第200話 裏切りの悲劇
◆聖女見習いアイリスの視点
「邪魔だ!消えろ」
ヒュームの高速の剣がアイリスに狙うが、それを見事に受け止め、ヒュームは驚きつつも大したことはないと判断し剣の連撃を放つ。
「うーん……なの!なの!なの!なの!………」
それをアイリスは見事に捌き切った。
「何!?こんな子供に僕の剣が!……あり得ない。いやまだだ!」
『氷蓮剣』
ヒュームは剣で突きで放つと剣から鋭く尖った氷柱が発生、アイリスを突き刺そうとする。
「なの〜!?」
なんなの?これ?危ないなの〜。
私は驚き躱そうとしたけど追ってくるなの〜。
(嬢ちゃん逃げな!あんなの大したことはない)
突然頭の中に声が……もしかしてけんちゃんなの?
(そうだ!嬢ちゃん戦いに集中しろ。いいか俺の言う通りにするんだ!)
私はけんちゃんに言われた通り剣を地面に突き刺し魔力を込めた。
『剣山』
地面から光の剣が現れ氷柱を砕く。
「バカな!?僕の技を……」
今がチャンスなの!ビックリしている隙に斬るなの!
私は真っ直ぐにツンツン頭に向かって走る。
「エイなの!」
「ぐっ!……ガキが舐めんな」
あ〜……防がれたなの、それなら……。
けんちゃんに言われ全力で魔力を剣に込める。
「そんなバカな!なんだこの大きさは!?」
私の剣がすごく大きくなったなの!
だけど全然重くはない。これなら剣を振れるなの。
「えーいなの!」
私は剣を振り下ろすと、ツンツン頭は剣で受け止めたけど、あっさり力に負けて潰れた。
わーいやったなの〜、けんちゃんすごいなの〜
(へっ、大したことねぇ〜よ!)
けんちゃんは照れてた。
「バカが油断しおって、さっさと使え」
ゼーラント大司教の声に反応してヒュームが立ち上がる。
「煩え、黙れよ!……ここからだろ」
ヒュームは薬を飲み込んだ。するとヒュームの身体に異変が起きる。身体が一回り大きくなり背中から白い翼が生える。
「クックッ、どうだ!これが私が作った最高傑作、
『エンジェルエッグ』天使化する薬よ!」
ゼーラントは高らかに声をあげて笑みを浮かべた。
「おいガキ、もう許してやらねぇぞ」
ユラリ…ユラリと左右に揺れながら歩いて来る。
私が剣を構えようとした時、お腹に衝撃が走る。私はあまりの痛さにお腹を押さえて膝をつく。目の前にはツンツン頭が……私はいつの間にかお腹を殴られたみたい。
「うっうっう〜」
ツンツン頭は私の首を絞めながら持ち上げる。
くっ苦しいなの〜…………
「聖女見習いは殺すなと言われていたが、一人くらいは良いだろ〜、舐め腐ったガキは死ね」
私のお腹に剣が向けられて怖くて涙が出てきた。
こわい、こわいよ〜誰か助けてなの〜。
「じゃ〜なクソガキ」
ヒュームがアイリスを突き殺そうとした時、鋭い殺気が上空から落ちて来る。
『ホワイトストライク』
現れたのはルナ、ヒュームの剣を防ぐとヒュームに蹴りを喰らわせてからアイリスを抱きかかえて離れる。
「ルナお姉ちゃん?」
「お〜そうだぞ!ゴメンねゴメンね。私が遅くなったからアイリスがこんな目に〜」
うっうっと涙を流し悲しむルナ、
そんなルナを見たアイリスはルナの頭を撫でる。
「謝らないでなの、お姉ちゃん助けてくれてありがとう。ゴメンなの……私…まだ剣下手で負けちゃたなの……お姉ちゃん助けて………」
ズズズっと涙と鼻水を拭いてルナは気持ちを立て直す。
「うん、アイリスをイジメるヤツはお姉ちゃんがぜ〜んぶ倒してあげる。ここで待ってて」
ルナはアイリスを降ろすと、ヒュームに向かって歩き出す。
………………▽
「随分とお早いお帰りだなルナ」
「ヒューム、どう言うつもりでこんなことをしているのか知らないけど、アイリスに手を出した以上、ただじゃおかないわよ」
「いいね〜その殺気、そしてその顔、そそられる。美しい顔はやはり怒った時に映えるものだ。そしてその顔を恐怖に変える瞬間を想像するとゾクゾクするよルナ」
ヒュームの表情が狂気に包まれている。
「ヒュームあなたがそんな人とは思わなかったわ。あなたは聖騎士団に相応しくない」
