ、あなた…私の使徒になりなさい。そうすればあらゆる魔法、魔術が使えるようになるわ!もしかしたらその中にあなたが求める物があるかも知れない。どうする?」


 イリス様の申し出に、私は迷うことなく承諾した。 私はイリス様の使徒となり、ユニークスキル『大魔導師』を手に入れることになる。


 このスキルの能力は大きく分けて3つある。

 一つは魔力増大、レベルと共に上がる魔力とMPの幅が今までの十倍以上となる。

 二つ目は魔眼、魔法の構成術式を見ることが出来る。見えることの利点として、知らない魔法や魔術を見ただけで真似ることが出来る。

 そして三つ目が魔導継承、この能力こそ大魔導師スキルの最も恐ろしい能力、過去に大魔導師のスキルを与えた者が持っていた魔法、魔術の全てのスキルを獲得することが出来る。つまりこのスキルを得た時点で誰よりも多くの力を得たと言えるだろう。

 

 私は探した。異世界から元の世界に戻ることが出来る魔法を、そして可能性がある魔法を見つけた。それが『転移魔法』、超一流の魔法使いにしか使えないと言われる魔法の一つ、これなら元の世界に移動出来るのではないか!


 私はすぐに空間転移を試した。そして気がつく。空間転移には明確な位置を決め大量の魔力を消費する。今の私ではどこに向かって飛べば良いか分からないし、魔力も全く足りない。


 それから私はレベルを上げるために死ぬ気で魔物を倒して廻った。

 


……………▽


「キョウカ、もう諦めなさい」

 イリスは哀れに思い、優しさから出た言葉だった。

 キョウカは会うたびに憔悴していった。

 徐々に気がつき始めたのだろう。

 異世界の転移など不可能なのだと。



「何言ってるの?あなたが言ったのでしょ、このスキルでやれって!」

 

 ギロリとした目で自然と威圧感を出してしまう。


「えー言ったわ。でも分かったんじゃないの。異世界への転移をするための位置情報はあなた自身が飛ばされた時の道を魔力探知で辿って見つけられたみたいだけど………遠すぎる」


「イリス様は知っていたのではないですか、確かに遠い、魔力がまだまだ足りないわ!でもそれはもっとレベルを上げれば可能性はある。でもあの異空間結界は何ですか!あれは私の魔眼でも分からない!」

 

「当然よ!あれは異世界を隔てる結界、神が創りし物、人の力でどうにかなるものではないわ」


「はぁ!何を言っているのよ!私は諦めないわよ!どんな手を使っても私は元の世界に戻る。私だけの神級転移魔法を創ってみせる!」


 その目には狂気がうっすらと宿ってしまった。

 

「待ちなさい!キョウカ!」

 イリスが止めようとしたが、キョウカは話を聞かず転移魔法で消えた。


 イリスは呆然とキョウカが消えた姿を先を見て呟く。


「ごめんなさいね。キョウカ、それだけではないのよ。あの結界は時空間魔法で出来ている。あなたがもしも結界を超えられてもきっと………あなたの知る世界ではもうないわ」


 それ以来キョウカとイリスは会うことはなかった。

 

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