第192話 アポロンの戦い
◆ルナの視点
「パチパチパチ」
クォークが拍手していた。
「流石は聖騎士団団長、その実力は確かなようだ。しかし……あの少年は想定外でしょうか。何者です?」
クォークは少し驚いた表情をしていた。
クォークの目線の先にはルナと同じく襲われていたアポロンが、そしてその周りに居た兵士達が全員倒されていた。
「アポロンあなた一体!?」
アポロンから放たれた闘気が聖女様や教皇様が扱う程の高い純度の聖なる気を感じる。
…………▽
◆アポロンの視点
「素晴らしい力だ!イリス様ありがとう御座います」
俺は天におわす訳ではないが、イリス様がどの方向にいるか分からないので仕方なく天に向かって祈りを捧げた。
「チッ、ガキだからと言って舐めてかかるからだ!やるぞ!」
「おう!」
こっちに敵か二人向かってくるか、この力は半分ドーピングの様な物、俺には過ぎた力だからな。あんまり多様は出来ないのによ。
「イリス様、お力をお貸しください」
俺の両腕に着けたガントレットが周辺の聖なる気を集めガントレットからキラキラと銀色の粒子が放出される。
『聖峰双破弾』
俺は両腕を引き爆発的なダッシュで兵士に接近、力を溜めた拳を兵士達の腹に叩き込んだ。
兵士達吹き飛び動かなくなる。
「フーー……イリス様……この様な力を授けて頂きありがとう御座います」
俺は天に祈りを捧げ、そして改めて感謝する。
もしもこの力とこのガントレットがなければ俺はきっと足手まといだった。
………………▽
聖都マーリンに向かう前日
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!……………」
俺は日課の修練を行っていた。
「おいアポロン、動きに迷いがあるぞ!修練はするば良いってもんじゃない。それならやるだけ無駄だ!
明日行くのを辞めた方が良いんじゃないか?」
「あぁ……うっせぇ親父、身体を動かしてるほどが頭が回るんだよ!落ち着かせる為にやってるんだ!そんなこと言うんなら手合わせでもやってくれ」
「それも無駄だぞ!お前は自分の力に疑問を持っているようだが、気にし過ぎだ。お前は十分強くなった。俺が若い時より格段にな」
「親父が優しい……気持ち悪いぞ!」
「うっせぇー慰めてやってるんだよ!感謝しろ!」
俺は拳を再び振る。
「いらねぇ〜よ!そんなもん、俺はもっと強くなってアイツらと一緒に戦いたいんだよ」
「はぁ〜……言っておくがさっきのは嘘じゃねぇ〜お前は強くなってる。だか無理をし過ぎるな!親として心配なんだよ」
俺は拳を止める。
「わりぃ〜な親父、やらせてくれ」
親父はもう何も言わなかった。
俺は再び拳を動かそうとした時だった。
「あらあら、ここに悩める子羊さんがいるかしら?」
イリス様がこちらに歩いて来る。
俺と親父は慌てて跪く。
「イリス様どうされましたか?この様な場所に、もしかしてお茶でしょうか!?申し訳ありませんすぐにお作りします!」
俺は慌てて立ち上がる。
「アポロン、わざわざお茶のためにあなたを呼びに来ないわよ。ま〜しいて言えば散歩よ。この場所なら私も自由に動けるし、あなた達や色々な人とこうして気軽にお話が出来る。タクトには言わないけど本当に感謝ね」
イリス様は日頃見せない様な笑顔を見せた。
その姿を見た俺の心は一気に満たされて、先程の悩みが吹き飛んでしまった。
「…………聞いているアポロン?」
「はぁ!?…はい!何でございましょう」
いかん!あまりのことに一瞬意識が飛んでしまった。
「はい……アポロン、これをあなたに」
イリス様はどこからともなくガントレットを俺に手渡してくれた。これは一体………?
「プレゼントよ。女神として信者の悩みを解決してあげないといけないでしょ」
「そんな!?イリス様、俺の様な者の為に………」
俺はあまりのことに感激と驚きで言葉を失う。
「アポロンとセルギウスにはお世話になったし気にしないで、そのガントレットは魔導ショップで貰った物に私の魔術を刻んだ特別製の物よ。周辺の魔力を集めて己の力に変えることが出来るわ。上手く使いなさい」
イリス様はそう言って散歩に行ってしまわれた。
「これを上手く扱えれば………俺はもっと強くなれるのか?」
俺は無意識にガントレットをはめて、拳を動かし確認する。
「アポロン来い!そいつがある程度扱えるまで今日は寝れないと思え」
親父は拳を俺に向けて構える。
親父……ありがとうよ!胸を借りるぜ!
「親父!今日はボコボコにしてやんよ!」
「減らず口を………行くぞアポロンーー!」
それから親父と手合わせを何度もして、このガントレットの使い方を理解した。
……………▽
そして今、俺の力は過去にない程強くなっている。
「お前達運が悪かったな。この場所は聖なる力で満ちている。俺には勝てねぇ〜ぞ!大人しく退けよ!痛い目に会いたくなかったらな」
「ガン」とガントレットをぶつけて気合を入れる。
その言葉を聞いたクォークは倒れた兵士に命令を出した。
「クックックッ、ガキはすぐに調子に乗る。確かにお前の強さには驚かされたが、その程度で我々を止められはしませんよ。……お前達始めなさい」
『セイントヒールウォーター』
倒れた兵士達が突然水に包まれると、何事もなく兵士達が立ち上がった!?
「おい!?これはどういうことだよ」
おかしいぞ!?なんで普通に立ち上がれる?
俺の拳には十分な手応えがあったぞ!
俺は拳を見て、すぐに気を取り直し拳を構える。
「クックックッ、無駄ですよ。あなた達は絶対に勝てない。ここからはこちらのターンです。さ〜始めましょう」
兵士達が俺とルナさんの周りを囲い始める。
「チッキショーが!ぜってぇーに負けねぇーぞ!」
戦いはまだ始まったばかりだった。