「その言葉、僕を振った時にも同じような事を言っていたね。良いよ!僕を分からせてあげる」
ヒュームの羽が広がり闘気が溢れる。
「そう………ではあなたとはもう話すことはない」
ヒュームは羽を使い空を舞い上空からルナを狙うが……。
「なに!?居ない!」
「どこを見ているヒューム」
ルナはヒュームのさらに上を飛んでいた。
そしてその背中には白い羽が生えていた。
その姿を見たゼーラント大司教が呟く。
「あれが第一師団団長ルナが天使と呼ばれる所以、確かに美しい」
『ホワイトストライク』
ルナは鋭い突きを放つ。
『氷壁』
ヒュームは氷の盾を作るがルナの攻撃を防ぎ切れず、ヒュームは落ちて行った。
地面に落ちたヒュームのダメージは深くはなく。即座に立ち上がる。
「流石は本家の天使化だな。上空戦では相手にならないか」
ルナは何も言わず空を飛びヒュームを見下ろす。
「ルナ…地面に叩き落として土の味を味あわせてやるよ」
ヒュームの周りに魔法陣がいくつも展開される。
「喰らえ最上位魔法ヒュー………」
ヒュームの言葉はここで終わる。
「ごめんなさい。待ってあげられなくって」
ヒュームはルナの連撃で穴だらけとなり血を大量に流し………絶命していた。
ルナはヒュームを倒しアイリスと共に聖女様の下へと向かう。
「只今戻りました聖女様、遅れて申し訳ありません」
片膝をつき頭を下げるルナ。
「良く来てくれましたルナ、それにアイリスも良くやりましたね」
聖女様は微笑み、アイリスは
「メリダ私も頑張ったなの〜」と言って抱き着く。
「ルナ、ラムラの問題を解決したのですね」
「はい!あと少し時間がかかりますが光石結界を十全発揮出来ます」
「そうですか、それは良かった。皆さんあと少しです。頑張って下さい」
聖女様は皆に声をかけると歓喜の声があがる。
「ん〜それは良くない……ネロは失敗したのか?」
ゼーラント大司教は唸る。
ルナはギリッと歯を食いしばり怒りの形相に変わる。
「ゼーラント大司教、あなたは聖職者としての務めを果たさないどころか、自らの欲望の為に多くの人の命を危険にさらした!許されるとは思わないで下さい」
ルナは怒り威圧するがゼーラント大司教は平然としていた。
「先程は見事でしたルナ、まだ天使化は完璧には再現出来ていない。どうすれば……そうだ!あなたを被検体にして調べましょう!中身を確認すれば!そうすればきっと上手く行きます」
ゼーラント大司教の目は狂気に満ちていた。
すでに正気でないのなら力尽くで止めるしかない。
ルナは鞘から剣を抜こうとした時、誰かが肩に手を置いた。
「ね〜ルナ……黙ってくれる?」
「え!?………なんで?……ラキ」
ルナの腹部は血で染まり、深々と刺さるナイフの持ち主はラキ、ルナは何が起こったか全く分からず、力を失った身体は耐え切れられず倒れる。
アイリスは目の前に起きたことが理解出来ない。だけど無意識にルナお姉ちゃんの下へと走る。
そんな姿をラキは冷たく何の表情も出さずに見続け、興味がないとばかりに振り向き聖女の下へと歩いて行く。
「ラキ……ごめんなさい、あの時、私が気がついてあげられなかったから、本当にごめんなさい」
聖女は顔を手で覆い悲しみの目をラキに向ける。
「聖女無駄よ!彼女にはもう何も聞こえないの。あなたは後悔し続ければ良いわ。でも良かったわね〜。あなたはこれから死ぬんだから、苦しむのはほんの少しよ!」
ラキは醜悪な表情に変わり、ラキから聞いたことのないような声でケタケタと不気味に笑っていた。
祝200話達成!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
ご愛読して頂いた方、本当にありがとうございます。
それなりに長く投稿させて頂き、主人公のスキルも
増え戦いの幅が徐々に広がってきました。
これで面白みが出てると嬉しんですけど………
ここからさらに盛り上がる展開を考えております。
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